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炎は孰れ月を染める  作者: 鴇羽ほたる
旅路
12/25

囮の子

タッチパネルと盛大に喧嘩しましたが、無事、更新することができました。今回は誘拐された少女目線になります。

「今すぐ家に帰してよ⁉何ここ?めちゃくちゃに魔力と怨念が混ざってて凄く汚い!」



 やっと猿轡さるぐつわから解放されたので取り敢えず抗議してみる。感想は見たまんまそのまんま。


 ピシャリッと頬に痛みが走った。


「神聖な地になんと無礼な!口答えするこのおぞましい魔法使いなど生かしておく価値もない。司祭は何故こんな汚らしい魔法使いに慈悲など…。きっと深いお考えがあるのだろうが…。やはり野蛮で危険であると再度報告しなくては。」


 は?何言ってんのこの人。まあいい。とにかくここで過去に起きたことと私が誘拐されたことに何らかの因果関係があるのだろう。それにしても恐ろしい場所。たくさんの魔力が混ざり合ってて吐き気がする。腐って乾いた血の匂いもするし。あちらこちらに染みのついたこん棒や革紐、錆びた鉄の枷が転がっている。もとは拷問部屋か?なんてところだ。きっと乱暴されていたのは皆、魔法使いだろう。しかもかなり魔力の高い未発達の…


 …子ども?


 あろうことか魔力垂れ流しパーティー状態だったようだ。本来制御して体内に留められるはずなんだけど…。なんだか気味が悪い。


「あんたら、もしかして十にも満たない子どもに虐待してたの?」


「は?我々は司祭様からのありがたきご指示に従っていただけだが。俺がお前のようなバケモノに軽蔑されねばならん理由なぞ無い。まあ、司祭様からのありがたき御言葉に何も感じられない哀れなバケモノだからな…。」


 少しバツが悪そうにそっぽを向いた。そして醜い笑顔を向けてきた。まるで誤魔化すかのように。


「さて、お前らは一生理解することなど不可能だろうが…。極限まで精神が疲弊ひへいした状態の魔法使いが神聖な炎を浴び、美しき太陽を照らし返す槍の切っ先を心臓に受け止め、許しを請う。それだけでお前らは前世の罪と今世の罪から解放されるのだ。素晴らしいことだろう?おっと、俺は業務がある。何でも己の大罪に恐れおののき、逃げだした六百六十六番が見つかったらしくてな。俺もお前をろうに放り込んだら合流せよとのことだ。せいぜい今のうちから己の罪を反省していろ。」




 そう言って彼は去って行った。何を話していたのかあんまりよく分からなかったけれど、魔法使いの子どもをここに集めて苦しめていたことは明白のようだ。精神的に疲れた状態では怪我の自然治癒力が低下している。そして火炙ひあぶりし、心臓に刃を突き立てる…。十に満たぬ子どもたちを、だ。バケモノはそれを良いことと信じて疑わないニンゲンの方じゃないか。



 私は魔力が弱い。けれど、見分けるのは得意だ。そういえば逃げ出した子がいるって言ってたっけ。誰なんだろう。スンスンと探る。もしかしたら何か打開策があるかもしれない。どこかに出口があるかもしれない。痕跡を暴いていけば分かるかもしれない。それにしてもおかしい。まともな魔法を使った跡がほぼない。…子どもだから正しい使い方を知らなかったということかな?


 それじゃあ…


 足元の血痕からエイダン様の魔力が漂っているように感じられるのも気のせい?特徴的な魔法陣の外郭がちょっぴり残っている。何の術だったのか解明してみよう。もしかしたら、ってこともあるから。


次回はエイダン目線に戻る予定です。

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