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ツンデレと天然娘……どちらが好きですか?

   ◇◇◇


 それから数日後――。

 私は……地獄にいた。


「暑い……暑い……暑いぃぃぃぃぃ」


 時期は7月。私は夏休みを満喫……しているわけではなく、地獄のダイエットをしていた。食事を絞り、毎日走ったり、筋トレをしたりと……まあ、自分で言うのもなんだが、頑張ってる。


 あれから――私は転校をすることにした。


 もちろん水落ちゃんのいる学校に……お父さんが手をまわしてくれて、編入試験を受けさせてもらい。見事合格! 夏休み明けからは水落ちゃんとラブラブ学校生活という訳だ。


「そのためには……早く痩せないと」


 幸い私は元女子校生だったので、その手のダイエット知識には詳しい。

 だけど……。


「はぁはぁ、この身体燃費悪すぎますね……」


 私は炎天下の公園に立ち寄り、日陰で自販機で勝った水を一気飲みする。冷たい水が身体にいきわたり、生き返った気分だ。


 でも……お腹減った……。

 おかしい、前の身体の時はここまでお腹が減ることなんてなかったのに……この身体、1キロ走ると空腹が半端ない……体内に栄養をため込んでるはずなのに……。


 我慢、我慢、これも可愛い女の子にモテるためだ。


「あっ! 正人! ここにいたのね!」


 その時、白の可愛らしいワンピース姿の水落ちゃんがやってきた。うん、今日も眩しいなぁ、清純な雰囲気があって……いい!


「おばさんにここにいるって聞いたんだけど……」


 水落ちゃんはわたしの身体をジッと見る。なんか、心配してるような、嬉しそうな、複雑な表情だ。私がダイエットをしていることに思うところがあるようだ。


「あんた、少し痩せた?」


「ああ……8キロぐらいは痩せたかな……」


 元々の体重が100キロオーバーだったため、すぐに減った。だけどなぁ、これドンドンきつくなる気がするんだよね……。

 ダイエットは精神の戦いって言うけど……目標はマイナス40キロだから、先が長すぎる……前の私が身体から消える感じじゃん……。


 はぁ、前の身体は3キロ痩せれば大万歳だったんだけど……。


「ね、ねぇ、私が痩せろって言ったんだけど、無理しなくていいんじゃない?」


「いや……もうちょっとね」


 私は女の子とエッチなことをするためには努力は惜しまない!! と、言うと、嫌われそうなので黙っていよう。


 と、そんなことを思っていると、水落ちゃんがモジモジと、何か聞きづらそうにしている。


「? どうかしましたか?」


「えっ、ち、違うの。別に、いじめ問題も1人で解決したみたいだし、それにダイエットまで……どういう心境の変化? ひ、ひょっとして、私が心配したから」


「ん? ごめん、声が小さくてきこえなかっ――」


「ああん!? ちょ、調子に乗るんじゃないわよ!!!」


「え、え、え?」


 な、なんかいきなり顔を真っ赤に怒り始めたんだけど……可愛い。


「わ、私はそんな安い女じゃないんだから! 少し、真面目なふりをしても騙されないんだからね!! べええええだ!!!」


 と、舌を出して、水落ちゃんは公園から去っていった。

 な、何あれ……わ、私気に触ることをしちゃったかな? えっ、水落ちゃんってもしかして……デブ好き? えっ? もしかして私がしていることって逆効果!?


 で、でも……水落ちゃん、私がダイエットするって言った時は――。


『えっ!? ダイエットするの! いいじゃない! 私なんでもも手伝うわ! 何でも言って! 何でもするから!』


 って、「こいつわざと、エロく言ってるんですか?」、と思える、際どい発言で喜んでくれたのに……。


「うーーん、なんででしょうか?」


『……その答え、プロである私が教えてあげようか?』


「わっ!!」


 その時、私が座っているベンチの後ろから、透き通った女の子の声が聞こえた。その声に聞き覚えはなく、いきなり話しかけられたので、驚いてしまう。


「えっ……」


 振り向くとそこには輝くような銀髪で制服姿、人形の様に整ったハーフ顔、さらにはスタイル抜群の美少女が立っていた……身長が160センチほどと高めで、なんか海外のモデルのようだ。


 さらにはその顔は無表情で、ミステリアスな雰囲気を纏わせている。


「『ハナ』は謎のプロ……そ全てを極めし者。手を貸してあげる」


「…………」


(あ、あれ? この子の来ている制服、私が前にいた学校の制服じゃ……い、いや、そんなことはどうでもよくて、こ、これは美少女に逆ナンされている……!?)


「え、えっと、君は……?」


「ハナはプロ。プロの狩人であり、愛の伝道者であり、やっぱり狩人……とか言えばかっこいいかな? ねぇ、貴方はどう思う……? ハナのプロの力をどう感じた?」


 無表情で淡々としゃべる美少女。

 言っていることは電波丸出しなのに無表情なせいで、なんかよくわからない大物感がある。


 普通の人なら逃げ出してもいいレベルだが……。


「…………」


 わ、わーい。電波少女と知り合いになれたぞ!

 まあ、可愛いからいいでしょう。うん。


「ねぇねぇ、はなちゃん? なんのプロなの? 実は私は転生者で、元は美少女なんだぁ」


「花は全てを超えしプロ。ほぅ、ハナもプロとして一人前の自信あるけど、あなたもなかなかだね……日差しでジンギスカンを焼けるんだね」


「そうそう、この前までは生姜焼きが限界だったんだけど、今の私のグレードだとガパオライスって感じ」


「なるほど、ガパオにフォー、そしてユッケは世界の禁忌、それを知るとはまさしくプロ」


「そうんだよーにひひ」


(うん、会話の内容は1ミリもわけわかんないけど、楽しい。美少女とおしゃべり……それだけでかけがえのない時間だ……)


 そうして私は無表情の謎のプロ、はなちゃんと炎天下の中、4時間ほどおしゃべりして、最終的に熱中症で倒れたのだった

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