少年の剣
「おい、おい坊主。やっと目が覚めたか。たくよぉ、こんなところで昼寝しやがって死にてぇのか?」
一人のおっさんに起こされて周りを見渡すヴィダール。この場所以外全く日光が入らないほど生い茂った森。この場所は洞窟の入り口付近であったが、洞窟の入り口は見当たらなかった。
「それにしても、坊主お前珍しいな剣に杖だなんてなぁ。両方ともにセンスがあるのは羨ましいがなぁ、如何せん器用貧乏に成り易いからな気を付けろよ」
男はヴィダールが目覚めるのを確認するとそそくさと去ってしまった。
ヴィダールは持ち物を確認した。メリアルが持っていた杖に、鞘、その鞘に見覚えのない剣があった。しかし、その剣の名前をなぜか知っていたのだ。
「セイ・・バー?」
口がその剣の名前が知っていたかのように発声する。刀身は光に触れると青白く輝き、振り回しの利き易い重量でヴィダールにはちょうど良かった。
だが、ヴィダールがこの剣を持った事を彼はどういう意味だったのか、何を託されたのか、彼がそれを知る故はなかった。
セイバーよりも今の彼には少しの時間を仲間と共有できた事と、その仲間をすぐに失ってしまった自分への失望でかなり落ち込んでいた。
セイバーを腰の鞘に携えて街に戻る。収穫はないし、仲間を失った散々な日だった。
ヴィダールは冒険者ギルドに彼女が死亡した事を告げた。その後、彼女が行っていたと思われる教会に立ち寄った。
「おや、あなた方は・・・メリアルから話は聞いてますよ。彼女を助けていただきありがとうございます。彼女はどこに?」
神父の真っ直ぐな視線を避けるように顔を背けるヴィダール。神父は彼女に不幸があったのを察した。
「彼女は君に希望を託したのか。彼女は孤児だった。この教会で育った。彼女は私にこう言ったんだ。『世界に私のような子は何人いるの?』と。恐らく、彼女は自分のような経験を他の子にさせたくなかったんだろう。もし、彼女が君を庇って死んだのなら君は彼女の意思を無駄にしてはならない。こんな所で立ち止まるな。人はいずれ死んでしまう。時は有限だ少年。己の志を果たせ」
神父がヴィダールの背中を押して励ます。ヴィダールはこれ以上自分の所為で犠牲者を出さぬように、誰かを救うためにクエストであるゴブリン討伐に向かった。
(彼女は僕に魔法の才能があるって言ってた。試す価値はあるかな)
ヴィダールはセイバーを手に持ち、天に掲げた。
「汝、我の視界となりて我が身の危機を知らせたまえ!」
問題なく魔法が発動しヴィダールの脳内に周辺の地形が緩和されずに脳内に入ってくる。
「うっ!・・・ハァハァ!」
大量の処理しきれない情報がヴィダールの頭に入り、頭が割れそうなほどの痛みを痛感する。すぐさま、解除したので後遺症は無いが、すぐには動けそうになかった。
「この剣のせいで異様に魔法の効力が跳ね上がってる。今の僕じゃまだ扱えない」
剣の刀身を見つめながら、本当に自分に使えるのだろうか?と疑問に思うヴィダール。しかし、扱わなければ無い事を彼は知っていた。
そんな時だった、彼が休息を取っていると茂みからゴブリンが飛び出して来たのだった。疲れているヴィダールに目掛けて。