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炎は孰れ月を染める  作者: 鴇羽ほたる
敵地巡り
18/25

冷たい宮廷道化師

真夜中に失礼致します。最近目の不調により、書物を読む時間をセーブしているのに連絡は全てオンライン、やらなきゃいけないことも全てオンラインで液晶と真正面で向かい合って瞳を酷使せねばならず、ゴリゴリとHPを好きでもないことで削られていく感覚に発狂しそうです。いつも読んでくださる皆様、ありがとうございます。連載を続けていられるのも心優しい読者様がいてくださるからです。

 視界を霧で埋める。亜空間を創り、そこに2人で閉じこもるように転移した。


「ふふふ。幸せですねぇ。2人っきりになれましたよ?ここなら存分に撃ってくださって構いません。私も、好きなだけ、この子で可愛がって差し上げますから。」


「ひ、ひぃ…!」


 ふん。腰が抜けたか?地に手をつき、カエルのような膝の形でカクカクと震えている。彼ご自慢の麻酔銃はあちゃらな方向へ転がり、腹部がこちら側を向いている。戦闘では弱点を隠すべきじゃないのか?まあいい。


「ここは私が一時的に創り出した世界のようなモノ。さあ、楽しく遊びましょ?」


 少し外して斧を振り下ろす。左手の伸びた小指の爪を掠ったらしく、パキリと割れた音がした。


「ギャァァアッ‼︎負けました!まげまじだがらゆるじでーーーッ⁉︎」


 五月蝿い。五月蝿くて仕方ない。耳障りだ。この程度で悲鳴をあげるなよ。たかが爪が割れただけじゃないか。俺らは…ボクたちは………こノテいド、泣イテモゆルシテもラエなカッタ…。オまエラ、ニンゲンノせイデ…………


 怒りに任せ、瞳孔が細くなる。


 勢いよく振り上げた、その時。



『堕ちてはいけないよ。エイダン。』



 頭に響く主の声。痛い。痛い、痛い。視界が揺れ、吐き気がする。



 (愛し子)を背後へ放り投げ、首根っこを掴み、手荒く片手で気絶させた。



 ***


 暫し眩暈が止むまでしゃがみ込み、呼吸を整えた。首から滴る血液は鎖骨の窪みに溜まり、服の下へと流れてきて不快だ。というか、テオ様がこの姿を見てしまったら大変なことになる。またあの小刀(ナイフ)でどこかを傷つけかねない。いや、もしかしたら、鮮明に思い出してしまうかもしれない。タイミング悪く、雨も降っているみたいだし。はぁ。まったく厄介な首枷(呪い)だ。


 服についた血を蒸発させ、傷は本来の姿に上書きし、元の見た目に戻った。


 ツン、と壁を突けば、亜空間は壊れる。麻縄で少年を縛りあげ、俵抱きにして、元の次元へ帰る。


 トン、と降り立った俺にテオ様は満面の笑みを浮かべた。よかった。誤魔化せているみたいだ。


「おかえり。エイダン。さて、その子には道案内をしてもらおうか。折角幸せに眠ってるとこ悪いけど、起きてくれないかな?」


 テオ様は彼にデコピンをした。あくまでも起こすために行ったのだろう。額に赤い痣ができる程度で済んでいる。


「いだっ!負けましたって言………っ⁇はっ?なんで…?」


「おはよう。ふぅむ。言動から推測するに例の教団に何か恨みがあって僕の兄弟をスカウトしたっぽいね。あー、力が全てみたいな教育でも受けてきたのかな?それと、なんのかんの教えを否定しきることができるほど強い心は持っていない。下手したら信じちゃってるところもある。」


 カタカタと少年は震え始めた。よっぽど恐ろしいのだろう。さして話したわけでもなくただ遠目で観察していただけの彼がスラスラと言葉を紡いでいく様が。冷ややかな笑みで暴いていく様が。


「兄弟は…もしかして天国に逝かされちゃった?ちっちゃい子だったのかな。可愛い可愛い弟だったんだろうねぇ。」


 ひぇ、と悲鳴が上がる。どうして、どうして、とパクパクする口から譫言が漏れている。


「あと、君はあの首枷を見て判断しただけで魔力痕の分析や僕の体質的特徴、もし僕と彼が契約していた場合に起こり得ること等々も知らないみたいだね。だから武器が麻酔銃と強化薬のみ。勝ち目がないよね。最初っから。」


 彼はガタガタと(グリップ)を握りしめた。


「仲良く遊ぼうと思ったら、情報を抜け目なく集めるところから始めないと。ましてや、協力して欲しい相手なんかは、ね。」


 カチ、カチカチカチ


 必死にトリガーを引いている。されど銃口(マズル)は眠ったまま。可哀想に。


「な、なんで、なんで、弾が出てこないんだよっ!」


「少々改造させていただきました。とっても興味深い仕組みになっていらっしゃったようで。それと。こちら最後の弾でしょう?大事に取っておくべきなのではありませんか?」


 左手のひらを見せる。金に輝くソレを怯えるように防弾チョッキが目を瞠った。


「そうそう。兄弟の言う通り。君、その弾は大事にした方がいいんじゃない?君の当初の目的って、彼の首を差し出して、隙を衝いてお偉いさんの心臓心臓(ハート)に穴をあけることでしょう?」


彼の肩が激しくビクリと震えた。


「な…、どうして?」


「だって君、銃の腕は申し分ないのにお守りのように麻酔銃(ニセモノ)を使い、実弾入りハンドガン(ホンモノ)は極力使用しないようにしてるからさ。そんなの、なかなか隙ができず弱らず、といったバケモノが狙いなのかな~ぐらいの考察は可能だよ。キミの言動から、ね?」


テオ様は優雅な仕草で少年の顎を掬う。糸にかかった獲物をどこから食べようかと悩む蜘蛛に似た表情で。


「道案内をお願いしてもいいかな、オータムくん。いや、違うか。君の本名は…」


 ニタリ、とテオドール様は嗤う。


「いいいいいいや、ここ、ここっ、ここで本名までは言わないでくれ、くれー、ください。お、お、オータムで!」


「ふふふ。生きがいいねぇ。そう思わないかい?兄弟。」


「そうですね。バタバタ暴れるのでそこら辺のレンガにうっかり埋めてしまいそうです。」


 ひぃいと情けない鳴き声が上がる。テオ様は魅了するかのような甘美な声で囁く。


「自己紹介がまだだったね。僕はね、『冷酷ジェスター』って呼ばれているんだ。以後、お見知りおきを。ステキな坊や(ジュニア)。」

宮廷道化師=ジェスター


今までのテオちゃんの言動からもぴったりなのではないかと。気になる方は検索してみてください。テオドールなのに冷酷ジェスター。

火が嫌いな魔法使いなのにエイダン。

疑い始めるとキリがありませんね。

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