オトギリソウ
一週間後には~なんて言ってたら二週間以上経ってしまいました。申し訳ございません。書かなくてはと焦りつつ、リアルの忙しさに涙し、それでも読んでくださる方々に励まされ、の毎日でございます。いつも悩むのですがルビはこのくらいで大丈夫でしょうか?誤字脱字、要望等ありましたらご連絡ください。
街中とは打って変わって整備された道。怪しげな黒いリボンの巻かれた針葉樹が乱れなく並んで植っていた。目眩しのようなものはなく、朔の祭壇へは存外簡単に着いた。色々と問い詰めることもできたし、よかったよかった。オータムは憐れみの情が湧くくらい震え上がっていたが、ヒトはヒト。自分は自分。気にしないで、俵抱きのまま辺りを見回した。
…嗚呼、相変わらず、だな。やはり、教団というのは…。ははは。昔のボクは逃げた。恐ろしさに、自分の欲のために…仲間の夢を叶えるために。
今の俺はどうだろうか。生き続けているってことは、まだ変わってないのだろうか。それとも、全てに溺れて濁ってしまっているのだろうか。
なあ、朔。折角逃してくれたのに、また戻って来ちゃったよ。あんたが散った祭壇の板は所々黒く脆く跡を遺してるのに、あんた自身が生きた身体はここに一切残っちゃいない。俺の…ボクの心に巣食うほどの憎悪を、せめて最期に向けてくれれば。もしそうしてくれたなら。あんたをあんたが守りきったという家族とやらに合わせてやれたのに。何にもないボクを生かして、キミは一体どうするつもりだったの?
口に出ることのない問いかけは薄暗い影を落として蓄積していく。問うても問うてもかえってこない。答えも…仲間も。そんなこと、分かっている。絶望の棺桶に片足を飲み込まれながら、あの日、光を手にした表情をしていた。ボク以外は。どうせ消えちゃうのになんで、としか思えなかった。彼らが夢を叶えるためにと選んだのはあまりにも残酷なものだったから。どうして生きることを選ばなかったのか。それこそ………ボク一人を差し出せば簡単だったのに。
「う~ん。情報が正しければここら辺に…」
テオ様は石像の土台をガサガサと揺すっている。
確かそこは………
『聖なる鉱石を嵌め込んだ像だ。ここから神は我々に祝福を与えてくださるのだ。』
キンッと脳裏を突き刺す記憶。嗚呼、反吐が出る。
「あったあった。まったく。こんなの大事にしてるとかホント最低だなぁ~。」
白銀の少年がどす黒く大きな鉱石を手に近づいてくる。ニタリと口角が吊り上がった仮面を被ったまんまで。
「ねえ、これ、何に使うの?これさぁ、お城で大事に大事に保護されてたはずなんだけど。」
誰かに問いかけている。見えない、誰かに。
「灯り、出して」
「仰せのままに。」
仕掛けられていた魔法陣を解く。ねちっこく編まれたそれは術者の性格を表しているようだ。
「ふーん。冷酷ジェスターってのはみょうちきりんな収集家だったってことか。」
「どーも。こんにちは~。キミのこと、皇帝が首なっがーくして待ってるよ。勿論、可愛いアクセサリーで着飾って見せてあげてね。ヒペリカムくん。」
テオ様はトントンと軽快なリズムで飛び跳ねる。
「ねえねえ。ヒペリカムくんが魔法を使えるのって、死刑執行人で、儀式に携わるニンゲンだったから?」
キャハハフフフと愉しげに嗤う彼に対し、奴はギリギリと歯軋りをする。
「それってさ~、キミが焼いたマホウツカイたちと何が違うの?」
悪魔のような笑い声が響く聖なる地に雷鳴が轟いた。大木がテオ様の頭上に迫る。
「その魔法も、可哀そうな子どもから奪ったんでしょ。キミ、許されない罪を犯し続けて、何にも感じなくなっちゃったんだね。オキノドク。」
オトギリソウはフランス語でヒペリカム?と発音するらしいので。登場人物の名前も伏線だったり、そのキャラの性格、人生等を反映したりするようにしています。いつも読んでくださる皆様、ありがとうございます。次話もよろしくお願いいたします。もし宜しければ感想、評価等いただけますと幸いです。m(__)m




