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scene:74 新スキルと小麦粉

 巨大馬頭羅刹が長剣を振り上げ、俺に襲いかかった。弓を取り戻そうとしているようだ。振り下ろされた長剣を躱し、擂旋棍を守護者の足に叩き付ける。


 回転する旋刃が太腿の肉を抉り、血を流させた。巨大馬頭羅刹が怒号し、俺を追ってきた。河井が守護者の背後から近付き『五雷掌』の【天雷】を叩き付ける。


 【天雷】の衝撃が守護者を弾き飛ばす。バランスを崩した守護者が俺の方へ倒れかかってきた。避けながら擂旋棍に気を流し込み旋刃の回転速度を上げ、渾身の力を込めて守護者の傷ついている足に叩き付けた。


 太腿の筋肉の半分が粉々に弾けた。そして、巨大馬頭羅刹の巨体がバタリと倒れる。そこに美咲が近付き薙刀で、その首を斬りつけた。


「なんて硬い首なの」

 美咲が斬りつけた時の手応えを愚痴るように言う。だが、その首から血が流れ出していた。


 俺は持っている守護者の弓をエレナへ渡した。守護者が持っていた時は、短弓のように見えたが、エレナが持つとロングボウサイズに見える。


 倒れていた守護者が起き上がろうとする。俺は駆け寄り擂旋棍を馬面うまづらに叩き込んだ。守護者の瞳がぐらぐらと揺れる。目を回しているらしい。


 エレナが守護者の弓に矢を番えて引き絞る。だが、弦の張りが強すぎて半分ほどしか引けないようだ。それでも矢を放つと今までの三倍もの速さで飛翔し、矢が守護者の胸に突き立ち爆発した。


 矢が深く突き立ったことで威力が増したらしく、大きな傷口が開いた。その結果にエレナ自身がびっくりしている。自分の弓で射た場合と全然違ったからだ。


 俺は影刃狼牙棒に武器を換えた。『操闇術』の【螺旋影刃】を使う。黒く螺旋状に渦巻くドリルをパイルバンカーのような勢いで突き出し、エレナの爆裂矢で開いた傷口に突き入れた。


 守護者の大きな口から大量な血が吐き出される。巨大馬頭羅刹はカッと目を見開き、最後の力を振り絞って長剣を俺に向かって投げた。


 こちらに向かって長剣が回転しながら飛翔してくる。地面に身を投げだして避けた。そして、もう一撃加えようと影刃狼牙棒を握り締める。


 だが、守護者はそこで力尽きたようだ。地面に倒れ動かなくなる。

 次の瞬間、どこを残すか選択しろ、という声が俺の頭の中に響いた。試しに武器としてみたがダメだ。仕方なく弓を指定する。


 次の瞬間、弓を残して守護者が心臓石に変わる。頭の中にまた声が響いた。


【守護者ユヴェロスを倒しました。あなたの所有するスキルから同系統のものを選んで統合することができます。どれを選びますか?】


 俺が持つスキルの中で統合できるのは、武器系統と気功系統らしい。気功系統の『小周天』『軽身功』『硬気功』を選んだ。


 統合されたスキルが『大周天☆☆☆☆』となった。頭の中に『大周天』のスキルに関する情報が流れ込んだ。あまりにも膨大で整理がつかない状態となった。


【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】


 レベルアップの苦痛が訪れ、俺は立ったまま耐える。

「ふうっ、きつかった」


「痛みが治まったなら、ぼやぼやしないで、泉に飛び込む」

 美咲が容赦なく指示を出す。


「ちょっとくらい休ませてくれよ」

「この後、倉庫を確認したいのよ」

 俺は溜息を吐いてから、分裂の泉に飛び込んで制御石に触った。


 俺が選択したのは、スキル一覧からスキルポイントなしで任意のスキルを一つ習得というものだ。選んだスキルは、今回のレベルアップで一覧に加わった『変換炉☆☆☆☆』である。


 変換炉という言葉で、原子力関係の力が得られるのかと思ったが違った。このスキルは様々なエネルギーを別のエネルギーに変換する機能を持つらしい。


 泉から上がった俺は、新スキルについて考えた。

「面白いスキルだ。研究次第では様々なことができるようになるかもしれない」


 エレナが弓を持って、俺のところへ来た。

「この弓はどうするの?」

「エレナが使ってくれ」

「でも、私じゃ力が弱くて、十分に使いこなせない」


「それだったら、『筋力ブースト』か『小周天』のスキルを取得して、筋力アップを工夫すればいい」

「なら、黒井さんが入手した『八段錦』にします」


 俺はちょっとがっかりした。『小周天』は人気がない。『八段錦』にはサポート機能みたいなものがあり、割と早めに気功を使いこなせるようになるが、『小周天』は才能とかなりの訓練が必要だからだそうだ。


 俺には才能があったから、気功を使いこなせたが、才能がなかった人は苦労しているようだ。その点、『八段錦』は誰でも大丈夫らしい。


「コジロー、ステータスはどんな風になったの?」

 美咲が遠慮なく訊いてきた。


【氏名】マキ・コジロウ 【職業】探索者 【レベル】41

【筋力】48 【素早さ】45 【体力】46 【器用】40 【脳力】28 【超感覚】41

【スキルポイント】37 〔スキル選択〕

【アクティブスキル】『投擲術:7』『斧術:6』『心臓石加工術:7』『気配察知:4』

          『大周天:4』『棍棒術:9』『操炎術:5』『操闇術:9』『刀術:5』

          『探査:4』『超速思考:5』『特殊武器製作:4』『変換炉:1』

【パッシブスキル】『物理耐性:8』『毒耐性:6』『精神耐性:6』


 『小周天』『軽身功』『硬気功』が統合されて『大周天』に変わり、『変換炉』が追加されている。その他には『特殊武器製作』のスキルレベルが4にアップしたようだ。


 様々な武器を製作したので、その影響だろう。そして、職業が『探索者』に変わっている。職業が変わったのは、食料エリアの通達があった頃なので、一年経過したということが何か影響しているのかもしれない。


 俺は皆に特に変わった点を説明した。

「へえー、『大周天』と『変換炉』か。面白そうなスキルを手に入れたのね」


「そうかな。『変換炉』って、どう使うのかさっぱり分からないよ」

 河井は首を傾げていた。


「そうですね。私にも分かりません」

 エレナまで、そんなことを言った。俺自身もまだ良く分かっていなかったので反論できない。だが、凄いことができると漠然と感じていた。


 美咲が倉庫をチェックしようと催促した。パン工場なので小麦粉があるかもしれないと考えているのだ。倉庫の入り口は、東側にあった。


 入り口は鍵がかかっていたので、擂旋棍で鍵を破壊。扉を開けると奥の方に大きな袋が積まれていた。二五キロ袋の小麦粉が山となっている。


「これは一年以上前のものよね。大丈夫かな?」

 エレナが不安そうな顔をしている。

「一つ袋を開けて、チェックしてみよう」


 俺は一番近くにある袋を開けて、白い小麦粉を掬い上げた。変色もカビも生えていない。見た目では大丈夫そうだ。


 河井も小麦粉を手に取って匂いを嗅いでいる。河井は美咲の方に顔を向け、

「ボス、上物ですぜ」

 美咲が河井の頭を叩いた。

「誰がボスよ。それに食べ物で遊ばない」


 エレナが山となっている小麦粉を見ながら言った。

「一年以上経っているから、早めに食べた方がいいんでしょうね」

「そうね。県に言って、各町に配ってもらうのがいいようね」


 装甲列車が迎えに来るのは、八日後である。その最終日に駅に運んで装甲列車に積み込むことにした。

 俺たちは五袋だけシャドウバッグに入れて、神部たちに知らせることにした。


「ちょっと待って、あれは砂糖じゃない」

 美咲が砂糖の袋を発見した。砂糖は食料エリアのサトウキビから作れる目処が立っている。だが、それは黒砂糖であり、白い砂糖を作るには時間がかかりそうだという。


 小麦粉ほどではないが、砂糖の山があった。俺たちは砂糖の全量をシャドウバッグに詰め込んだ。今の状況だと上白糖は貴重なのだ。


 パン工場を出て拠点に決めた学習塾に戻る。

「お帰りなさい。首尾はどうでした?」

 神部が尋ねた。


「ああ、三メートルもある巨大馬頭羅刹を倒したよ」

「凄いな。……そうだ、倉庫に小麦粉はありました?」

「あった。山のようにあったんで、取り敢えず五袋だけ持ってきた」


 土田が不思議そうな顔をする。

「あれっ、コジローさんたちは大きなシャドウバッグをいくつも持っていると言ってましたよね。何で全部入れて来なかったんです?」


「一回じゃ運べないほど多かったんだ。それで最終日に駅まで運んで、後は装甲列車で運んでもらうことにした」



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