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禁忌の魔剣と平凡剣士  作者: 遊霧
次なる一歩
18/20

対人戦

アインスの計らいで、カイは対人戦の特訓相手を得た。

しかし、期待していた状況とは大きく違う物になってしまったのだった。

この日は、特訓を行いながら、例の女騎士を待っていた。

相当な腕前があるものの、座学が全く駄目らしい。


目標となる『銅』への昇級試験は対人戦だが、現在『鉄』においては任務の難易度が大きく二段階に別れている。

飛竜などが上げられる中型の魔物が最初の段階で、次の段階では部隊を編成し、大型竜や大型獣の討伐に赴く事になる。


実績をある程度積む事によって、『銅』への昇級試験を受ける資格が与えられるようだ。


部隊の中で特に活躍の大きい者が選ばれるとの事だが、たとえ『銅』であっても、別に大型の魔物を単騎で退けるという事にはならないような気がする。


昼にもなろうかという頃、アインスさんと共に、見慣れない人物が訓練所にやって来た。

その人物こそ、件の女騎士であった。


「カイくん、お待たせした。彼女が君の訓練を引き受ける、『エレノア=シア=アルベルタ』君だ」

「はっ!誠心誠意、この任務を務めさせて頂きます!」


「よ、よろしく」

(圧がすげェ)


紹介を終えると、アインスさんは足早に戻って行った。

彼女曰く、忙しいのだそうだ。


「えーっと、何から始めるんだ?エレノアさん」

「呼び捨ててくれて構わないよ、カイ。私もそうする。堅苦しいのは式典と、上司の前だけで充分だ」


サバサバしていると言うか、快活と言うか...

敢えて言うなら、女性らしくは無い雰囲気だった。


「さて、これからしばらくは、お互い世話になる身だ。まずはどれくらい戦えるのか見せてもらおう」

と、エレノアはいきなり本身の剣を抜いた。


「ちょっと待ってくれ。なんで真剣なんだ!せめて木剣にしてくれ!」

「危機感を持った方が上達は早い。さあ、カイも抜くんだ」

(話を聞かない系統の人間だな、こりゃ)


渋々、ゼルシオの剣を抜く。

ゼルシオは重いので、こういうのには不向きだ。

(なんだ、俺は使わねェのか)


魔法も使って良いとの事なので、遠慮無く行かせて貰う事にした。


「ああもう...行くぞっ!」

「さあ来いっ!」


まずは突き、これが剣士同士の戦いの定石だ、とゼルシオは言っていた。

軽く流され、剣の根元を抑えられた事で体制を崩した俺の腹に、膝蹴りが飛んで来た。


「ぐえっ」

(あーらら...)


受身はゼルシオが前持って特訓に組み込んでいたので、素早く起き上がる事には成功した。

しかしその眼前には、エレノアの剣が突き付けられていたのだった。


「体捌きは及第点だが、剣術が未熟過ぎる...相手にならないな」

「ぐぬ...もう一回頼む!」



それから二度鐘が鳴った頃、俺は地面に突っ伏していた。

都合何度目だろうか、数えるのは途中で諦めていた。


「剣の扱いは並には出来ているのに...他がダメ過ぎる」

「まるで勝てる気がしない...そうだ!俺の悪かった所を教えてくれないか?」


「えっと...そうだな...予備動作が大き過ぎるのかもしれないな」

「かもしれない...?もう少し詳しく教えてくれないか?」


「それは無理な相談だな」


どうやら人に教えるのが苦手らしく、やっぱり体に叩き込む方が早いと言って、エレノアはまた剣を抜いた。


恐らく、ここが戦場なら俺はとっくに死んでいる。

首に寸止め、腹に寸止め、何度も何度も繰り返し、終ぞ、今日一度も勝つ事は無かった。


寧ろ勝ち筋が見えない。

今の俺の腕では、エレノアに隙を見つける事すら出来なさそうだ。


「まあ今日はこんなものか。また、今度にしようか?」

「次はいつ来れるんだ...?」


「私は本業があるからな...三日後でどうだろう?」

「三日後だな。じゃあ、次も厳しく頼む」


「勿論だ。第一師団長たっての願いだからな」



エレノアと別れたあと、部屋に戻ると、置き手紙があった。

アインスさんからの物で、部屋を借りるのはいいのだが、食事に関しては自分で調達する様に、と言う内容だった。


「まあ、仕方ないよな」

(穀潰しになる訳にも行かないだろうよ)


という訳で街へ繰り出し、適当に食べて、帰ってすぐ眠りについた。



翌日、『鉄』での初任務は、中型の魔物を討伐する事になった。

特に何の問題も無く、思っていたよりも楽しむ余裕があった。


ライアックは別の部隊で任務に出ていたので、誰も着いてこないために、一人で任務を遂行していた。


「あと何体にしようかな...そうだ、ゼルシオ。この辺にはまだいそうか?」

(俺を探索用の魔道具と勘違いしてないか?まあいいが...)


魔物と出会う数が明らかに減っているので、自分の力で探すのは困難を極めていた。

ゼルシオに触れようとしたその時、一つの人影が目の前を横切った。


「何だ!?」

(人間だなァ)


「人間?討伐任務のある地域は、基本的に人が寄り付かない場所だぞ?」

(まあ、待ってみれば分かるさ)


「それはどう言う...」

(ほらァ、来たぞ)


遠くから凄まじい轟音が鳴り響く。

先ほど人影が通り過ぎた場所に、大型の魔物が怒り狂った様子で、大地を捲り起こしながら走り去って行った。


「あれ...俺には手が付けられないよな」

(無理だな。百回やって全部死ぬ)


「でも、お前なら何とか出来るんだろ?」

(そう言うと思ったぜ。全くお前って奴は、お人好しだなァ)


「そりゃどうも。さあ、行くぞ!」

ゼルシオを鞘から抜き、捲れた大地に沿って走り出した。

大型魔物のサイズは、現実で言うと大体15mぐらいの高さをイメージしてもらうと分かりやすいと思います。

めっちゃデカいです。

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