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禁忌の魔剣と平凡剣士  作者: 遊霧
転がり出す運命
15/20

鍛錬、再び

銅級へと昇級するため、まずは鉄級になる必要があった。

鍛錬に次ぐ鍛錬。

その先に待つのは確かな疲労と確かな成果だった。

魔法を使う為の体力鍛錬を初めて、一ヶ月は経過していた。

最初は二十周だった外周走も、気付けば六十周にまで増やされ、剣を振る回数も同様に三倍になった。


それこそ、初めはとてつもない筋肉痛に襲われていたが、毎日鍛錬を続けていると、それも少なくなっていた。

未だに魔法を教えてはくれない様だが、ゼルシオがまだ不十分だと判断しているのなら、仕方無いだろうと割り切っていた。


当面の目標は「銅級にまで昇級する」という事だが、その際にゼルシオの力を借りては実力が伴わない。

その為に、自分が強くなりたいと思って始めた鍛錬だが、一ヶ月が経過して体力が明らかに向上しているのにも関わらず、まるで次の過程へ進まないので、内心焦りを覚えていた。



今日の八度目の鐘が鳴った。

最後は決まって、実戦的な型の練習だった。


気合いを入れて、最後のひと振りを振り抜く。

「フッ!…はぁ」


今日の鍛錬は終わりだろう。

ゼルシオは何も言わないが、いつもの事だ。


鍛錬の間はずっと無口で、せいぜい喝を入れられる時ぐらいしか喋らない。

見ているのか、それとも聞いているのかは分からないが、監視されている感覚だけはあった。


「今日は、これで終わりだろ?」

息を切らしながら、ゼルシオに問いかける。


(そうだな…今日は、と言わず、しばらくこれだけの鍛錬は必要ない。外周と少しの素振りでいい)

「…それって」


(明日からは魔法を教えてやる。理解度が低けりゃ、二度とやってやらんがな)

遂に…遂に魔法を教わる事が出来る。


その喜びは、到底抑え切れる物では無かった。

「やっ……たーっ!」

(おいおい、喜ぶのはまだ早いぞ。これからがもっとキツいんだからな)


「そうなのか?」

(魔法は体が慣れるまでは、かなり体力を消耗するからな。つまり、そうなるまで魔法の修練をさせるって事だな)


「それは…時間にして、どれぐらいかかるんだ?」

(お前の覚えの良さ悪さにも寄るが…魔族では一ヶ月、人間なら二ヶ月と言った所か?)


「その時間を縮めるにはどうすればいい?」

(慌てるな。まあ、毎日詰め込むやり方は普通はやらんからな…半分以下になると思っていいだろう)


「そうか、それなら安心だな」

(魔法に関しては、お前にも無理はさせられん。ぶっ倒れそうになったら、そこで終わりだ)


「そんなに危険なのか?精神を使う魔法ってのは…」

(危険なんてもんじゃないさ。制御は効かないし、使い手の精神が無事である保証も出来ない。いくら俺が六重魔法を撃てると言っても、精神が作用するだけで、単元魔法ですら俺の魔法を打ち消しかねない)


「それは…考えただけでも恐ろしいな…」

(そういう訳だ。明日から少しずつやってくから、今日はとりあえず休め)


「分かった。じゃあ、戻るか」

(おうよ)



宿舎に戻って来ると、いつも大量の食事が用意されている。

アインスさんの計らいらしいのだが、五人前にも匹敵する量を食べ切って吐かない様になるには、二週間程かかった。


風呂に入り、食事が終わって、ふと気になった事を聞いてみた。

「そう言えばこの間、人に教えるの苦手って言ってたよな。ちゃんと分かるように教えてくれるんだよな?」


(まあ、魔法は感覚的な所もあるから…なんとかなるだろ)

「本当に大丈夫なのか?」


(もし困ったら、アインスを呼ぶさ)

「聖騎士団の第一師団長だぞ?そう簡単に呼ぶなよ…」


(お前にしては、マトモな事言うじゃねェか)

「お前よりかはずっとマトモだっての」


明日から魔法の鍛錬が始まる。

その鍛錬に不安を残したまま、一日が終わってしまった…



そして翌日、夜明けの頃には訓練所へ赴き、外周と素振りを済ませた。

魔法を教わる事への高揚感から、外周はいつもより早く終わった。


(さて、これから魔法を教えていく訳だが…)

「何度も言うけど、ちゃんと分かるように教えてくれよな」


(頭捻って考えて、出来るだけ分かりやすく教えてやろう)

「捻る頭なんてどこにも無いだろ。剣なんだから」


(言うようになったじゃねェか。まあ、ムカついたからと言って無理はさせん。そんな事したら、アインスに顔が上がらねェからな)

「まあ、よろしく頼むよ」


まずは、基本的な事の復習からだった。

魔元素と人間、魔族などの生物との関係、性質等、色々と言われたが、よく分からなかった。


(まあとりあえず、魔法を使うには古代言語を喋れないとな)

「古代言語?」


(魔族が頑張って解読した、古代文明に生きた者達が使用していた言語だ。簡単な単語の羅列みたいな言語体型だから、お前でも覚えられるだろうな)

「軽くバカにされた様な気がするが、まあいいや…で、どんな言語なんだ?」


(とりあえず、飛竜族を地面に叩き落とせそうな魔法がいいよな?それの発音だけ覚えておいてくれ)

「ずいぶんと雑だな…」


(難しく教えるよりはマシだろ。分かりやすくていい)

「そうだけどさぁ…」


(よし、とりあえず聞いて真似しろ。いいな?)

「…分かったよ」


(よォく聞けよ。…『風』、『岩』、『吹き飛べ』)

「『し』…『め』…『さけ』…?なんだって?」


(…初めてならそんなもんだろ。慣れないと発音すら出来ないからな。まあ、どれぐらい発音能力があるか知るために、一気に聞かせてやったんだが)

「どうせなら、最初から一個ずつ教えてくれよ」


(それもそうだな。じゃあまず、『風』からだな)

「それはなんて言ってるんだ?」


(風とか空気とか、そんな物を意味する単語だ。これひとつで、空気の操作をする様な魔法はあらかた組める)

「ふーん、便利なんだな」


(コイツは、舌先を口腔の上の方に当てるような感じで発音するんだ。歯じゃなくて、舌で空気を鳴らせ)

「なかなか難しい事言うな…」


(これぐらい出来なきゃ、一人で飛竜は仕留められんぞ)

「よし。ス、スー…」


(そんな力んだ顔されると、笑っちまうからやめろよ)

「なんだと?俺は真剣なんだぞ!」


(そんなに怒るなよ。力むと発音しづらいから、もっと体から力を抜くんだ)

「わ、分かった…」



そうしてゆっくりと、発音の練習を行った。

それだけで半日を費やしたが、それぞれの発音は出来る様になっていた。


(よし、一通りちゃんと声に出せる様にはなったな。風で石塊を飛ばす事を、頭の中でしっかり思い浮かべるんだ。そうすれば、魔法が発動する)

「言葉を理解して、起こる事を想像する頭が必要なのか…思ったより疲れそうだ」


(まずは一回やってみろ。そしたら、何となくコツが分かるはずだ)

「よし、やるか!」


自分で魔法を使うのは初めてだったが、この時は何故か、初めてゼルシオの力を借りた時の感覚を思い出していた。

「『風』!『岩』!『吹き飛べ』!」


そう叫ぶと、体力がズルッと抜け落ちる様な感覚と共に、確かに魔法が発動した。

向かって立っていた木製の壁に、拳大の石がいくつか飛んで行き、壁がひしゃげて、一部は折れたり割れたりしていた。


達成感のある光景だった。

しかし、突然膝が崩れた。


「た、立っていられない…なんでだ…?」

(ちょっと威力が強すぎるな。あれだと、飛竜ぐらいなら普通に殺せちまう。いい事ではあるんだが、お前の体に合った威力じゃないってこった)


「こ、こんなに疲れるもんなのか…」

(剣士上がりの魔法はだいたい大雑把になって、体力を使いすぎるもんだ。その様子だと、今日はもう止めた方がいいな…立てるか?)


「剣を杖の代わりに使えば、何とか…」

(よし、戻ってさっさと寝ろ。そんでまた明日からだな)


その日は倒れるように眠り、翌朝まで起きる事は無かった。

そして魔法の鍛錬は、それから一ヶ月は続いただろう。


体力増強、魔法に使う体力の配分法、戦闘の中で魔法を撃つ練習等…昇級に向けて色々な事をした。

例の事件から二ヶ月以上経って、俺は聖騎士団本部を発った。


その足の向かう先は勿論、冒険者組合だ。

鉄級への昇級任務を受ける為に、忌まわしい大扉を開いた。

外周はだいたい200mぐらいのイメージですので、12kmは軽く走れるぐらいの体力があります。

慣れてないのもありますが、それが一回の魔法使用で溶けるので、威力の高い魔法を使える人はそれだけの体力がある、という事なのです。

六重魔法をカイが撃とうとすると、今の体力の10倍は必要です。

ゼルシオは特殊なのでポンと撃てますが、だからといって他の魔族に出来る訳でもないのです。

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