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雪道

 荷馬車の外の景色は真っ白だった。雪によって。

 ヴィダールは護衛の一人として、先頭車両の荷台で揺さぶられながら外の景色を眺めていた。

 防衛対象を中心に前後に二台づつに護衛を付けて王都に向けて何日もかけて移動していた。そんな任務もあと少しで何事もなく終わろうとしていた。

「何事もなく終わりそうだな。これは楽な儲け話だったな!はっはっは!」

 荷台の出入り口付近に大剣を携えた大男が防衛対象の損失と自身の楽な儲けに大笑いをあげていた。その時、荷馬車の正面からバッサーと大きな音を立てた。

「何が起こった!」

 突然の出来事に怒鳴るように大男は御者に尋ねる。

「せ、積雪によって木が倒れただけです。すぐに、退けてください」

 荷馬車から全員降りて、一人が後続に木が倒れたことを伝達しに行く。残りが木を道の端っこに退かそうとする。

 ヴィダールはふと倒れた木の根元を確認した。木の根本は切り倒されたような跡が残っていた。しかも、まだ跡が新しい。

 背中に悪寒が走る。そして、人じゃない気配も感じ取り切り払いながら振り返る。

「気づかれちゃったかー。これだから感の良いガキは嫌いなんだよね!」

 ヴィダールの剣は相手と鍔迫り合いになり、あと少しでも遅れていたら死んでいたと思わされた。

「君がハシュバルが言ってた冒険者ねぇ。まっ!ちと、木を倒すタイピングはミスったが今回の目的はあの馬車に乗ってる奴だからお前のような厄介なやつにかまってられるかよ」

 ヴィダールの剣を弾き、急いで中央の馬車に向かって走り出す。

「行かせるかよ!」

 大男が大剣を構えて魔族の行手を遮るように立っている。大剣を真上に持ち上げ、唐竹割をしようとしたが、一瞬で距離を詰められ逆袈裟切りで胴体から出血をした。

「邪魔だよ」

 大男の脇を通り抜け、男はそのまま地面に突っ伏してしまった。

「待て!」

 後ろをチラッと見ると、ヴィダールが魔法を使い飛んで迫ってきていた。振り返り剣を構えて、衝撃に備える。

「鬱陶しんだよ!」

 勢いの乗った飛び斬りを真上に弾き、ヴィダールを空中に投げ出す。

「これで死ね!」

 多数の魔弾をヴィダールに向けて放つ。早く目的を達成して厄介者とおさらばしようと馬車に向かって急いで移動を再開する。

「この位なら避けて見せる!」

 魔弾の弾幕を掻い潜り、魔法を駆使して魔族の真上に迫ろうとする。

「雑魚が邪魔をするな!」

 行手を遮ろうと冒険者が次々と荷馬車を降りる。そいつらを避けながら目的の馬車に近き、馬を殺し移動をできなくする。

「お前たちは荷馬車に戻れ!」

 馬車に乗り込もうとしたその時、ヴィダールが真上から降ってきていることに気付き、大袈裟に避ける。

「お前はマジの化け物だなぁおい」

「何が目的なんだお前たちは?」

 魔族が切り掛かる。剣でそれを押さえる。

「言う必要がどこにある!?お前はただそこを退けばいい!」

 ヴィダールは魔族を蹴飛ばし、すぐさま要人の入っている馬車の扉を開ける。

「なっなんですか!?外の安全は確保されたのでしょうか?」

「そんなことはいい!出るぞ」

 華美な服装を着込んだ少女の手を引いて馬車から下ろした直後にまた、魔族が切りかかってくる。

 少女を守りながら手数の多い斬撃を捌く。唐竹を防いだ直後に、真上に蹴り上げる。

「さっきのお返しだよ!」

 雷球が次々と網目状に連なり、魔族に向かって飛来する。その間に馬車を魔法で壊し、荷馬車に出発の合図を送る。

 荷馬車が次々と走り出し、最後尾の荷馬車が速度を落として近づいて来た。

 要人を荷馬車に乗せ、自身も乗り込もうとした瞬間に雷球を掻い潜った魔族が上空から迫りくる。

「チェックメイトだ!」

「甘い!」

 サマーソルトが魔族の顔面に直撃する。落下の勢いも相待って確実に仕留めたと言ってもいい感触を得ていた。

「早くしろ!行っちまうぞ!」

 馬車の御者に言われてすぐさま乗り込む。

 戦闘が終わり、ふと先ほどの魔族のことが気になる。だが、また会えると言う感覚があった。

 木に横たわり、ヴィダールとの戦闘でおった傷を眺める。ハシュバルの言う通りだった。やつは戦闘の中で強くなっている。

「あーくそ。完全に負けたなー。こりゃー鍛錬が足りなかったかなー?そう思うだろハシュバル?」

「そうだな。やつは強い。だが先の戦いで分かったが、身体能力はかなり上がっている。だが、魔力はそれほどだ。低級魔法をあれだけ使っただけで、既に魔力が乱れている。無詠唱は想定外だったがな。しかし、勝機はある。行くぞ」

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