行先
翌朝、ヴィダールは昨日の出来事を親に話しながら朝食を済ませると装備一式とお金を確認して商店街へと向かった。
商店街は昨日のことを考えさせないほどに人と物の行き来が活発だった。そんな商店街を眺めてヴィダールは親に何か買ってあげる物があるか探していた。
「そこのあんちゃん。ウチの果物買っていかねぇか?」
多様な果物を売っているおっちゃんが視線をフラフラとさせていたヴィダールに声をかけた。ヴィダールは視線を種類別に分けられている果物に目をやったのちにおっちゃんに目線を合わせた。
「果物か。それもいいな。おじさん、親に果物をプレゼントしたいんだけどおすすめはあるかな?」
「プレゼントですかい?そりやぁ、人の好みによりますけど無難なのはりんごですかな?単品だと花がねぇから、よかったらあっしが選別いたしやしょう!」
そういっておっちゃんはバスケットを取り出し、次々と色鮮やかに盛っていく。りんごになし、西洋梨、イチゴにみかんと季節物を中心にフルーツバスケットは出来上がった。
「親孝行ってこともあってまけとくよ」
そう言われて提示された金額とお金が入っている袋を確認すると、その金額にぴったりと払えるお金がなかったので、大きい金額を袋から取り出す。
「細かいのがなくてごめんなさい」
「毎度あり!冒険者にしては少心的だなあんちゃん。今後ともうちを贔屓にな」
釣り銭とバスケットを受け取り、家に帰り早速親にプレゼントした。二人とも我が子の成長と果物のプレゼントにとても喜んだ。
ヴィダールはまた商店街へと足を運んだ。それは、昨日の戦闘で散った人らに花を添えるために。
ヴィダールは二つの花束を買った。一つは様々な花が取り入れられた色彩鮮やかな花束。もう一つは女性が好みそうな花を集めた花束だった。
その二つの花束を戦場となった場所に置き、ヴィダールは黙祷を捧げた。
時刻は正午。ヴィダールは隙を持て余していた。昨日の疲労が完全に取れきっていないと思い今日は休もうと思っていたが、意外と疲れていないのだった。
ヴィダールは昼食をギルドで取るべく移動していた。その時、後ろから女の子がぶつかってきた。
「大丈夫?前を見てあるかないと・・」
少女は俯いたまま謝りもせずそのままどこかに去ってしまった。悪寒が走りお金が入ってる袋を確認しようとするも、なかった。
人混みをかき分けながら急いで少女を追いかける。同時に索敵魔法を使いマーキングする。
少女は薄暗い路地に入り、後ろを振り返りヴィダールを振り切ったことを確信する。しかし、前を向くと少女の目の前には振り切ったはずの男がいた。
「お金返してくれるかな?」
「ごめ、、ごめん、、、なさい。お金がないと、、、」
少女は泣き始める。ヴィダールはどうしたものかと考え始める。
「困ったなぁ。・・・親に引き取ってもらえるかな?考えても仕方ないし、聞きに行こうか。ね?」
ヴィダールは少女から袋を返してもらうと、少女の手を取り歩き始める。その途中に午前にお世話になった果物屋に寄りりんごを一つ買ってあげた。
少女のことを親に話すと、すんなりと受け入れてくれた。
ギルドで昼食を済ませクエストボードをじっと眺めていた。採取に討伐、捕獲に護衛、落し物探しに迷子の探索依頼と様々なクエストが貼ってあった。
ヴィダールが手に取ったのは王都までの護衛依頼だった。王都は最北端にあり、この時期だと雪が降り始める頃合いだった。