番外編 これまでのヒガン一家1
今日のエルディー魔法国の首都であるルエーリヴは、春が近いのに朝から大雪。時々、視界が死ぬくらいの吹雪になる悪天候では外で何かするのは自殺行為に等しく、余程の事情でも無い限り出歩こうとする者もいない。
そんな状況だが、春のような暖かさの我が家は外の荒天から隔絶されているように感じられる。
ここは空き部屋を改造して設けた子供部屋。魔導具のチェックをしながら、悠里と下の子達がままごとをして遊ぶ様子を眺めていた。
「こんなところに食器を置いたのは誰ですかー?」
「とーしゃまがあらってかたづけてたよー」
「もう!おとーしゃまはいくら言っても直さないんだから!」
「とーしゃま、しっかりしてくれ!」
下の幼い二人に何故か叱られてしまった。ごめんなさい。
「昨日、カトリーナさんとバニラ様に言われてたやり取りですね。」
「やっぱり、食器洗いは私たちがした方が…」
一緒に眺めていた背の高い真っ黒な髪のメイドのアクアと、アイドルのような見た目なメイドのメイプルにまで言われた。
午後は夕飯までほぼ自由時間の二人だが、今日はオレと一緒に娘達を見守っている。そのカトリーナとバニラは、今頃息子3人をしごいている最中だろうか。
「作って終わりというのもなぁ…」
「定位置に無いとあたしたちも困りますので…」
そうアクアに言われてしまっては、反論出来ない。
「旦那様の料理は文句ないのですけどねー」
メイプルにフォローされるが、アクアの言葉を追認するようなものなので、片付けが出来ない事を認めざるを得ない…
「皿までは洗わせてくれ。片付けは任せるから…」
『よろしくお願いします。』
笑顔で声を合わせる二人。そこまでダメだったか、オレの片付けは…
ほぼ魔法による皿洗いなので、洗うだけなら苦も何も無いのだが。
視線を向けると娘二人がこちらを見ていた。
「アクアー、お話読んでー」
「よんでー」
ままごとを終えた娘二人にせっつかれるアクア。
その様子にメイプルも笑みを浮かべていた。
「はい、分かりました。どれにしましょうか?」
亜空間収納から手作り絵本を取り出して並べる。
「紙芝居のがいい!」
「かみしばい!」
「紙芝居のですね。頑張って読ませていただきましょう。」
その為の台まで用意し、その上に紙芝居を置いた。
「紙芝居ですか。良いですね。」
様子を見に来たココアまで準備に加わる。
紙芝居、とは言うが、中身は紙に描かれた人物が動く立派な紙人形劇。内容が内容なので人は多い方が良い。
「では、始める前に駄菓子を買っていただきますよ。これが私たちのお給料になりますので。」
『はーい。』
色々なお手伝いをして貯めたお小遣いの入っているがま口から、小銀貨1枚を出す二人。これは二人の午後のお手伝い1日分の給料になる。取り込んだ洗濯物運び、カトラリー準備、風呂の順番連絡等、色々なお手伝いをしてくれていた。
「では、私は二人に飲み物を奢ることにします。」
3人の中では年長である悠里は更に小銀貨3枚を出して、自分の分と妹のジュース代を払う。
一番下の二人と違い、バニラやアリスの仕事を手伝う事もある五女。お小遣いの額は格段に増え、忙しい時は二人の1000倍以上稼ぐ日もあった。
ただし、失敗した時はゼロどころかマイナスになる事もあるので、無駄遣いは控えている様子。最初はこんな小さな頃から借金を抱えて大丈夫か心配になったものである…
『ありがとうお姉様!』
「どういたしまして。」
大喜びの二人に、笑顔で答える悠里。
アリスの躾が良いのか、ソニアを真似ているのが良いのか、とても礼儀正しく育っていた。
どちらにせよ、二人ともその辺りはしっかりしているからな。
「では、どうぞ。」
アクアが代金を受け取るとポーション瓶を再利用し、割り箸を挿した水飴を、メイプルはライトクラフトの技術を活用したコースターにジュースが入ったグラスを嵌め、金属ストローを差して配っていく。
押しても倒れないコースターは我が家では大変重宝している。子供以外も何かの拍子で溢す連中が多いからな…
娘3人が横一列に並び、自分の椅子を出して座り終えるといよいよ紙人形劇が始まった。
最初の一枚目は懐かしいあの無駄に豪華な元凶の間。細部は違うらしいが実にそれっぽい。
ただ、これは城の場面として使い回す背景になるそうだ。
「昔々、まだこの大陸にヒュマスの国があった頃、かの国に異世界からたくさんの人々が召喚されて来ました。
歳も性別も経歴もバラバラな召喚者たち。積極的にヒュマスの女王様と仲良くしようとする者、勝手に色々とする者、ただ流される者…
これからの物語は勝手に色々した男性の物語となります。拍手と歓声をいただいた分だけ盛り上がりますので何卒よろしくお願いします。」
『わー!』
アクアに言われ、歓声と拍手を送る3人。
何事かと思ったのか、THEエルフという見た目の東方エルフコンビである柊とフィオナまでやって来る。
柊は元々オレと同じ召喚者だが、転生して東方エルフへと種族を変更している。この場では他に、オレ、アクア、メイプルも召喚者から転生して種族をディモス、角の生えた魔人へと変更していた。
ちなみに、転生前はヒュマス系亜人という風に呼ばれたりもしている。
この地のヒュマスの亜人嫌いは深刻で、フードで見た目の分からないオレも露骨に嫌がられていた覚えがある。
「紙芝居だったんだ。」
「まだ始まったばかりだぞ。」
「じゃあ、私も見ていくよ。フィオナは?」
「私も見ますわ。」
そう言って、それぞれで椅子を用意し、フィオナは更に柊と自分の分のイグドラシル水を用意する。
その間に話は進んでおり、場面は指導教官をボールの如く吹っ飛ばしたオレと、意気投合した同室のバニラがやんわりと追い出され、禍根を残さない為に派遣された兵から追撃を受けるシーンとなっていた。
正規兵の追撃は氷の魔法で蹴散らし、第2陣としてステータス大幅向上+徐々に洗脳といういやらしい鎧を身に付けた召喚者をアンティマジック一発で退ける。
「アンティマジック!」
「あんちまじく!」
オレ役のアクアの決めたポーズの真似をする二人。微笑ましげに皆が見ているが、オレとしては妙に恥ずかしい。今はデバフ系は動作無しで発動してるからな。
あと、紙人形ではバニラを守るかのようになっているがそんな事はなく、バニラは簡易砦内だったはず。
「旦那様のアンティマジックは全ての魔法を破壊し、鎧の重みに耐えられなくなった我々は動けなくなり戦闘は終了。
戦闘前にヒュマスを見限った梓様、鎧の重みに耐え切れず旦那様に救われた遥香様、戦闘後にヒュマス側から旦那様の方へとついた柊様が新たな旅の仲間として加わることになるのでした。」
遥香はその際に泥に顔を埋めてしまい窒息寸前だったのだが、上手くはぐらかしている。まあ、姉のイメージをやたら傷付ける必要も無いからな。
今、その遥香は、耳が短い西方エルフのリリ、伝説の種族であるフリューゲルだが機械に魂を移したヒルデと一緒に旅に出ていて不在である。
しかし、我々、という事はあの場にアクアとメイプルも居たのか。
「どういう心変わりだったのですか?」
「私?」
横でフィオナが柊に尋ねる。エルフの森東部の総領の娘であるフィオナは、ここと実家へ行ったり来たりの慌ただしい生活なので、ちゃんと見る機会が無かったようだ。
フィオナが頷くと、柊は少し照れ臭そうに頬を掻く。
「ヒュマス側に居てもまともな将来が思い描けないというのもあったんだけど、その頃は魔法なら性別を誤魔化せると思ってたんだ。」
「その割には転生で性別を変えませんでしたわね?」
「必要ないからだよ。母さん達に勝てる男ってこの世に何人いるんだろう?って思っちゃったからね。」
「確かにその通りですわ…」
主にカトリーナの事だろう。オレでは近接戦闘でほぼ勝てない。魔法ありでようやく勝率3割の相手だからな…
格闘技の心得、という言葉では済まされないレベルの技術を備えていた柊でさえ、当時は全く歯が立たなかった。
話は進み、国境の件になっている。
「ついにヒュマスの追撃を振り切り、国境を越えた旦那様一行。そこで運命的な出会いがありました。悠里様の御母上であるアリス様と出会ったのです!」
使い回される町の背景で、渋面のオレの人形に笑顔の歪んだ角を持つ女性、アリスの人形が近付いてくる。
あの頃のアリスは絵と違い、アクセサリージャラジャラだったのでとても印象深い。
ただ、効果を打ち消し合うような物があったり、魔導師なのに無駄にフィジカルを高めていたりちぐはぐな印象だった。
フィジカルの件は後に先祖が掛けられた呪いが理由だと分かり、それは娘である悠里にしっかりと受け継がれ、歪んだ角として顕れている。
「ヒュマスでありながらとても高い魔力の旦那様、その時は興味本意だけの会話だけですぐに別れてしまう事になります。
旦那様達はそのまま北上してルエーリヴへ、アリス様は国境周辺の魔物狩りへ取り掛かるのですが、これまでの道中で旦那様がレベル上げと素材確保の為に狩り尽くしてしまったようで無駄足となったそうです。」
『そんな無茶をされていたのですか?』と言いたげなフィオナの視線が痛い。許してくれ、今でもたまにアリスから言われるんだ。
あと、紙人形のバニラが悪い笑顔になったのはどういう事だココアよ。
「国境ではもう一つ大きな縁を結ぶ事になります。エディアーナ様です。
エディアーナ様に力を認められた旦那様達は、ルエーリヴに着くと一人のメイドに出迎えられました。それが三人の一番上の母君にして、我々の偉大な上司であるカトリーナさんです!」
ど真ん中にカトリーナを出し、無駄にカラフルな集中線の背景を差し込む。
尊敬が極まってなのか、日頃の憂さ晴らしなのかは聞かないでおこう。この演出、嫌いじゃない。
娘達が揃って声を上げ、拍手をした。これもあるからか、今はいないがカトリーナも強く文句を言えないようだ。
「エディアーナ様の部下であったカトリーナさんですが、この家でお嬢様方の母親代わりとして暮らす事になります。お嬢様方が旦那様の養女になったのもこの時ですね。
カトリーナ様の元、学業に、訓練にと連日しごかれる皆様。
編入される学校が決まり、生活が落ち着いた所で旦那様はいよいよ冒険者として動き出します。」
梓は元々は背が高く、カトリーナに匹敵するほどだったのが紙人形に名残として残るのはなんか良い。アクアの描いたちゃんとした絵もあるのだが、それはそれである。
「旅の仲間として、色々あって一人になっていたジュリア様が加わります。」
「おかーしゃま!」
悠里の次に大きな娘が言う。
ジュリアとの間に出来たノエミだ。社会の爪弾き者の灰色エルフだが、今は屈折することなく伸び伸びと育っている。兄にもビクターという灰色エルフがいるからというのもありそうだ。
ただこのノエミ、伸び伸びし過ぎてどこに飛んでいくか分からない。フェルナンドさん曰く、幼い頃のジュリアにそっくりだと言われて納得している。
何があっても冒険者だけは辞めないジュリア。その気質が娘にも受け継がれているのかも知れない。
「当時のジュリア様は大きな挫折を経験して引き籠り、声もとても小さく自信もなかったそうです。」
猫背の弓エルフとして描かれるジュリア。弱気の塊のように見える。
本人にとっては忌むべき過去かも知れないが、ありのままに描いてほしいと言われてこういう形に落ち着いた。出会った頃は紙人形のままだったもんな。
「旦那様達が受けたのは魔物の巣を潰す依頼。
従来なら二人だけで受けられる依頼じゃないようですが、出発までにこなして来たたくさんの依頼でその信頼を勝ち取ったようです。」
基本的にルエーリヴから日帰り出来る範囲なので採集が主だが、討伐も皆無じゃない。
魔物とは、人のいない場所なら何処にでも発生してしまうものだからな。
「その道中で一人の物乞いを助けてしまう旦那様。」
使い回せる誰だか分からない紙人形で正体をぼかす。
「その時は食事だけ与えて別れる事となりました。」
背景が切り替わり、何かよく分からないおどろおどろしい場所になった。
山のような魔物の群れ、そこから飛び出るようにデーモンが登場する。
「ぐわっはっは!我、力を得たり!この力でルエーリヴを潰してやるぞー!」
と言うのはメイプル。色んな役、ご苦労様。
「数も多く、ボスは恐ろしいグレーターデーモン。流石の旦那様も苦戦を覚悟しますが、そこに現れたのは先程助けた物乞い。
物乞いは旦那様に向かってこう言います。」
「このへっぴり腰の事はあたしにお任せくだせい!あたしに掛かりゃ、どんなヘタクソ射手も百発百中でさぁ!」
「そう、あの物乞いは各地を放浪していたユキさんなのでした!」
『おー!』
下の娘達は颯爽と登場したまたもやメイプル演じるユキに歓声を上げるが、事情を知る柊とフィオナは微妙な表情を浮かべていた。
ユキに関しては色々とあるのだが、ほぼカットされて隠れたスーパーヒロインみたいな扱いになっている。こんな小さな娘達が知るにはまだ早い事情だし、関係が壊れてしまう可能性もあった。
ユキとしても、『リュドミラ』としての自分は死んだことになっていて気が楽らしい。
「ジュリア様とユキさんは高台に陣取り、一人で魔物の群れに斬り込む旦那様。あっという間に数を減らし、雷の魔法さえ避けて進みます!
ジュリア様の矢で魔法を使うゴブリンはあっという間にいなくなり、残ったのはグレーターデーモンただ一人。そこで旦那様は魔法を使います。」
『アンティマジック!』
ポーズを決める娘三人。それ、そんなポーズ決めるような魔法じゃないからな…
あと、雷は避けていない。当たらなかったんだ。
「為す術なくなったデーモンは旦那様に討ち取られ、爆発寸前だった魔素も浄化されたのでした。
ちなみにその時の剣は後に遥香様に受け継がれ、二つ名になります。これ、テストに出ますよー」
『はーい。』
思わず吹き出す柊。
クールなカッコいい落ち着いた女性かと思いきや、妙に笑いの沸点が低い。フィオナとセットで信奉者のようなファンも多いので、幻滅しました死ね!みたいな事にならないでもらいたいものだ。
「ユキさんと言う新たな仲間に加え、グレーターデーモンを一人で討ち取った旦那様はとても有名になりました。
その実績を聞き付け、再び旦那様の前に現れるアリス様。この人とならやっていける!と思い、自分を必死に売り込みます。
その熱意に負け、旦那様はアリス様もパーティーメンバーとして迎え入れるのでした。」
笑顔になったり、必死な様子になったりなアリスの人形。実際もこんな感じに近かった覚えがあった。
変わった性格の魔導師だなぁというだけの感想だったが、振り返ると本当に当時は必死だったんだなと思う。
実家、と言うより継母との折り合いがとても悪く、冒険者を続けるか辞めるかの瀬戸際であることを知らずにその事態から救う事になったのだが…
「突如現れたデーモン殺しの冒険者、その力に頼らねばならない事態が起きます。
ヒュマス側に残った召喚者達による、エルディーへの侵攻です。
長年続くヒュマス、ディモスの確執を、当時では圧倒的な力を持つ召喚者の力によって解決しようと考えたのです。」
補足すると、力ないヒュマスは悪足掻きする為に、ディモスは被害を抑えるために頼った形だ。どちらにしても、自分達の被害を最小限に抑えるための判断だったと言えるだろう。
オレとしては依頼を蹴っても良かったのだが、同胞からの侵略は放って置けないというのもあったし、少しでも実績を積み、娘達、特に当時はバニラへの嫌がらせが無くなればという考えと、住居を提供してくれたエディアーナ商会への恩返しもあった。
「意気揚々と出撃するヒュマス側の召喚者は二手に別れ、正面と近くの山からと攻め入ります。
山側は魔法で空を滑り降りましたが、旦那様の魔法で辿り着く前に全滅。正面側も町に入り込んだものの、旦那様の用意した山のようなトラップで全滅してしまいました。」
正確には一騎討ちみたいな状況もあったが、それもアンティマジックで無力化して撃破している。ヒュマス側は魔導具による強化で力を得ているので、アンティマジックがよく効いた。
ちなみに山からの方にはアクアが、正面側の方にはメイプルが居たらしい。全然覚えてなくてすまんな。
「こうして、国境を守り切った旦那様ですが、防衛戦はこれで終わりではございません。
召喚者がエルディー内に潜り込んでおり、南東の男爵を騙して南部の伯爵領を獲ろうとしたのです。
ユキさんと共に伯爵様の居城へ急ぐ旦那様。雪で行動が遅れていたのは伯爵様だけでなく、男爵の軍隊も同じ。当時はライトクラフトも無いのに空を飛んで移動した旦那様の方が早く到着したのです。」
この移動はゲームでよくやった事とは言え、今となっては無茶も良い。
紙人形劇では詳しく言及してないが、風属性のシールドに風魔法を当てて飛ぶのはかなり危なっかしく、子供達にやらせたくはない。ライトクラフトの浮かぶ原理と同じだが、ゆっくり浮かぶライトクラフトと違い、こちらは途切れると自由落下だし、シールド側が弱いと体がバラバラになりかねない。
とてもじゃないが、子供に詳細の説明は出来そうになかった。
背景は再び城のもの。
オレの紙人形が目を閉じて豪奢な椅子に座る姿に変わっていた。
「一週間だけ守る。そう告げて旦那様は都市全体を守る防御魔法を一人で展開しました。」
そこでパタンと紙芝居を倒す。
戦闘続きの展開で、娘達は食い入るように見ていた。
「ここで一先ず休憩としましょうか。」
『はーい。』
そう返事をすると、3人は楽しそうに握り締めていたポーション瓶から水飴をすくって舐め始めた。
アクア、メイプル、ココアも話をしながら水分を補給したり、水飴を舐めたりする。
「なんだか懐かしいね。
闘技大会ところは飛ばされちゃったけど、今でも思い出すから。」
「そうですわね。良い思い出ですわ。」
そこも語ったら長くなり過ぎるのか、オレのやった大きな部分だけに絞ったようだ。
「父さんとしては、自分の事が劇になるのはどんな感じ?」
「もう好きにやってくれという感じだな。そう言うお前達も、東部じゃよく題材にされてるじゃないか。」
総領の娘とその親友の活躍という美味しい題材を、物好きは放って置かない。
二人とも背が高めで、方向性は違うがお互いに顔もスタイルも良い。やたらと目立つだけに、並んで歩けばすぐにファンが集まるのは必然だった。
どういう訳か、【隠密】を見破るファンがやたら多いんだよな…
「あはは…そうですわね…」
苦笑い、と言うより疲れたような笑いを返してくるフィオナ。
まあ、揉みくちゃにされないだけマシだが、人の流れが変わるくらい集まるのは、総領の娘としては視察もしにくくとても困るだろう。
「みんなここに居たのね。その様子だと紙芝居かしら?」
アリス、バニラ、ソニア、ジゼルがやって来る。
「ああ。防衛戦の所まで終わった。」
「そうなの…」
ジゼル以外が微妙な表情になる。
アリスとバニラはこの後の事態の責任を感じ続けているようだし、ソニアとしても学生生活を大幅に短縮する事態が待っているからな。
「見ていこうか。後悔しかないけど、あれがあったからこそ今のわたしたちがある訳だからな。」
「そうね。」
バニラの言葉に頷くアリス。
休憩しているアクア達にお代を払い、自分達も水飴とジュースを買ってきた。大人料金で割高だが、今の一家はこの二人が一番稼いでいるからな。
10分程度の休憩を挟み、紙芝居の第2部が始まるのであった。