出港の音色
ね!す!ご!し!た!
キリがいいのでここまで。鴇羽ほたるのGWキャンペーン!につき、2,3日以内に続きあげようかな~なんて思っています。それでは。どうぞ。
じいやにさびくろとブラックエンジェルを押し付けられてエイダンは目を白黒させていた。
「え、いや、よりによってこの二匹?魔力の波長的にはいつも窓辺でうたた寝している耳が若干切れてる猫の方が…。」
「ふふふ。エイダンがい~~~~っぱい可愛がってくれるって。良かったね。」
テオ様がもふもふと撫でると二匹揃ってにゃあと返事をする。こ、断れない!
「なっ…。承りました。」
もう降参だ。今、諦めて認めてしまえば後が楽になる時もまあ、あるだろう。
「それからさ、この栄養ドリンクも飲んでおきなよ。」
ずいっと懐から取り出されたのは人ひとりくらいあの世送りにできそうな小瓶。
「て、テオ様…、眼科を今すぐ手配しましょうか?」
「え?」
「そのどす黒くて明らかに一息では飲み干せなさそうなドロドロ感…。えいようどりんくは黄色でシュワシュワしているのがセオリーでは?今お手に持っていらっしゃるのは絶対何か危険な薬ですよね?こんなのも見分けられないくらい急に視力が低下してしまったのかと私はとても心配しております。」
彼ははて?というふうに首を傾げた。違う、そうじゃない。他者に何か飲食物を勧めるときはまず安全確認が最重要だ、と教えましたよね?健康に被害が出そうなモノはダメですよ、と口酸っぱく言い聞かせましたよね?この天使、すぐダークマター生成するから!しかもそれを味見せずにチョコレイトの返礼品とかにしようとするから!毎冬口喧嘩を繰り広げているけれどもまさかこの季節にせねばならないとは。一生の不覚!
そして想定の斜め上を行くのが彼の特技でもある。
「うーん。副作用はあるかもしれないけど一応合法的な飲料だよ?エイダン、僕のことを疑うの?」
…副作用のある栄養ドリンクなんて聞いたことがありませんが?空耳でしょうか?
もう一押し、とばかりにテオ様は俺の手に触れる。そしてそっと薬品瓶を握らせ、お願い、と囁かれれば警戒心が二の丸辺りから崩壊を始める。これだから俺の慣れない包丁捌きとへっぴり腰のフライパン使いをシェフが手のひらにない爪立てて見守っているわけだ。毎朝毎朝。いや、これは本当に謎のルールというか当主命令。何故、朝食だけ俺が作ると決めたのだろうか。シェフのクリス、今度錠剤の胃薬買ってきます。遺言になりそうだが…。
「ねえ、おねがぁ~い♡」
こ、の、破壊力っ!語尾にハートはご遠慮いttdkr
「うっ…。」
忘れてはいけない。このうるうると揺れる碧い瞳に耐えられず苦い漢方薬を飲まさせられた日を。忘れてはいけない。この謀った角度で小首を傾げる愛らしい仕草に判断力を削がれ、お弁当に人参を入れることを断念した日を、忘れ…
「テオ様がそこまで仰るのなら。」
理性は情に負けた。明らかに危ない黒墨を一息に呷る。
「…ッ⁉ゲホッゴホッゲホッ⁈」
味は言わずもがな。この感触?舌触り?はとろみを通り越してどろみとでも呼ぼうか?喉に果てしない不快感がある。これが副作用か?
「おっ?やったー!流石じいや。効果覿面だよ!ちゃんと黒い瞳に変わってる!」
怪しい液体を渡されたら本人が真実を述べるまで問い詰めるべし。そう、自分の脳内辞書に書き足した。
続きます。