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スウィート♡スウィート  作者: ゆきまる
12/13

ボーカリストと交渉

 インタビューは撮影現場近隣の喫茶室で行われた。

お菓子にまつわるエピソードやCM撮影時の思い出等受け答えもmiraiは慣れている感じであった。

妻有が日潟製菓の社員と勘違いしたカメラマン助手が「僕、いつも日潟さんの食べてます!」と妻有に言ったので妻有は「ご贔屓いただきありがとうございます!」と礼を言った。

写真の送り先確認後、カメラマンとは別れそのまま喫茶室で今回の件で話し合いをする流れになった。

マネージャーは「実は今回のイベントの音源収録をこちら側でもしたいのでこちらからスタッフを手配させていただきたいのですが、それが可能ならPAの方と打ち合わせもしたいのですが。」と言った。

今回の復活イベントをmirai側の活動として組み込む為に最大限の協力はするが一部譲歩もして欲しいという内容をマネージャーはあかり達に伝えた。

あかりは「イベント内の1つとしての復活にしたいので人員面での協力は願ってもない事ですが、あくまでイベント出演者としての形は崩さないでいただきたいのです。実は1人の出演者の時間調整がまだお願い中でして、使用時間考えてもあまり派手な事も出来ないかと思います。」と伝えた。

妻有は「おそらくロックのコンサート等のPAシステムやスタッフですよね、配信時に備えてそこは他に来ていただく様にお願いしようと思っていたのですが。場合によっては音源流して所謂アテブリになる事もお願いしようと考えていたので、それならそんなに大きな卓もいらないかと。」と言った。

miraiは「実はベスト盤が出るんです、ソロのね、そこにバンドの曲も入れようと再録したのだけれど思う様なサウンドにならなくて没にしようとしてたんです。あのメンバーなら、その時ならって思うんですよ。ファンも喜ぶだろうし、勝手分かるうちのスタッフならと思いまして。」と言った。

mirai側は乗り気をみせて色々な提案も出してきたがあかりは「考慮します。」「確認してみます」とメモを取るばかりであった。この辺りは年宮にも多くを頼まねばならない。まだ自分だけでは決めかねる場所も多くあった。

mirai側のイベントへの協力が確定したので4人は硬く握手をして話し合いは終了した。

miraiは「お二人とも今日は直帰でしょうか?」と聞いた。2人は「はい、そうです。」と答えると「皆で飲みましょう。こっち持ちです。どうですか?」とmiraiは笑顔で言った。

その後mirai指定の場所へ行く事になった。喫茶室の外に車が用意してあり、別の女性マネージャーが待っていて今までいたマネージャーと交代した。

先ほどのマネージャーより年上にみえる女性で「三霧桂子です。」とあかり達と名刺交換した。

一堂はマネージャーの運転で銀座にある紹介制のバーに向かった。

車中ではあかりも妻有もそれぞれの会社へ連絡を取って忙しそうにしていた。

miraiは2人が一段落するのを見て「新潟は今、雪凄いでしょう」とあかりに言った。

あかりは「まだ慣れなくて」と言うと彼は「ライブで行った時に会場前ですっころんじゃって。インディーズの時も新潟のライブハウス前で転んでてメンバーから成長してないって笑われたなぁ。会場だけは大っきくなったんだけど。」と思い出を語った。

大きなビルへあかり達は案内され中に入った。

エレベーターで5階まで行き、miraiは店の扉を開けた。中はカウンターとテーブル席、奥にも仕切られたテーブルがある様に見えた。薄らとBGMが流れる中、カウンターで静かに飲んでいる1人の客とは対照的に奥からは複数人の笑い声が聞こえる。

miraiは「よう、ママ、今日は商談ですよ」とバーにいる女性に声をかけた。

「いらっしゃい、じゃあ奥案内してもらうから」とママと呼ばれた女性が言うとスタッフに奥の仕切られたテーブル席へ案内された。

miraiは座ると「皆さんお酒は?」と聞くので妻有は「はい大丈夫です。」と言った。あかりは「私もなんでも。」と言った。

miraiはじゃあ「美しブドウを全員分、後は適当に何か食べる物お願いします。」と言った。

「美しブドウってワインですか?」と妻有が聞くと「そう、国産の。最高ですよ。」とmiraiは答えた。

妻有は「あのテーブル座ってた人ってお昼の番組出てる人ですよね」と聞くとmirai「そうですね、ここはそういう場所なんです、紹介ないと入れないからああいう顔知れた人も飲みやすいんですよ。」と言った。

あかりは「誰ですか?」と妻有に尋ねると「ほら、今日も元気にワイワイワーイ!ってやる人ですよ。」と答えた。あかりは「あぁ、新潟は向こうの番組やってるから私知らないかも。」と言った。

ワインが来ると乾杯をしてmiraiに当時の話等を聞いた。

あかりはmiraiに「ヴィジュアル系って何ですか?」と聞いた。

miraiは「流行りかな?僕達の時は自然にそうなっちゃってた。お客も来やすいし。」と言った。

妻有は「ムーブメントだったんですかね?」と聞くと「うーん、インディペンデントでやってた事にメジャーが乗っかった感はあるよね、ほら、川柳タロウさんっているでしょ。この話したら、俺の時と同じじゃねぇか。って言ってた。あはは。」とmiraiは答えた。

川柳タロウとは俳優でかつての人気フォークシンガーである。

あかりは「でも全員がデビューという訳では無かったんですよね?」と聞くと「うん、結局ちゃんとやってる所は残るかな?酷いのもあったよ。事務所主導で訳分からない音楽も出来ない様な子引っ張ってきて人集めてバンドにしてCD出して何とか客つけようとするの。」とmiraiは言った。

妻有は「そんなグループはどうなるんですか?」と聞くと「全然ダメ。西通さんっているでしょ?あの人にこの話したらね、俺の時と同じじゃねぇか。だって。あはは。」とmiraiは答えた。

西通さんとは西通まさよしと言ってかつてグループサウンズのボーカリストとしてアイドル的存在であったが現在は俳優や司会業の顔で知られている。

あかりは「メイクとか努力しましたか?」と聞くとmiraiは「うん、女の子の雑誌買ったよ。慣れると早く化粧できる様になってく。」と言った。

あかりは「分かります、諦め所を見つけろと友達から言われて早くなりました。」と頷いた。

miraiは「熱かったね、照明が。今当てられてる倍以上はあったと思う。もう顔の凹凸が分からない。目も痛いし。後ね、英和辞典とか和英辞典とか買ってね、英語の詞を書くのに。辞書引きまくった。」と言った。

あかりは「CMソングのアルバム聴きました。miraiさんが詞を書いてるんですね、素敵な詞だと思います。」と言うと「あぁ、あれ、僕じゃないの。実はね、演奏もそう。歌だけ僕録った。セカンドからは皆ちゃんとやってるけど。」とmiraiは衝撃の告白をした。

妻有もあかりも驚き2人同時に「えっ?ゴーストなんですか?」と聞くと「そう、曲とバックの演奏は用意されたやつ。ファンも知ってるよ。俺達も人の事言えないじゃん。あはは。」とmiraiは言った。

妻有は「事務所が用意したんですか?」と聞くとmiraiは「スタジオの時間が限られてるから。ライブ集客増やすので忙しいし、アマチュア上がりがミスらず演奏するのも大変なのよ。自分達で作ってる頃はリズムが多少走ってもまぁ、大丈夫ってなったけど。やっぱりデビューするとそうもいかないから、でも歌は誤魔化せないから。」と言った。

あかりは「ツアー前に曲を覚えて演奏したんですか?」と聞くと「僕の歌録りしてる間に他のメンバーが別なスタジオでその曲を一生懸命練習してるのよ。プロデビューしたのにアマチュアのコピーバンドみたいに。アイドルじゃないから流石にライブで当て振りは出来ないし。」と言った。

しばらく黙って聞いていたマネージャーの三霧は「大人の事情ですね。」と微笑んで言った。

あかりは「他のメンバーの方々はどこにいらっしゃるんでしょうか?」とmiraiに聞いた。

miraiは「nanaseは知ってるよ。音楽学校でギター教えてる。たまにスタジオミュージシャンの仕事してる。G-saqは親の仕事ついで、おトキはどこで何やってるか知らない。行方不明。なのでお願いします。」と返した。

おトキとはベーシストのニックネームである。

妻有は「探偵さんでも雇いますか?」とあかりに聞いたがあかりは「当たって無理ならそうしましょう。」と言った。

三霧は「こちらでnanaseさんは連絡取るので、交渉をお願いしたいのですが。」と言った。

あかりは「お、お願いします。」と言った。

微妙な空気が流れた。

あかりは「どうも色々あっての解散の様な感じ。」と思って解散理由には踏み込め無かった。

しかし空気を察したmiraiは「やっぱり音楽の方向性の違いかな。nanaseはやっぱりこだわってたしね。海外活動も視野に入れてたみたい。どうもその辺の歩調が合わなくなっていったのかな?」と言った。


 時間も経ち全員酔いが回っていた。三霧だけはあまり変わらずに飲んでいた。

miraiは「妻有くぅん!君は名前通り妻は持たないのかぁっ!」と妻有の背中を叩きながら言った。

妻有は「僕は名前負けしてるんですよぅ、いいなぁ、その猛さんって人を僕にも半分分けてくださいよぅ!」とあかりに言うとあかりは「いくらでも分けてやりますよぅ。今からちょっと聞いてみますからねぇ!」と言ってスマホを取り出し猛へ電話をかけた。

電話が繋がるとあかりは「ちょっとぉ、今ここに男2人といるのよ!東京で!男2人と飲んでるんだから!後、女1人もいるのよ!もう3人もいるんだから!あなた!分裂して妻有さんの妻になりなさい!」と猛に言った。

猛は「あぁ、楽しそうにしてるね、仕事上手くいってるの?」と聞いたがあかりは「もういい!」と電話を切った。

あかりは「妻有さん!こうなったら恋を実らせましょう!その声優の何とかさんと結婚出来るように無理矢理何かのイベント始めましょう!」と妻有に言うと「橋藁さんは僕の神様なんです!僕なんかの隣にいてはいけない!僕の心の中にいるんです!ファンは皆そう思ってます!」と半泣きで訴えた。

miraiは妻有の胸の辺りを指して「この辺にいるの?」と言うと妻有はシャツのボタンを外してシャツを脱ぎ肌着も脱ぐと「ここです!」と右胸を指して叫んだ。

miraiはサインペンを取り出し「ハシワラ」と妻有の右胸に書いた。

あかりは「そっちにはいないんですか?」と不満げに妻有の左胸を指すと妻有が「もちろんいます!」と言ったのでmiraiはサインペンでまた「ハシワラ」と書いた。あかりは更に彼のお腹も指さしたのでmiraiは「もう身ごもっちゃったらどうだろう?」と言ってお腹にも大きく「ハシワラ」と書いた。

妻有は「ありがとうございます!」と泣きながら言って立った。

あかりは立ち上がって「おめでとうーっ!」と両手を挙げた。

全員「おめでとう!」と立ち上がって両手を挙げて大喜びで叫んだ。

他の席からも騒ぎを聞きつけて人が大勢寄ってきて「おめでとう!」と妻有を祝福した。

あかりは寄ってきた人達がどこかで見たことある有名人なのは分かったが、もはやどうでも良かった。

夜のバーに半裸の男を取り囲んで訳の分からない祝福の声が響き渡った。








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