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炎は孰れ月を染める  作者: 鴇羽ほたる
旅路
9/25

港町

こんばんは~。彼らはこれから港町へ行きます。ファンタジーですので地理的な面については目を瞑っていただきたく…。現実とは別時空だと思ってください。それから、もし宜しければ僕のTwitterフォローしていただいたり、感想をいただいたりしたいなあー、と。➡@TkihaH

よろしくお願いします。


追記

お姉さんはきっと躾の意味で教えるって言ったんじゃないと思ってる作者です。

 獣道を抜けた辺りでテオ様は馬車を捕まえた。否、馬車が待っていた。皮肉を込めて尋ねてみる。


「運良く拾うことができましたね。」


 彼はもじもじとしながら答えた。


「ううん。もともと頼んでたっていうか、なんていうか。」


 …だったら最初から楽したかった。という言葉は辛うじて飲み込んだ。



「御者の顔に見覚えない?」



 恐る恐る見れば、彼はひらひらと手を振りつつ目線を動かし、『早く乗れ』という圧を生み出している。俺も同感だ。ジタバタ暴れるお子ちゃまを姫抱きにして放り込んだ。



「ね、知り合いだったでしょ?」

「いいえ、全く。」

「えー。彼はメアリーの旦那さんだよ?」

「そうでしたか。」



 いや、知るわけないだろ。紅茶大好きメイド長の旦那さんなんて。口角がギギギと妙な音を立てた気がした。



「名前を隠して歩くときはよく彼に頼んでいるんだ。」


 常習犯め。メアリー大先生様の旦那様、うちの坊ちゃんが大変ご迷惑をお掛けしました。きちんと教育し直しておきます。



「最初から頼めば良かったのでは?こんな険しくて分かりづらい道で待つのも大変でしょうに。」


 口が滑った。まあ、わざとですが。


「んー、僕は一瞬の迷惑より一生の迷惑をかけてしまう方が良くないと思うんだよね…。」



 …は?彼は自信満々に胸を張り、さも僕、格言言っちゃったみたいなドヤ顔だが、誠に残念ながら理解不能。まず、他人様に迷惑をかけない、これ鉄則。それと、一瞬を何度も繰り返せば一生分になるでしょうに。まったくもう。


 さて、メイド長の旦那さんは意外と無口な方で(メイド長がおしゃべりだからか?)ほとんど声を聞くこともなく景色だけが通り過ぎていった。





 ***






 港街が見えてきた。潮の匂いがする。古くから栄えている所だ。売り込みの声、買い物客の話し声、子どもが笑う声。上手くこの雑踏に溶け込めれば…。


 脆い期待は裏切られるものである。馬車から降り、彼にお礼を言い(名前を聞きはぐってしまった)、商店街を歩けば、ひそひそと噂話。嫌だ。俺はただの景色になりたかった。



「ねえ、あの人大丈夫かな?」

「男子…だよね?女子顔負けの美脚じゃない?」

「分かる~。線が細いって感じ?」

「リュックからはみ出てる黒いの何だろう?」

「観光客かな?荷物多くない?」

「ズボンが黒ってところがすごいよね~。肌の白さが際立って嫌味かー!って感じ。」



 等々。とにかく足への視線が痛い。そりゃそうだ。身長一八〇センチ後半、二十歳に近い男子が生足晒して歩いているのだ。リュックの中から黒猫二匹覗かせながら。俺だってそんな人間を見かけたら五度見する。特に猫を。



 そして最も困るのが見ず知らずの露出度の高い(自分も他人のことを言えないが)、女性達が話しかけてくることだ。



「ねえ、お兄さん、今独り?ちょっと寄ってかない?オススメの飲み物(ワイン)とかあるんだけどさ。」



 俺、こう見えて十九っす。未成年っす。肉体も成長してません。NG展開やめてくださいな。まあさ、戸籍はともあれ、世話係で雇われ人だし。可哀そうに見えるかもだけど!飲み屋より、ドラッグストア教えて欲しいなぁ~、ちょっと胃薬が欲しいから~なんて。違うか。とにかく話す気力を無くさせれば状況は好転するかもしれない。



「ワタシ、チョットイミワカラナイネー。」



 くらえ!渾身こんしんの一撃ッ‼



 ん?何故腕に頬を乗せられているんだ?わー、腰とかさわさわ嫌!色々バレたくないからホントダメ。ね?



「大丈夫。私がキチンと()()()()()()。そうねえ。一緒に強いの飲んでから行った方がお互い幸せかしら?そんなに怯えなくても大丈夫よ?」



 …しぶといな。()()()って…。ああ。縄で縛ってむちで打って棒で殴って。銃口を眉間に当てながら鳩尾みぞおちかかとをめり込ませて、屈服させるあれか。そっちは幸せかもしれないけど、俺は御免だ。ただでさえ、首が繋がった状態で帰れるかどうか不明なんだ。今から暴行を受けるとか無理です。売り上げがどうのとかいうお困りごとなら他の客を探してくれい。憂さ晴らしがしたいなら、他人に迷惑をかけない方法でしてください。


 あんまり悪いことをしてると来世、俺らのように紅い目になってしまうらしいですよ。(くだらない。司祭も看守も信者も来世で苦しめこんにゃろう)そんな思いを込めて焦れたサバ(さびくろ)威嚇いかくさせ、ぱっと鬱陶うっとうしい手を払う。



「私、恋人を待って居ります故、お断りさせていただきます。」




 唖然あぜんとした顔。さっきの作り物の笑みより素敵ですよ。お嬢さん。恋人はノラ猫ってね。



 さて、うちのいたずらっ子はどこ行った?ぐるりと見渡せば、「目立っちゃうよー」なんて言いながらコスプレ衣装専門店に入って行くところらしい。のんびりできない旅なのに。店主に腕を引かれ、うれしそうにドアをくぐってしまった。


 まずい。



 俵抱きにしてでも捕まえなくては。


閲覧ありがとうございます。次回は船に乗る予定ですが、更新遅れるかもしれません。

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