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釣り

 学園帰り……

 その日は、レインとリヴァー、そして途中までにはなるがクリアとアストリアと帰宅していた。


 通り道にある堤防、ギャーギャー騒ぐ隣の女子の声を聴き流しながら、

 堤防から何とか覗ける海を何となく眺めている。


 「レスさん、聞いていますか?」

 少しムスリと眉をハの字を逆に曲げながらクリアが俺の顔を覗き込む。

 怖くない……残念だけどその顔も可愛いよと口には出さず心の中で言っておく。


 「今度のお休みの日にまた、私の家で読書会をしませんか?」

 そう少し怒った口調でおそらく同じセリフを繰り返してくれた。


 「あ、あぁ……いいな」

 そういえば、リプリスから俺のコレクションのいくつかを取り寄せてもらおうと思っていたところだ、その中で彼女も気に入ってくれそうなもの……


 「《《また》》……だと?」

 ずいっとレインが俺とクリアの間に入ってくる。


 「レス、まさかと思うが……以前にもこの牛乳うしちちに惑わされてのこのことこやつの家に上がり込んだ訳であるまいな?」

 そう今度はレインが眉をハの字の逆にし俺に言う。


 「レスさんは、私の乳だけが目当てのそんなスケベな人じゃありませんっ」

 そうクリアがそう叫び否定するが……

 するりと向いたレイン、クリア、リヴァー、アストリアの瞳が俺をとらえている。

 恐らく、今日までの俺の行いが彼女たちの脳裏で振り返られている。


 「……たぶん」

 そう、クリアが最後に言葉を付け加える。


 「どいつもこいつも乳をぷるんぷるんさせているが、私が普通なのだからなっ」

 周りの3人の女を見ながら……

 逆にこれだけ巨乳スタイルの良い人間が集まると、

 巨乳が普通にも思えてしまう。



 「安心せよ、小娘……下には下が居る、残念な貧乳さんがくねんも居るんだ……」

 そうアストリアが誰とは言わずもっと可哀そうな奴が居るのだと告げる。

 どこかでギラリと目が輝いた気がした。

 何故かアストリアを抜いた俺を含めた4名がぶるりと背筋を震わせる。


 「下手なホラー映画に出てくる怪物よりも恐ろしいモノがあらわれるかもしれないので……」

 それ以上言うのはお辞めくださいとリヴァーが請う。


 そして、再び何気なく堤防の外に目を向ける。

 そして、そこに一人の人影を見つけると……


 「レス……?」

 堤防に上る俺を不思議そうに全員が見上げていて、レインが俺の名を口にする。


 「悪い、先に帰っていてくれ」

 そう4人に言う。


 「あ……え、それで……」

 クリアは少し困った顔をしている。


 「次の休み、遊びに行くな」

 そう言うと、クリアの顔が緩み、レインの顔が面白くなさそうな顔に変わるが、その表情も確認せずに俺は堤防の反対側に飛び降りる。





 「獲物は釣れたか?」

 俺は釣竿を海に垂らす女性に声をかける。


 「……ぜんぜんだったのだけど、これまたへんなのがかかってくれたよ、しょーねん」

 そう女性が振り返って言う。


 「生きていたんだな、セティ」

 あの日以来姿が見えなかったから少しだけ心配していた。


 「あら、心配してくれていたのかなぁ、少年」

 そうおどけた態度でセティが言う。


 「当然だろ」

 そんな俺の言葉に少しだけ恐怖を覚える不気味な笑みでぎろりとセティの瞳が俺を見る。


 「当然?どうして?」

 そんな、何かを試すように聞き返される。


 「……同じ学園の仲間だろ」

 そう返す。


 「仲間ぁ?わたしが……しょーねん、私は言ったはずだよぉ、私は誰の財産になるつもりは無いのさ、誰かのためになるのも、誰かに利用されるのも……」

 そうおどけた笑顔の瞳はすべてを否定するように……


 召喚者の中で……一番交流があるようで……

 それでも、召喚者達さんにんの中で一番謎が多いのかもしらない。


 現世のことなどもちろん知らない……


 「あんたの召喚者は……誰なんだ?」

 そう口にする。

 そこに深い意味があるのか……

 この物語ぶたいに関係があるのか……


 「あんまり、過度なドラマチックな展開を求めないでくれよ少年……私の誕生しょうかんには、何の意味もないのさ」

 そう返される。


 「3年前に、異世界こっちに召還されて……召喚者に利用されるのも干渉されるのもごめんだった私は知らぬこの大地でただ一人、学生として異世界生活を楽しんでいただけさ」

 そう、隠したりもったいぶる話ではないと答える。


 「そっか……」

 そう無難に返事を返すと、再びセティの瞳が俺を見る。


 「……で?そんな話をしたくて来たんじゃないんだろ?」

 「うわっ……なんだコレ……」

 そう俺に聞きながら、釣れたグロテスクな魚を見て険しい顔をする。

 魚……こっちの世界にもいるようだが……そのほとんどは見たことのない生物みためだ。


 「……少年……や、私たち以外にも召喚されたものは……居たんだ、そんな召喚にんげんが、現世から異世界に生物や原理ルールをこちらに持ち込む奴が居たとしても私は不思議に思わないけどね」

 そうにやりと笑いながら……


 「確かに……どこか違うが食べ物とか、魚や動物……生物も似ているものが多い……」

 もちろん、そのほとんどはリプリスのような能力によりこの世界に持ち込まれそこから量産されたのだろうが……


 「案外……本当は何にも無い無の世界だったところに、あれこれ召喚された者たちが持ち込んだのかもしれないね……本当は能力なんてものも存在しなくて、そんな持ち込んだ知識がこんな世界を産んだんじゃないかって……まぁ、私の妄想おくそくだけどね」

 そう一人楽しそうに笑う。


 「あ……でも、そんな妄想を形にする力があったのなら、最初から能力はあったのか……」

 そうまた一人考えながら納得している。


 「……学園長あのひとは……何しようとしているのか知っているか?」

 誰よりもだれかを救おうとしているのに……

 誰よりも人類せかいを憎んでいる……


 「知らないし、理解する気も無いけどね……持たぬ者に希望ちからを与える……それで人の幸福度を均等化する……そんなの天才や努力家から見ればたまったもんじゃないけどね」

 そう……言いながら……


 「……そんな自分の正義かんがえ希望たすけを聞き入れられない人間が、世界の滅亡はかい均等びょうどうだ、なんてそんなバッドエンドを望んでしまっていたら……少年、君には止められるか?」

  そう空を眺め……


 「まぁ……そうだったとして、私には関係ないけどねぇ……おぉ、大物……」

 セティの持つ釣竿の糸が激しく揺れる。


 「て、手伝えしょーねんっ!!」

 そう言われ、思わずセティの腰に手を回し身体を支える。


 二人でその大物にギャーギャーと大してありもしない釣りの知恵を叫び合いながら……脳裏の裏で違う事を考える。



 ……学園長あのひとと決着をつけないとならない……


 俺だって一つ間違えばあの人と同じ道を歩んでいたのかもしれない……


 俺は俺の手に届く範囲……俺の手を握ってくれる人だけを守ろうとした。

 学園長あのひとはそれ以外のみんなを守ろうとした……


 その結果……それでも……この世界を……


 「……守るよ」

 ぼそりと呟く俺の言葉に……セティは頭だけをこちらに向ける。


 「……手伝おうか?」

 「……なんてね」

 そう、自分も他人も世界もどうでもいい、誰の損得の影響かてになりたくない女は意地悪そうに笑う。

ご覧頂きありがとうございます。


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