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底知れぬ下ネタパラダイス

「はろはろ~。あはは、どうしたのぼーっとしちゃって~~このこのっ」


 龍香ちゃんは初対面に関わらず、底抜けに明るい。とても入院中の人には見えない。その笑顔は親しみやすさがありつつも……なーんか、ドS心が覗いている気がする。


 私の反応を楽しんでいるような感じだ。


「いや、いきなり、美少女の着替えに遭遇したら、フリーズもしますって……」


「ん~~? もしかしてこういうの嫌いだった? 軽い女は嫌い? なら、着替え、すぐ済ませた方いい~~?」


「いえ、むしろ早いです、そこ、ブラを付けるのをもっと、遅めにお願いします。なんなら、少し照れる形でお願いしたい」


「はぁぁ、大変な変態さんが来ちゃったなぁ。複雑だなぁ。失望だなぁ。絶望だなぁ」


「えええ!? そこで呆れられるのはさすがに理不尽過ぎない!?」


「あはは、ごめんなさい。あっ、一応言っておくけど、誰にでも裸を見せるわけじゃないからね? 私の裸ってそんなに安くないし~~。私経験ないし~」


「えっ、ええ? えっと……そうなの? 私はいつの間に、そんなに好感度が上がったの?」


「そりゃそりゃ~~。こっちにもこっちの『事情』があってねぇ~~。君のこと『いろいろ』調べたし。あはは、君は処女厨だから嬉しいよね~?」


「…………」


「あっ黙っちゃった。照れちゃって可愛い」


「1つ誤解があるようですね……」


 からかうような龍香ちゃんの態度に物申すために、私は冷静に言葉に続ける。それは私の信念に基づく話だ。


「確かに私は処女は好きです。もう初めての性行為とかしたいです。恥ずかしがる女の子の胸を揉みしだいて、わからせたいです。だけど、ビッチも好きです。私人身がわからせられたいです」


「うん、キリッと言われても困るね〜。うんうん、それを初対面の異性の前に恥ずかしげなく言えるのは才能だよね~。うん」


 もっともだが、初対面の男の前で上半身裸の人に言われたくない。


「そうそう、まずは自己紹介だよね〜名前はハナから聞いて知ってるよね〜?」


「うん……」


 確かに可愛い子だけど……舐めたいけど……ペロペロしたいけど。なんか、この子違和感があるなぁ。

 悪意はない……だけど、なんだろうこの底知れない感じは。


「私は貝島龍香。ちょっと人間観察が得意な、ちょっと重症者だよ」


「どうも……私は久木正人です」


 おかしい、ここまでの美少女ならテンションフルマックスになるはずなのに。


 こ、この私がおっぱいを前にして興奮しないなんて。


「あはは、緊張してるのかな? うーん、面白いなぁ正人は。なんか……うーん」


 龍香ちゃんは何かを悩み始める。さっきのおちゃらけた表情と違い真剣に……そしてそのまま口を開く。


 さっきとは別人のような空気の重さを感じた。


「変なこと言うけど、どうしたの体調悪いの? まるで

……『そんなに自分が嫌い?』『何をそんなに怖がってるの?』」


「…………」


 龍香ちゃんは何かを見透かすように言う。その口調は真剣の中に『心配』が含まれている。


 私はその感情が……気に食わない。


 自分でも気が付かないふりをしていた感情を言い当てられたのが……気に食わない。


「はぁ、美少女を全て愛する技量を持ってたと思ったんだけどなぁ。でも……」


 私は土産をテーブルに置いて、龍香ちゃんに背を向ける。それは拒絶だ。

 病人にする態度ではない……自己嫌悪だ。

 でも……。


「私は私です。見透かされるのは嫌いです」


「ふぅー嫌われちゃったかぁ〜。でも、私は正人みたいな人間は好きだよ?」


「…………はぁ、ここで全力で拒絶してもいいんですけど、それでは負けたみたいですね……また来ます。あっ、その和菓子のクリームははなちゃんにあげてくださいね」


 私は逃げるように病室を出る。


「何……あの人」


 全てを見透かす魔女のような人……人間が怖いと思ったのは初めての経験だった。

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