ー遥か上空の世界。それが僕たちの現実であったー
「シュタイン……シュタイン……」
遠く彼方の記憶。
「シュタイン……シュタイン……」
重なり合う母の声。
「シュタイン、あなただけは……」
業火とともに霞んでいった。
◇ ◇ ◇
聖歴ー634年。
ディエゴ公国・天都ディオストン
大天使・ヒュエゴの創世7世紀で4年に一度の聖なる式典が催されていた。
天輿の上に乗った聖護司祭を中心に一列に伸びたパレードは華やかな賑わいを見せていた。
リズミカルな音楽にドラム式の太鼓、トサカのついた帽子と露出が多い服を着て踊るピープのダンサー。
そして、笛を吹くゴモラ(二足歩行するハムスターのような種族)たちに武具を装備したリゼード(二足歩行のトカゲ種族)、子どものはしゃぎ声がするのは羽のついたピクシス(10〜20cmの妖精)の仕業だ。
そして銀の甲冑を身にまとい列をして行進するピープの守衛たち。
今回の主役はその後に続く天使の羽衣を身に纏ったディエゴたちであった。
ディエゴたちは笑顔で手を振りながらディオストンのピープたちに手を振っていた。
ディエゴ公国におけるディエゴは神そのものの扱いであった。
「ねぇパパ? あの人たち誰?」
無邪気にわたあめを持った少女が父親に尋ねる。
「あの方々はな、この国の王子、王女様なんだ」
「へぇ」
そして少女は再びその行進を見守る。
「パパー」
少女は無邪気に言う。
「ん?」
「じゃあ私もいつかあの人たちみたいになる」