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禁忌の魔剣と平凡剣士  作者: 遊霧
転がり出す運命
13/20

魔法という物

強くなる為に、剣の扱いだけでは足りないと思ったカイは、魔法の特訓もしたいと伝える。

しかし彼は、魔法がどんな物か全く知らなかった。

《魔法を教えろだとォ?》

「ああ、なるべく早く強くなるには、こっちの方が都合がいいんじゃないかと思ってさ」

至極真っ当な意見だと思うのだが、ゼルシオはあまり乗り気では無さそうだ。


《うーむ、まあ、魔法についてよく知らないなら、そう言っても仕方ないのかもしれんなァ…》

「どういう事なんだ?」


《魔法ってのはな、世界中何処にでも自然にある「魔元素」と、自分の精神力やら体力やらを融合して初めて使える、古代文明の叡智のひとつだ。お前は体力が無いから、魔法を覚えるにはまだ早いんだよ》

「…もうちょっと簡単に言ってくれ」


「私が説明しよう。いいですね、ウルティモア卿?」

《俺よりお前の方が、人間に教えるには向いてそうだ》


「ありがとうございます。では、カイくん。魔法という物について、分かりやすく教えよう」

「お願いします」


魔法は、先程説明された通り「魔元素」と「詠唱者の体力、精神力」を素にして発動する、この世界の理のひとつだ。

古代文明の叡智といったように、魔元素が何なのかという事は判明していないし、それを人工的に生み出す事は出来ていない。


なぜなら、魔元素と言う存在の根幹について、古代文明に生きた者達が書き残さなかったからだ。

それが所謂「神」というべき存在に触れてしまう為なのか、もしくは、力を誤って使うのを恐れたのか…

どちらにせよ、彼らの意図は分からない。


ただ、魔元素という物があり、体力や精神力を消耗させる事で「魔法」を放てる。

それだけがハッキリしている。


そこで重要になるのは、魔法を唱える際には「体力」が優先的に消費される様になっている事だ。

ましてや君や私は剣士であるから、剣を振るいながら魔法を唱えるという事は、どちらにも使う体力が不足しやすいという事なんだ。


そして精神力を使うという話だが、これは人類が命懸けで検証を行った事で判明した。

魔族は体力が人間の比ではないから、この領域に辿り着く事は無かったんだ。

ここでいう精神力は、記憶や感情の事だ。体力の限界を超えて魔法を使用すると、精神力が消費されていく。


精神力を使う魔法は極めて強力で、何者に対しても脅威になりうる様な力を持つ。

しかしそれでは、人間として欠けていく物が大きすぎるだろう?

それを危惧して、ウルティモア卿は現状での魔法の使用について、苦言を呈しているのさ。


「話を纏めると、魔力とは『戦闘行動において、魔法に回しても問題のない体力』の事だ。体力がないのに魔法を使っては、精神力を削りかねないんだ」

「なるほど…」


《今までよりもさらに厳しい特訓に耐えるってんなら、話は別だがな》

「それはどれくらいの量なんだ…?」


《今までの3倍は軽くこなしてくれないと、魔法は教えらんねェわな》

「嘘…じゃ、ないんだろうけどさ…」


《アインスの為でもあるんだぞ?》

「それを言われると、何とも言えない…」


「無理は禁物だよ、カイくん。だが、出来るだけ早く昇級する方がいいのは確かだ。君にとっても、昇級出来るのは悪い話では無いだろう」

「そうですね…銅級まで上がるのなら、結局はやらなきゃいけない事だ…」


《やるか、やらねェか、どっちだ?》

「…やる。絶対やり遂げる!」


《よし、よく言った。そこでアインス、ひとつ頼まれてくれるか?》

「私に出来る事なら、何でも致します」


《ありがとよ。なら…こいつが特訓する間に寝泊まりする場所と、特訓する場所を、格安で用意してくれ》

「それでしたら、空いている特訓所と、団員専用の個室を用意させます」


《いいねェ、特別待遇だァ》

「聖騎士団の今後に係わる事です。これぐらいはさせて頂かないと、こちらの顔も上がりません」


《…という訳だ、カイ。ぶっ倒れない程度にしてやるが、ぶっ倒れたら無理矢理起こすからな。やるって決めたんなら、キッチリ着いてこいよ》

「分かった…やってやるさ!」


こうして、あの地獄の日々が比べ物にならないような、恐ろしい特訓の日々が幕を開けたのだった。



その頃、冒険者組合中央支部では─


「あのへっぽこ、最近全く顔を見せないな」

「なんだよ、寂しいのか?」


「ンなわけあるかよ。ただ、アイツが居ねぇと、ここの空気がピリピリしてて嫌なんだ」

「確かになぁ。アイツが笑い者にされてたから、皆表面上でも、ある程度足並み揃ってたからな」


「今はどうだ?ここ数日間アイツが居なかっただけで、級位の高い奴らが威張り散らして来やがる。特に銀の奴らなんて、ヒデェもんだぜ」

「金はもちろん白金なんて、そんな些細な事には動かないからな。まさに、やりたい放題だよ」


「アイツ以外の青銅なんて、ほとんど東部に行っちまったからな。代わりにいびりがいのある奴も居やしない」

「日銭稼ぎもしないって事は、この前の探索任務でなんか見つけたんじゃねぇか?」


「どうだろうな…何も無かったぜ?」

「そうだよな、それはないか…俺達も、いつまでも鉄に居ないで、級位上げないとな」


二人の冒険者が、現状に不満を募らせていた。

アインスは魔法も使えます。

そうでなければ、第一師団長に選ばれたりしてません。


そしてゼルシオも、魔法を扱う剣士でした。

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