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少年の強さ

 ヴィダールは危機に面していた。大量のゴブリンに動かない足が疲労を加速度的に増やす。しかし、ヴィダールは冷静だった。ゴブリンに対する怒り、自分の愚かさ、助けなければならない人。これらの思いが綺麗さっぱりと無くなり、さらには相手の動きがゆっくりに見え始めた。

 モグラ叩きの要領で襲いかかってきたゴブリンを次々と叩き落とし、投擲物は体を反して避ける。

 攻防を続けていると茂みがざわついた。ヴィダールは新手だと思い脳裏に『死』の文字がよぎる。しかし、それは冒険者のパーティーだった。

「大丈夫か!?助けに来たぞ!」

「迷惑をかける」

前線後衛二名づつのバランスの取れたパーティーのリーダーがヴィダールに話しかける。それを喜びを含んだ声で返すヴィダール。

 彼らの参戦でゴブリンが次々と退散して行く。それを見るやヴィダールは尻餅をつく。

「あー、死ぬかと思った。それにしても、よくここで戦ってるってわかりましたね」

「多分だが、お前が助けた僧侶が教えてくれたんだ。けどまぁ、彼女から教えてもらった見た目と一致してるしそうなんだろう。彼女からの伝言も預かってあるぞ。『お礼が言いたいのでギルドで待ってます』だとよ。じゃあな!」

 ヴィダールが問いかけると、男はヴィダールが助けた僧侶が助けを求めたと教えられた。

 会話が終わる頃にサポートの一人から治癒魔法で傷を直してもらい、立ち上がる。互いに握手を交わしてともに女性の安否を確かめる。

「まだ息があるな。人数もそこまで多くない。運ぶぞお前ら」

 ヴィダールを含めた五人が女性らを運び出す。そして、そのまま街へ帰り衛兵に全てを任した。

「坊主、今回は俺たちが助けに迎えたから良かったが、無理はするなよ。強い正義感はいずれお前を殺すぞ。勇気と無謀は違うからな覚えておけ」

 男はそう言い残すとパーティーの3人を連れてまた旅へと出て行った。

 ヴィダールはギルドへと向かった、待っている僧侶に会うために。

 ヴィダールは周りを見渡す。すると、一人の女性が歩み寄ってきた。彼女の顔を確認すると確かに助けた女性であった。私服に着替えていたので気がつくのが遅れた。

「先ほどは助かりました。ありがとうございます」

「いや、君が助けを呼んでくれていなければ今頃僕は死んでいたよ。礼を言うのは僕の方だ。ありがとう」

 互いに礼を言い合い、少しの沈黙が訪れる。それを先に破ったのは彼女の方だった。

「よろしければこの後一緒に食事はどうですか?あまり良いところではないんですけど、お礼がしたいんです」

「その気持ちだけで大丈夫です。以後街から出るときは周囲に気をつけてください」

 ヴィダールは彼女からの申し出を断り、その場を後にしようとする。しかし、彼女がまた呼び止めた。

「あ、あの!でしたら、私をパーティーに加えてもらえませんか?補助系の魔法を使えるので足手まといにはなりませんから」

 パーティーに参加したいと申し出た彼女にヴィダールは考えていた。今の彼は自分が非力であることを自覚していた。

「わかった。これからよろしく頼みます。僕はヴィダールって言います」

「私はメリアルです。よろしくお願いします」

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