ゆう君のプリンと最適解
家紋武範さんの「知略企画」。
私も参加してみたくなり、作品を造ってみました。
ほのぼのできるヒューマンドラマとなっております。
安心してご覧ください!
冷蔵庫には、ゆう君のお母さんが買ってきた3個入りのプリンが1セットありました。ゆう君は母子家庭です。
「ねぇ。1個食べても良い?」
「夕飯前だから、1個だけね」
ゆう君のお母さんが、彼にプリンを1個だけ食べて良いと言いました。
「わーい! いただきまーす!」
ゆう君は、プリンをあっという間に食べてしまいました。しかし、彼も育ちざかり。1個のプリンでは満足できません。ゆう君は、何とかもう1個プリンを食べる方法はないかと考えました。
お母さんは、冷蔵庫のあるキッチンで、夕飯づくりをしています。だから、隠れてプリンを食べるということは、できません。
(お母さんを納得させなければだめだな)
ゆう君は真剣に考えます。
(あ、そうだ!)
何か閃いたようです。
「ねぇお母さん、今日のテスト何点だったと思う?」
「うーん、あなたのことだから60点ぐらいかしら」
お母さんの言葉を聞いて、ゆう君は含み笑いをしました。
「ちょっと待ってて。持ってくる!」
「?」
不審がるお母さんの事など知らずに、ゆう君はしばらくのあいだ自室に籠ります。返却されたテストに“修正”を施していたのです。
「60点どころか10点しか取れてないや、ははは」
しかし、悪知恵の働くゆう君は、✓のついた解答用紙を丁寧に〇に直していきます。そして、10点の後ろに【0】を足して、100点に変えてしまったのです。
(うっしっし。これでご褒美に、プリンがもう1個もらえるぞ)
ゆう君は、解答用紙を持って、お母さんの居るキッチンへと、向かいました。
「はい、これ」
「100点。すごいじゃない」
「でしょー」
しかし、すぐさま難問が降りかかってきます。
「……じゃあ、これが解けたらご褒美に、もう1個プリンあげるわ」
「へ?」
≪(-6)×(-1)÷3=?≫
チラシの裏に問題を書かれてしまったゆう君。解答用紙通りの知識があれば、余裕で解けるはずの問題です。しかし不正をしたゆう君には解が分かりません。
「夕飯が出来るまでに答えられたらプリンね♪」
「うぅうぅ」
制限時間はお米が炊けるまで。ゆう君は、プリンのために教科書と参考書をめくりました。何とか問題が解けた頃に、お米のたけた良い匂いがしてきます。
「ゆう、夕飯できたわよ!」
「……!」
ゆう君の部屋に無断で入ってくるお母さん。ビックリした彼は、咄嗟に参考資料と教科書を隠します。それを見て、お母さんはにやりと笑い、
「ちゃんと勉強しなきゃダメよ?」
と言いました。
プリンのためとはいえ、ゆう君は苦手な数学の勉強ができたのです。全て、お母さんの思惑通りだったのでした。ガッカリと肩を落として彼がリビングに行くと、机の上には、プリンが2個。置いてありました。
「お母さん、これ……」
「問題は解けた?」
ゆう君は気づきました。お母さんの出した問題の解は【2】です。目の前に置いてあるプリンも2個でした。これは、プリンが2個食べられるということ!? ゆう君は興奮気味にお母さんに話しました。
「ねぇお母さん。これ食べて良いの?」
「1個ずつね。私たちは2人で1つだから」
「怖いよお母さん」
「ふふふ」
そうして、ゆう君は夕飯の後に、プリンをじっくりと堪能しましたとさ。
おしまい
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