吹雪
王城の大広間の扉の前で立ち止まる。
「扉の先にお父様が待っておられます。無礼の無いように」
システィーが扉を軽く押すと、大広間で待っている兵士が扉を引き、全開にする。
カーペットの端に沿うように均一に兵士が並び、その空間に独特の緊張感が張り詰めているのが肌で直に感じられる。
システィーの歩いた後に続きシスティーのお父様つまり、王の元にゆっくりと近く。
システィーが立ち止まり、少し右にズレたところでヴィダールは左膝を床に突き、顔を伏せる。
「お父様。彼が以前お話しをいたしましたヴィダール様です」
「君がヴィダールか。面をあげよ」
ヴィダールがゆっくりと顔を上げて王の顔を直視する。
「娘を助けてくれてありがとう。礼として貴君に褒賞と男爵の爵位を授ける」
王の側近が爵位章と金銭袋をヴィダールに渡す。
「貴君の住う場所は後日知らせる。以上だ。エレシュよこの者を門前までの案内を頼む」
「わかりました」
システィーが一礼をし、振り返って歩き始める。ヴィダールも立ち上がり一礼を済ませるとシスティーの後ろについて、大広間を去った。
廊下の窓から外を眺めると強烈な吹雪が街を覆い尽くしていた。
「すごい吹雪ですね。さっきまでは夕暮れが見れるくらいには晴れていたのに」
「本当ですね。こんな急に天候が変わるのは初めてです。本来は前兆があるはずなんですけどね」
不穏な空気を感じたヴィダールは窓を開ける。
大量の雪と共に魔力を感じ取る。この吹雪が何者かによって引き起こされた物だと確信した。
「ヴィダールさん!?」
窓から飛び降りて魔法を使い、街の南門に向かう。
既に戦闘は始まっているのか、鉄と鉄のぶつかり合う音が聞こえ始める。
「どうなってる!」
「魔族の襲撃だ!こんな天候で視界が悪すぎるって時にタイミングよく仕掛けてきやがって!門を閉めるから下がれ!」
視界不良の最中で唐突に襲い掛かってくる攻撃を退けながら門をゆっくり閉め始めると、その門が途中で動作を中断した。
門に目をやると、一つ目の巨大な魔物の手が閉門の動作を妨げていることが判明した。
「おいおい、タイタンが出てくるなんてここは最前線じゃねぇぞ!おい君!」
ヴィダールは索敵魔法を発動させると、タイタンに向かって突撃した。
ヴィダールがタイタンに向かう途中に左右からゴブリンの挟撃を受けるが、軽くあしらいタイタンの正面に立つ。
タイタンがヴィダールに気付き、右拳を叩きつける。それを軽く避けると地面に突き刺さった拳から腕に飛び乗り、首を目指す。
ヴィダールを掴もうとするが、右腕を踏み台にされ頭部への接近を許し、目に剣を突き刺される。その後、背面から袈裟斬りと火炎魔法をもらい、地面に突っ伏した。
「おいおい、一人でタイタンをやりやがったよあいつ」
閉門が再開された途端に今度は門ごと吹き飛ばされた。