人魔共存
無重力で白い空間の中にヴィダールは浮いていた。
まただった。荷馬車でここに向かっている時も同じ夢をみた。
突如景色は幾千もの戦場となった平原へと変わる。ヴィダールの目の前には二人の戦士が立っている。
「また戦闘訓練か」
二人の戦士が同時に駆け出す。一人が右側から袈裟斬りを、もう一人が左から逆袈裟斬りを放つ。
息の合った同時攻撃を防ぐ術はヴィダールには無く、バックステップで距離を取ろうとすると、一人がさらに踏み込み剣を突き刺そうとする。
刺突を真上に弾き、そのままの勢いで唐竹わりをしてくる相手と鍔迫り合いを起こす。
一人を踏み台にし、もう一人が真上から強襲してくる。
バックステップで距離を取り斬撃を回避する。
ヴィダールが攻勢に転じる。
強襲してきた戦士に狙いを定め、突っ走る。まだ、体勢の整っていない戦士は右斜めから剣を振り下ろし追い払おうとする。
その斬撃を故意に足を滑らせて、風魔法で強制的に姿勢制御をし懐に入る。ガラ空きになっている右脇腹に素早く二連撃を与え離脱する。
連撃を受けた戦士は膝から崩れ落ち消失する。
もう一人の戦士は相方が殺されたのを見ると勝ち目が無くなったと悟り、武装を解除した。
大量の発汗を伴い目覚める。先ほどの戦闘が本当にあったかのように息遣いが荒かった。
サッとシャワーを浴びる。窓から挿す光は夕食時を示す紅だった。
食事を宿で済ませて、ギルドにクエストを受注するために足を運ぶ。
入り口に異常に多くの人が屯するギルドに到着する。人を押し除けギルド内に入るとそこには純白なドレスに身を包んだシスティーが椅子に座り、茶を嗜んでいた。
「ヴィダールさん。待っていました。お父様がヴィダールさんにお礼がしたいと王城に招待しています。裏に馬車を用意させてあります。ついてきてください」
ヴィダールの返答を聞かず、腕を組み強引にギルドの役員に案内され裏口に待機させてあった馬車に乗り込み、馬車を王城に向け走らせる。
「ヴィダールさんは・・・人間と魔族が共存できると思いますか?」
虚を突かれたヴィダールはこの唐突な質問に少し戸惑うが、その答えは持ち合わせていた。
「できる。ドワーフやエルフのように共に住うことができる。けど、前述した二つの種族には人間に優ってる部分があるが、劣ってる部分もあるからすんなり共存できているが、魔族は言ってしまえば人の上位互換と言っても差し支えがない。だから、魔族と共存を目指すのは両者が犠牲を出す必要がある」
「それが今回の戦争って言うんですか?」
「そうかもしれないし、違うかもしれない。少なからず、君が人魔共存を願うんだ、魔族側にも君のようなものがいてもおかしくはないだろう。だが、一言言えるのは戦争は憎しみしか生まないことだ。互いがどこかで共闘しなければならない局面を作らなければならない」
「そう・・・ですか」
重苦しい空気が馬車の中で漂い始めた頃に馬車は王城にたどり着いた