名誉の帰還
『鉄』への昇級を果たしたカイは、人生で初めて、晴れやかな気持ちで組合へと戻ってきた。
ライアックと共に、冒険者組合へと戻ってきた。
袋には緑飛竜の頭部が七つ。
それだけあると、かなり重かった。
ライアックは、興奮した様子で大扉を開ける。
組合の中に居た冒険者達は、口を揃えて野次を飛ばそうとしたらしい。
しかしそれは直ぐに遮られた。
ライアックの報告によって、それぞれ驚き、疑いの声を上げていた。
「嘘だろ?七体も一人で、しかも一度に討伐するなんて有り得ないぞ...」
「本当なんだ!魔法も随分熟達した物だった!あいつの実力は本物だったんだよ!」
随分と誇張した話をされて入る機会を失っていたが、ライアックに手を引かれ、無理やり入れられてしまった。
手に持った袋を受付に渡すと、受付もそれはそれは、驚いていた。
しっかり七体分あるのを確認すると、昇級が受理された。
「やったな!お前も晴れて『鉄』だぞ!」
「そんなに喜ばれると、俺が喜べないよ...」
ライアックは実際に戦いを見ていた...と言うよりは、現場を目撃していたので、素直に褒めてくれた。
周りは疑いの目や声で溢れていたが、気にする事は無いだろう。
組合長も直ぐに出てきて、ひとしきり賞賛された。
そしてライアックは、組合長へ進言しようと身を乗り出した。
が、それは止めた。
流石に、特例という訳にはいかない。
まだ特訓も半ばだったし、何より『鉄』の任務にはマトモに行った事が無かったからだ。
この後ライアックには、散々問い詰められてしまった。
ひとまず、聖騎士団本部へと戻る事にした。
アインスさんへの報告と、今後についての相談をするためだった。
受付に取次を頼むと、訝しんだ顔をしたが、素早く対応してくれた。
アインスさんは忙しいようなので、また待合室へ案内された。
「やあ、待たせてしまったね」
「俺の方こそ、突然来てしまってすみません」
(予定より大分早く片付いたからなァ)
「どうやら、無事に『鉄』に昇級したようだね。おめでとう」
「ありがとうございます。でもまだ、これからです」
「これからはどうしようか?まだ特訓を続けたいなら、引き続き訓練所を開けておくが...」
「実は、その件について話があるんですけど」
(あァ、道中ずっと考えてたな)
「『銅』への昇級試験は、対人の模擬戦なんです。でも、その特訓に付き合ってくれるほど、暇な人も仲のいい人も居なくて」
〈悲しい話だな。涙が出そうだぜ〉
コイツめ、また余計な事を。
「カイくん。対人戦の特訓なら、打って付けの人材がいるんだ。」
「本当ですか?」
「ああ。現状、扱いに困っている団員が居てね...座学がからきしなので、ここ何年か、階級を上げられないで居るのだが...」
アインスさんは、少し思い詰めた顔をした。
「私が目を付けていた、優秀な騎士ではあるのだが、階級が足りないために、第一師団に引き込めないのだよ」
「それと、俺の特訓に何か関係があるんですか?」
「第一師団の入団資格は、大型の魔物を単騎で撤退させられる実力がある、と認められる事にある。冒険者で言えば、『銅』以上の実力があればいい」
「俺を鍛えて、無事『銅』に昇級出来れば...その条件を満たせるという事ですか?」
「そういう事だ。なので、明日からの特訓には、非番の場合には彼女には来てもらうようにしよう」
「彼女?」
「ああ。腕っ節の強い女騎士で、並の騎士なら敵わないから、戦闘については安心してくれたまえ」
「ありがとうございます。...じゃあ、これから日課をこなしてきますね」
「もう特訓を始めるのかい?今日一日ぐらい、休んでもいいだろう...」
〈アインス、コイツはまだまだへっぽこなんでな。休ませる暇があるなら、特訓させる方がいい〉
「なるほど、そういう訳ですか。...では、カイくん。彼女には伝えておくから、楽しみにしておいてくれたまえ」
「分かりました。何から何まで、ありがとうございます」
女騎士...という言葉を耳にして、うわの空になりながら、今日の特訓をこなしていった。
ここからは二章になります。
戦闘場面も増えて行きますので、楽しみにお待ちください!




