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炎は孰れ月を染める  作者: 鴇羽ほたる
敵地巡り
16/25

鈍色

久しぶりにございます。

いつも読んでくださる方々、初めて読んでくださる方々に感謝を。

 パシンッ


 湿った街道に乾いた音が鈍く反響した。


 ピシャッと水を跳ねながらカランと転がった銀を見て初めて、ああ、自分が主の手を叩いたのだ、と知った。自分の紅で染まった手は彼の白い腕に線を描いたみたいだ。


「なに…を…?僕は、僕は、家族を失いたくないだけ…」


「俺は契約に縛られた魔法使いだ。ホンモノの家族じゃない。ずっと、ずっと思ってた。貴方はいつまでママごとを引きずるつもりだ?」


「ちがう…ちがうよ?ぼくらは………」


 紺碧の瞳に翳りと涙が滲んで揺れる。


「俺には家族なんかいない。だから、だからあんたは俺を無理矢理生かそうなんてしなくていい。そこらのニンゲンのようにこの呪われた身を嘲笑って(わらって)くれて構わないっ!それに、これは、大した怪我じゃない…から。こんなののせいで傷を増やさないで…。」



 この首枷(チョーカー)は、この首の締め痕(うらぎりもののあかし)は呪いなんだ。俺は貴方まで巻き込みたくない。もしできるなら、この不毛な闘いからだって遠ざけたい。彼が俺のためを思ってくれているのは、痛いほどよく分かる。それでも。いやそうであるからこそ。俺のせいで周りが傷つくのはもうごめんなんだ。


 嗚呼、だからあの時断ろうとしたんだ。なぁ、『じいや』。俺にはできないよ。あんたみたいに勝って得るってことは。俺は逃げるだけで精一杯なんだ。最小限の守りたいものだけ守って逃げて、守りきったら散る。俺が、俺さえいなくなれば、って思ったことすらある。ただ、アイツらの声が、『生きろ』って微かな声で叫んでた、あの声が、耳から離れないから。逃げて、逃げ続けて、生き続けてる。定められた寿命はとっくに超えた。アイツらの声を頼りに、器を誤魔化してどうにか詰め込んだ、収まりきらない魔力を抱えて魂を引き留めて生きている。アイツらの真っ暗い絶望の底なし沼に嵌ったような、かの地獄の発端が俺であったと知った時の顔が、揺れる瞳が、溢れ出ていた暗い感情が、枷となって今尚、俺の心は浮かばぬよう縛り付けられている。


 そんな、ガラクタの俺が"怪我"しただけで貴方はどうして傷ついたような表情をするの?


「ねえ、エイダン。どうして君は君自身を大切にしてあげないの?君ってさ、いつも『死にたくない』って言うのにさ、言ってることとやってることが真逆なんだよ。」


 グサリと紋のある左胸(しんぞう)に鋭い言葉が刺さった。


 幼い俺………僕が悲鳴をあげている。


 慟哭している。


 聞こえない、聞こえない。


 僕は…俺はそんなんじゃない。


「テオ様の仰る意味が分かりませんな。」


 彼は一寸、鋭く射抜く突き抜けた視線を向けたがすぐに引っ込め、代わりにやれやれと肩を竦めた。


「本名言っちゃうなんて、危機管理能力(おつむ)がなってないね。だから………『しゃがめっ‼︎』」


 ガクンっと目線が下がった。地面が目の前に迫る。




 銃声が遠く、耳をつんざくように響いた。

鋭意執筆中。多忙を極めております。お盆過ぎには落ち着くかしらね、といったところです。続きはしばしお待ちを。バトルに入るかしら。

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