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俺の秘密、魔王の秘密

開拓班が作業をしている集落のはずれに到着し、先に作業をしていたカイムの集団と合流した

「おう、よく来てくれた」

魔族軍の脅威にさらされているとはいえ、集落の作物などの収穫量を増やす為には開拓は急務な作業であるらしい。集落に残って何がしかの作業をしつつ、襲撃に備える人員を割くと、開拓班として来ている人員は10名足らずだ。

「すまないな、魔族軍の襲撃があれば集落の方から警報が鳴らされる。音はここまで聞こえるから、安心して作業が出来ると言う訳だ」

作業音で警報(木の板を叩いて出す音)が聞こえないんじゃないか?とは思ったが、作業者と警報音に聞き耳を立てている人員は離れているらしいので問題ないとの事

「タクマには主に人手では除去が困難な木の切り株や、大きな岩とかの除去を頼みたい」

作業の流れや進ちょく状況を確認した後、カイムに説明された拓真たくまは頷くと

「了解した。スモルガーでがんがんやっていくぜ」

とニヤリと笑う

「助かる。そのゴーレムの力を当てにしているぞ。ここら一帯が農地になれば集落の生産量が大きくあがるんだ」

カイムがそういうと開拓途上の広場を眺めた

スモルガーをロボットフォームに変形させて作業を指示している間、一緒についてきたキラッセは他の作業員の中に混じって何やら作業をしていたが、やがて飽きたのか木陰で休んでいた

「いーよなー、タクマは楽できてさ」

おもむろに大声で話しかけてくるキラッセに拓真はちらりと目線を送ると、近づいていった

「しょうがなかろう。作業にもいろいろあるってこった」

そういいつつキラッセの傍に腰を下ろす

「ちぇ・・・俺にもあんなゴーレムを使役する力がありゃぁなぁ・・・」

そう言いつつ、もくもくと荒れ地で動くスモルガーを眺めていると、突然がばっと腕に掴みかかってきた

「なぁ、初めて会った時も言ったけどさ、俺と一緒にここを出てどっかデカいとこで仕事しないか」

そういうと、以前よりもきらきらと輝く目で此方の顔を覗き込んでくる

「近い近い・・・前はよく聞けなかったが、なんでそんなに此処を出たいんだ?」

「んー、別に・・・俺はこんな小さくて狭いとこで一生を終わりたくないだけさ」

そういうと腕から離れてごろん、と横になる。その様子を見ながら、何か理由がありそうだなと思った拓真はそれ以上は問いたださなかった

「そういえばさ、お前、あの時なんで懲罰部屋の格子を壊せると思ったんだ?あんなに頑丈なの、無理だっただろう?」

話題を変えようとしたのか、キラッセがそう問いかけてくる

「お前とか呼ぶな。年上だぞ俺は」

「んじゃあ、おっさん」

「もっと悪いわ!」

「じゃあ、タクマで」

「・・・呼び捨てかよ」

言葉遣いが悪いのは目をつぶることにして、拓真は自分の手のひらを見つめる

「・・・ここにきて、体が妙に軽くてな」

拓真はこの世界に転送されるときに、世界管理者機構の”メノン”から言われた言葉を思い出していた


   現地人よりは、少しは強いはずですよ


あの言葉の意味は、良く分からなかったがどうやら基礎体力が違うらしいと言う事が何となくだが分かってきた

「だから、あの時はあれくらいの格子なら粉砕できると思ったんだよ」

そうつぶやくと握りこぶしを作り、立ち上がった

「ふーーん、変なの。気分であんなごつい格子、壊せるわけないじゃん」

そんなキラッセの言葉を聞きつつ拓真は思う。多分現地人よりは強い、つまり膂力があがってるのは確実だ。だがその上がり幅が、そんなに高くないのだな、と結論付けた

「ケッチぃよな。どうせならどこかの拳法家よろしく、あれくらいの格子、ぶっ壊せたっていいのによ」

少しばかり品切れとかで能力付与をケチった”メノン”に悪態をつくと拓真はキラッセに顔を向け言葉をかける

「俺は暫くはここに厄介になるって決めたんだ。だから他の場所には当分いかないぜ」

そういうと、キラッセは寝ころんだ状態から体を起こすと

「じゃぁさ、ここを出るときは俺も一緒な!決まりだぜ」

と言ってくる。その言葉に含み笑いで返すと

「さーってね?そいつはどうだか・・・」

といって目線を作業中のスモルガーに向ける

「あーっ、誤魔化すなよな、絶対だかんな!?きいてんのかよ、おい!」

といって起き上がり、体をゆすってくる

こいつ、この言葉遣いはどうにかならんのか、と思いつつ軽く笑っていなす拓真であった




「なんだと!あの集落の占拠に失敗しただと!」

ここは魔族軍の本拠地である魔王城。その最奥にある魔王の玉座の前で頭を垂れるのは、先の戦闘で撤退をした魔族、”ラーセルス”だ

「は、申し訳ありません。思わぬ邪魔が入りまして」

自分を叱責する魔族軍大将、”ローバクウ”に向かって発言するラーセルス

「邪魔だと!我が魔族軍への邪魔とはなんだ?生半可な返答では只ではすまんぞ!」

怒声をさらに響かせて、ローバクウが叫ぶ。それを受けてラーセルスが顔を上げ

「は!奴らめはゴーレムを召喚する魔導士を雇い入れた模様です」

と伝える

「何?ゴーレムを召喚する魔導士、だと」

訝しむ様に質問を返すローバクウに向かい、更に続けるラーセルス

「は、その大きさオーガを体半分も超える大きさで、その力たるやオーガ5匹を瞬殺、一瞬のうちにそのカタチを変えると前衛で用意したゴブリン部隊30を殲滅するほどでした」

「オーガ5匹を瞬殺だと!ううむ、なんということだ」

予想外の戦闘結果をうけて、さすがのローバクウも唸らざるを得ない

「は、ですので一時撤退、かのゴーレム対策として”ドラゴン”の使用を許可頂きたく!」

「むードラゴンか。あの様な辺境の集落にそこまでの戦力を必要とするとは・・・」

ラーセルスの発言に少しの逡巡をするローバクウであったが、直ぐに決断するとくわっと目を剥いて吠える

「わかった、許可しよう。”ドラゴン”の使用を!その代わり、失敗は許さんぞ」

「ははーーっ、必ずやご期待にお答えします!」


一礼をし、退室していったラーセルスをみやりローバクウはふん、と鼻を鳴らす

「・・・奴は四天王の中でも最弱。果たして”ドラゴン”を使わせた所でその規格外のゴーレムとやらを倒せるかな?」

ローバクウの反対側に位置していた場所に立つもう一人の魔族軍副将”レゾウ”はそう問いかける

「その時は・・・」

言いかけると、二人の間の玉座から声がかかる

「その時は、私がそのゴーレムの相手をしよう」

「ま、魔王様・・・!」

驚く二人の魔族が見つめる中、玉座に座った魔王は、静かに立ち上がると

「そのゴーレムを操るという者、もしかするともしかするかもしれん・・・」

そう言い放ち、その双眼に力をみなぎらせた。その威容にかしづく二人の魔族の前に仁王立ちする魔王

その容姿はどう見ても、若い女性であった


魔王も女性でした。ちゃんちゃん

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