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復活の朝

   ◇◇◇


 私が転生してから数日が過ぎた。


 男の身体を手に入れた私は舞い上がって、すぐにでも学校に行って、魅惑のJKたちと、わっしょいするつもりだったが……。


 それには問題があった。

 それはこの身体の本当の主『久木正人ひさぎまさと』は……酷いいじめを受けていて、不登校で引きこもりだったからだ。


「正人くんの記憶は頭の奥底でうっすらあるけど……」


 全部の記憶を理解したわけではない……得た記憶は一部だ……その一部が最悪だった。


 思い出せる記憶は決して楽しい学園生活の記憶ではない。


 それを知ってしまうと、憧れていたリア充っぽく「やっはろーおはおは!」と、気軽に登校するわけにもいかない。


(うーん……正人くんは筋金入りの引きこもり……でも今は私の意識がこの身体にある。それなら、私の自由に行動していい訳だ……いい加減、部屋での『情報収集』にも飽きたしね)


 私はこの数日、ネットを使って様々な情報を調べた。

 その結果、わかったのかが、ここは私が住んでいた地方ではなく、数百キロ離れた東京で、さらには私が死んでから1年が経過していた。


「…………私の死亡記事は見つからなかっけど、まあ、今更気にしても仕方ないよね。今は別の身体なんだし」


 軽い気持ちで制服に着替える。

 いじめなどの問題もあるが……そんなことは気にしない。


 私はこの身体になって決めたことがあるそれは『世間体なんて気にせず自由に生きる』。優等生じゃない自分を表に出す……わおっ、前のお堅い私からしたら考えられないなぁ。


「まあ……彼の『意志』も守らなくちゃ」


 部屋の片隅……隠すように置かれていた真新しいノートに一文だけ記載されて文字。

 そこには彼の『意志』があった。


「にひひ、身体のレンタル料としてまっとうしましょう」


 と、これからの人生を考えてわくわくしながらそんなことを考えながら部屋の扉を開け、リビングに向かう。


(いやー、すごく広い家だよね。3階建てだっけ? 都心にこれだけの家を建てるってすごくない?)


「…………ま、正人ちゃん?」


 リビングで小柄でとても40代には見えない綺麗なお母さんと部屋の前で出くわす。


 この数日、顔を合わせるだけで、ろくに会話をしていない……どう受け答えしたらいいかわからなかったし……でも、すごく正人くんのことを気にかけているのは、その表情からわかった。


「ま、正人ちゃん、学校に行くの? む、無理しなくても……お、お父さん! 正人ちゃんが!!」


 お母さんが広い一軒家の階段にむかって叫ぶ。すると、すぐにどたどたと重い音を響かせて、1人の長身のスラッとした男性が下りて来た。

 歳は40代半ばだが……男に興味のない私でもイケメンだと思う。


「ま、正人、もういいのか? 学校に行くのか? 無理しなくてもいいんだぞ?」


 お母さんと同じこと言ってるし……。『私の両親』とは違い本当に子供を大事にしているのが、わかる……だからこそ、正人くんは……ノートに。


『両親を護りたい……恩返しがしたい』


「…………」


 まっかせろい。私がその夢を叶える……ハーレムのついでに!


「お父さん、お母さん、わた……僕……」


なんか、しっくりこない。まあ、いっか。私のままで。何かアニメに影響されたとか思うでしょう。


「私、ちょっと、頑張ってみるね」


「…………」


「…………」


 お父さんとお母さんがぽかーんとする。やがて……泣いているような、嬉しそうな、笑顔になり、私に抱きついてくる。


「ちょ、ちょっと、2人とも!?」


「母さん!!! 今日は焼き肉だ! ビールだ! ビールを持ってきてくれ! いや、ビールなんて生ぬるい! 結婚の時に買ったいいワインがあっただろ!? それを開けよう」


「そうね! それはいい考えだわ! さあ、2人とも今日は学校と会社を休んでパーティをしましょう!!」


「そうだな!!」


「なんで!?!?!?!?!?」


 いや、はしゃぎすぎでしょ!? 正人くんどれだけ引きこもってたの!?


「い、いやいや、今日は学校行くって」


「そ、そうか、そうだよな……はぁ」


「そ、そうね、そうよね……はぁ」


 いやいや、2人ともどれだけ、正人くんのこと好きなのよ……はぁ、この感情は私に向けられているものじゃないけど……この2人は護りたくなるわ。


「おい正人、今日は早く帰ってくるんだぞ!? 絶対だからな!! 来なかったら、泣くからな!」


 子供か! はぁ……にひひ、この両親は……。

 と、バカ騒ぎをしていると、チャイムが鳴る。


 ん? 誰か来たのかな? そう言えば昨日も一昨日もこの時間にチャイムなってたね……牛乳でも頼んでるのかな?


「あっ、『水落みら』ちゃんね。はーい、今出るわね~~」


 お母さんが玄関にかけていき、扉を開ける。

 するとやってきたのはものすっごい美少女だった。


「あっ、正人……着替えてる……」


 美少女は一瞬、嬉しそうな顔をしたが、すぐに嬉しさをごまかすようにそっぽを向く。


「ふ、ふん! やっと学校に行く気になったのね! この私が迎えに来てあげたわよ! 感謝しなさい」


「…………」


 言葉を失うほどの美少女。

 美しいブロンズに染め上げられた長い髪に、身長は低めで、胸は大きい……あれはE以上は絶対にある。そしてどこか、品がある雰囲気……ドストライクだ。


「可愛い! 何、天使!?」


「な、なっ!!! あ、あんたにそんなこと言われたくないわよ! く、口説いてるの? ふ、ふん、わ、私を口説くなら、その肥大した体重を半分にしなさいよ! ふん!」


 か、顔が赤くなってる。照れてるー。可愛い~~~。

 やばい……もう正人くんの願いをもう忘れそうだ……にひひ。

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