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開校式

 翌朝……全生徒が学園の前に集まっている。

 もちろん、全員とはいかないが……


 全生徒の4分の3くらいは居るのだろうか……

 ルンライト=ブレイブは、

 学園の屋上になびいていた、旗を奪い取ると、

 別ののぼりに聖剣が描かれた旗を突き立てると……


 「今日より、この学園はブレイブ家のモノとする」

 そう宣言する。


 正確には、ライトの父、リエンが学園と学園長という立場を、

 ライトの強い希望の元、その権利を買い取った。


 リエンにとっても娘がそう我侭おねがいをされたのは初めてだったのかもしれない。



 元、学園長のマナトは何処へと姿を消したのか……


 教師の半分くらいも入れ替わっている。

 そこには、新任教師として、

 イロハ=シラヌイ……ユーキ=クサナギの姿もある。

 そして、教育実習生としてレイヴィ=サイレスの姿もある。


 ただ……今の俺に、それを喜んだり驚いたりする余裕など無くて……


 新たに聖ブレイブ学園となった。

 開校式かいめいしきが終わり……その日は解散となる。


 ただ……誰もが立ち去るその場所で……

 俺はただ……一人残されて……


 帰る場所も忘れたように……


 「これから、宜しく……ボーイ」

 そう、後ろから声をかけられる。

 いつの間にか俺の後ろに立っているナキ。


 「この間会ったときとは別で随分と浮かない顔をしているじゃないか」

 そう話しかけられる。


 「……今は放っておいてくれ……」

 そう冷たい瞳だけをナキに向ける。


 「ボーイ、おじさんに空気を読めって言うほうが間違いだよ」

 そう逆に勢いづくように……


 「黙れっ……本気で殺すぞ」

 人の気持ちを逆なでする男にそう言う。


 「……魔王を倒した、目的を果たしてハッピーエンドじゃないのかい?」

 そうにやにやと近寄ってきた男に……


 「ナキっ!?」

 俺の魔力を宿した右手がナキの頬にヒットし、崩れそうになった身体を右足を突き出し踏みとどまる。

 大丈夫……と無言で右手を心配そうに声をあげたルディナに向ける。


 「らしくない事してるなよ、ボーイ」

 そうようやく異世界生活2日目の男は俺の心を見透かすように……


 「あんたに何がわかるっ……全部、全部……俺が……」

 言葉が続かない……


 「全部、俺の責任ですってかい?たった……昨日の出来事で全部投げ捨てるのかい?」

 そう冷たく俺を見る。


 「《《たった?》》……あんたになにがっ!!」


 「わからないよっ」

 そう先に言葉をナキに言われる。


 「ただ、ひとつだけ忠告いってやる……君が今日まで積み上げたもの……積み上げてきた喜び、努力、勝利、結果、痛み、苦しみ、悲しみ、敗北……それら、全ての幸せも不幸も全部、今日まで君が仲間と積み上げてきたものだろ、それを全部捨ててしまうのかい?」

 そう冷たく睨まれる。 

 その言葉に……


 「守るって言った……一緒に卒業しようって言った……色んな人間を巻き込んで……全部、全部守るつもりだった……」

 その結果に……


 「世界の理など、表裏一体……それが平等の上に成り立っている……持論だけどね」

 そうナキはそんななぞの言葉を吐きながら……


 「全部が全部……うまくなんていかないのさ……」

 そう……ナキが言う。


 「……何がいいたい」

 俺のその返しに……


 「ボーイ、君は正義ゆうしゃまおうも助けようとした……表裏むじゅんは人間が成せる所業じゃないんだよ」

 そうナキが俺に言う。


 「方法はあった……あったはずなんだっ!」

 俺の根拠の無い叫びに……


 「でも、出来なかった……いい加減、現実をみなよ」

 そう容赦の無い言葉に……


 「ほら、ちゃんと周りを見るんだ……」

 そう言われ、見渡す場所に……


 レイン、クリア、ヴァニ、リヴァー、クロハが立っている。

 ずっと……そこに居てくれたのだろうか。


 「君が守りたかったのは、魔王それだけなのかい?それができなかったから……それまで積み上げたもの全部捨てるのかい?」

 そうナキが俺に容赦なく畳み掛ける。


 「ボーイ、君だけが特別じゃないんだ……彼女、彼もまた、君のおかげで救われて、君のために努力をして……今日という日までに色んなものを犠牲にしてきたのだろう……」

 その言葉にヴァニが俯く……


 「……今の俺に……いや、もともと……そんな資格……」

 偉そうに……何を成すつもりだったんだ……


 「レスさん……ヴァニさんは……魔王の瘴気……その戦いで大事な家族を失いました」

 そうリヴァーが口を開く。


 「おいっ」

 余計な事を言うなとヴァニがリヴァーを見るが……


 「それでも……レスさんとクラスのためにすぐに立ち上がってくれました」

 そう告げられる。


 「だから……俺にそうしろって……」

 「そもそも、リヴァーがっ」

 あの場に来なければ、そんな最悪な言葉を……


 次の瞬間に左の頬に強い衝撃を受けて、背中から倒れる。


 「一発は、一発だよ」

 そう、ナキが拳を振りかぶりながら言う。

 そう、先ほどのお返しと言いながらも、

 それ以上は言うなと無言で告げている。


 知っている……

 リヴァー達があそこにたどり着いていなければ、

 俺も、ヴァニもあそこに駆けつけることはできなかった。

 あの場所で、騒ぎがあったから、

 全員がそこを目指すことができた。


 「捨てるのは簡単だよ、それと後悔することもね……でもやり直す事は難しい……」

 そう倒れる俺をナキは見下ろし……


 「君が守りたいと思ったのはひとつだけじゃないだろ……ひとつが守れなかったのなら……もうひとつは今度こそ死ぬ気で守りなよ」

 「君……たった一人の挫折で仲間ぜんいんの積み上げてきたもの……それまで否定するんじゃないよ……ほら、わかったらさっさと立て、手は貸さないよ自分でね」

 そうナキは倒れる俺の前で一瞬差し出そうとした手を引っ込める。


 「……あんた、何者だよ」

 そう立ち上がり、ナキに尋ねる。


 「残念だけど、おじさんはただのおじさんだ」

 そう立ち上がった俺を見届けると、背中を向けてルディナの方へと戻る。


 振り切れた訳じゃない……

 それでも……まだ……全てが終わった訳じゃない。


 守らなければならない……


 唐突な、神の存在……

 それもあるが……

 もうひとつの疑問……


 元学園長マナトはどうやって、

 魔王の瘴気を吸い取り、どこに溜め込んでいた?


 学園の地下にあったものは、人に瘴気を送り込む装置だ。

 魔王から瘴気を吸い取ったり、それを溜め込んだりはできないだろう……


 だが、その謎に迫る前に……

 俺は屋上へと目指す。


 (レスっ……レスっ!!)

 そう、誰かに呼ばれた気がして振り返るが誰もいない……

 俺は、目の前のドアを開け、屋上に踏み込む。


 黒いスーツで、片手で松葉杖をつき、あいた手で煙草のようなものを口にする。

 吐き出した煙が空にのぼっていく。

 その様子を黙って眺めながら……



 ・

 ・

 ・



 棺おけのような場所で眠る少女……


 その姿は20年近くも前の姿のままで……


 「リザ……世界ぜんぶ……終わりにしよう」

 そう……マナトがその少女に語りかけるように言った。




 

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