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魔界決戦編 第十一試合 救世主 対 魔王

この世の理に真実を見つけるべく魔道の頂点を極めし者!

人の身でありながらその実力は他種族を凌駕する!

魔法、マホウ、まほうのちから!

人族最強魔道士、ズンダ、可憐に登場!!

「ぶっふ」

我慢していたが予想以上の衝撃の為、固く結んだ口から空気が漏れる

魔族軍副将レゾウの斬撃をまともに喰らったペッスムは

肩口から胸元までを切り裂かれ倒れ伏した

「ぬわわわっ」

その様子を見ていたのか、はたまた体が勝手に動いたか

ペッスム私兵団のスームは奇声を発しながら、手に持った機銃をぶっ放した

「むがっぐ・・・」

機銃の掃射をまともに喰らったレゾウは上半身がミンチになって消し飛んだ

まともに戦えば魔法防御なりなんなりで、倒すのすら難しいと思われたのだが

想定外の邪魔に躊躇したのか、最初から命を捨てていたのか

あっさりとした最後であった

「ひ、ひぃぃ」

ペッスムに突き飛ばされ、床に倒れこんでいたズンダは

すぐ頭上で展開されたスプラッター劇に悲鳴をあげる

その一部始終をまるでコマ送りの映像のように眺めていた拓真たくま

その相手をしていた魔族軍大将ローバクウも多少惚けていたようで

同時にはっと我に返り、再びにらみ合う

「レゾウめ・・・しくじりおって」

息も荒く、ローバクウが悪態をつく

どうやら大将と副将2人とも、ここで果てるつもりだったらしい

「ったく・・・命を粗末にしやがって」

拓真がその意図に気付き、思わず愚痴っぽく言葉を発する

「貴様に何が解るか!?」

突然、その言葉に激高し怒鳴るローバクウ

「虐げられ、こんな地下深き牢獄に押し込められ、長きに渡り苦渋を舐めてきた我等魔族の、何が」

そう怒鳴りつつ新たに斬撃を繰り出すローバクウ

「貴様如き異世界人等にぃぃぃっ」

全てを語り終える前に、横から無慈悲な機銃掃射が行われた

どむどむどむ

恐らくは相当鍛え込んであったであろう鋼の身体に

スームの機銃から放たれた弾丸がめり込む

あっけないほど簡単に、魔族軍大将ローバクウは息絶えた

「・・・」

倒れこみ、既に肉塊と化したローバクウの死に顔を見つめ拓真は無言だった

その視線を横に向けると、目から涙を溢れさせたスームが

硝煙が上がったままの機銃を構えていた


「ペッスム・・・」

肩口から袈裟切りに斬られたペッスムは絶命していた

今際の際に何の言葉も残さずに逝ってしまった

その傍らには私兵団が床に座り込み同じ姿勢で嗚咽している

その死を悼む間もなく、建物全体が振動を始めて崩落の兆候を見せる

「く、こいつが最後の罠か。行くぞ!」

拓真が移動を即すが私兵団は動かない

「どうした!?」

「タクマ殿、我々はここに残ります」

「な!?」

その言葉に拓真は驚く

「急ぎ、ズンダ殿、キラッセ殿の2人を連れてそのゴーレムで此処を離れられよ」

ゴーレムとは”スモルガー・マークⅡ”の事を言っているのだろう

「我々10人の私兵団がいては移動の妨げになります」

そう言う全員の顔は何かスッキリとしたものだった

「さ、行かれよ」

その間にも振動は激しくなり、天井などが今にも崩れ落ちそうである

確かに生きている私兵団全員と移動するとなれば、崩落しかかっている

この建物から無事に出るには時間がかかりそうだ

だが・・・

「タクマ・・・」

「タクマさん・・・」

キラッセとズンダが不安そうな表情で話しかけてくる

「解った!」

拓真はそう短く叫ぶと素早く”スモルガー・マークⅡ”に乗り込み

ズンダとキラッセを後部座席に引っ張り上げる

そしてエンジンをかけるとアクセルをまわして空ぶかしをした

「っ!!」

空ぶかし音でよく聞こえなかったが、拓真は何かを叫んだようだった

そのまま走り去る”スモルガー・マークⅡ”

その姿を見送り私兵団達は、既に動かなくなったペッスムを囲んで座り直す

「ペッスム様には、貧困だった家族を救って頂いた恩があってな」

誰とも無く思い出話の口火を切ると

「ふふ、私も仕事で失敗して危うく斬首に成る所を救って頂いて」

「いやいや、私だってペッスム様には」

「何を言う!私こそがペッスム様に一番の恩義が」

崩落の始まった建物の中で口々に喋りだす

「皆、世間では嫌われ者に写っていたペッスム様を慕っていたのですよ」

スームが喧騒の中で静かに口にする

どうやら城塞都市テンペロストの城内で

その狡猾さから回りに嫌われていた宰相ペッスムではあったが

子飼いの私兵団には相当に恩義を着せていた様である

最も、当の本人は裏切らない様にしていただけなのかもしれないが・・・

「それでも、我々は貴方様の事を・・・」

口々にペッスム賛歌を謳っていた私兵団の頭上に

巨大が瓦礫が降って来たのはその直後であった



「タクマッ!あそこ、出口ッ!!」

崩落の進む建物の中で降ってくる瓦礫を避けながら

猛スピードで駆け抜ける拓真達

その眼前に門の明かりが見える

キラッセが叫んで指摘するまでも無く

拓真も其処に向かってアクセルを回す

ぎききききぃぃぃぃ

明かりの中に出て直ぐに拓真はバイクモードの”スモルガー・マークⅡ”を

横滑りにして停車させる

そして今まさに、出て来た建物がつぶれて崩落した

もうもうと土煙を上げる建物を呆然と見つめる3人

「・・・あの、ペッスムさんのお連れさん達・・・」

ズンダが恐る恐る口を開いく

「・・・言うな。あれが奴等の、選んだ道だ」

拓真が崩れ落ちた瓦礫の山を見つめながら穏やかに話す

「はぅぅ・・・」

選んだ道

その言葉にズンダ自身感ずる物があった様でそのまま黙り込む

「タクマ、あれ!」

瓦礫の山にばかり目が行っていたが、キラッセがそれに気付き声をあげる

その指差す方向には周りをガーゴイルの死体の山に囲まれた

”ミドルオー”が鎮座していた

「ま、まさか!?」

動く様子の無い”ミドルオー”に拓真も焦りを隠せず急いでその側に駆け寄る

「カイム、おい、カイム!」

無敵の近代兵器の塊”ミドルオー”だが操作していたのは只の人間だ

外観に異常は見られないが、もしかしたら中身に何か重大な問題が?

悪い予感が頭をよぎり、焦って”ミドルオー”のハッチを開けて中に飛び込む拓真

そこには

お互いの手を固く握り締めあったカイムとその妻ケリスの姿があった

「く・・・!」

「そ、そんな・・・・!」

「う、うそですぅ・・・!」

拓真、キラッセ、ズンダはその光景を見て愕然とする

「カイム・・・良い奴だったのに・・・」

拓真が嗚咽を堪え、その肩に手を置く

「勝手に殺すな」

その手をカイムが上から押さえて答える

「く!」

「そぇ!」

「うそん!」

今度は別の意味で3人が愕然とする

「脅かすなよ!」

その身体を揺さ振ろうとする拓真に

「ちょいちょい、すんごく疲れてるのは確かなんだよ」

そう言ってたしなめるカイム

「悪いが、暫く休ませてくれ。ケリスもずっと気を張っていたんだ」

横に座っている最愛の妻の顔を見つめながらカイムはそうこぼした

「解った。後部座席に移ってくれ。操縦は俺がする」

拓真はカイムにそう告げると移動したカイムに変わり座席に着く

「それじゃ急ぐぞ。転移魔方陣封印に向かったメンバーが心配だ」

実に、超久しぶりに、初登場からほとんど触ってなかった

”ミドルオー”の操縦を、拓真が行う

エンジンを起動させて飛翔すると、放置したままの

”スモルガー・マークⅡ”を機体の下部からアームを出して抱え込む

そしてそのまま上空高く舞い上がると、猛スピードで飛び去った



「くっ!!」

騎士団団長サリオはそう呻くと後退した

剣技には自信があった

幼き頃より鍛錬と技を磨き、女の身でありながら

城塞都市の騎士団団長を務めるほどの腕前だ

そこらの一山幾らの凡人は元より、相当の達人でも打ち負かせる腕は確かにあった

現に魔界で開催されていた武道大会でも、彼女に敵う相手は居なかった程だ

だが

目の前に居る相手、魔王ベルリムこと”カナコ”には通じなかった

いや、正確には相手にはなるのだが決定打を与えられないのだ

そのくせ相手には余裕がある

隙を見せれば恐らく致命の一撃を打ち込まれるだろう

その隙を与える事無く攻め続けていたのだが

「どうした?もう終わりか?」

魔王ベルリムが涼しげな顔で問いかけてくる

その手にした長剣の構えは”正眼の構え”である

サリオは知る由も無いが、魔王ベルリムは実は剣道の有段者なのであった

その腕前も見込まれて、この異世界フェルメールに勇者として召喚されたのだが・・・

「ウォォォ!!」

「魔王様、万歳!!」

「さすが、お強い!!」

外野の魔族連中が雄叫びを上げている

サリオとの一騎打ち状態になった時から

その周りを大きく円を描くように囲んで声援を送っているのだ

サリオもそれを承知して、じわじわと戦場をずらしていた

「まだまだぁっ!」

サリオは雄叫びを上げると再び斬りかかる

そしてちゃんちゃんばらばらの剣劇が始まるのだ

僅かづつだが剣劇の場をずらした事により

一刀両断されて倒れこんでいた元四天王ユウゼスへの道が開ける

その隙をついて炎の3騎士がユウゼスに近寄り、自分達の陣地へ担ぎ込んでいた

そのユウゼスは虫の息だ

「しっかり!」「傷は浅いよ!」「意識を保って!」

3騎士のミース、セイム、ソーネは口々に声をかけている

「はぁはぁ、うぐっ」

喘ぐユウゼスに、ランチの中で待機していた

夫の熊型獣人アイゼンレッグと娘のティピレッグが駆け寄ってきた

「ユウゼスッ!」

「かあちゃん!」

2人とも真っ青な形相でユウゼスに近づく

恐らくランチの窓から魔王に斬られるのを見ていたのであろう

真っ先に飛び出して安否を確認したかったのであろうが

周りを魔族軍に囲まれていてはそれも出来なかったと言う歯がゆさがあった

「カカカ、気をつけられよ!ゆっくり、ゆっくり運ぶのだ!」

鷹の獣人ホークアイが周りを牽制しながらランチに誘導する

おびただしい出血は何とか収まったようだ

さすがは元四天王、強靭な体躯を持つドワーフである

しかしその命の火は今、まさに消えようとしていた・・・

「んぐっ、んぐ・・」

言葉を出そうとするが上手く言えないユウゼスは泣きはらす娘の頬をそっと撫ぜた

「か、かあちゃん!」

その顔を見ながらユウゼスは微笑み力尽きた

「はぅ!う、ぅぅぅ」

急速に力の失われたユウゼスの手を握り嗚咽するティピレッグ

その後ろで夫のアイゼンレッグも直立不動で嗚咽する

その様子を背中で感じたホークアイも目を閉じる

応急手当をしようと薬品箱を手にしていた3騎士の面々も下を向いた



かいぃん

「あっ」

遂にサリオの剣が弾かれて飛ばされた

遠くに突き刺さった己が剣を見て、改めて正面の敵を見据えるサリオ

「勝負あったな・・・」

その切っ先を突きつけ宣言する魔王ベルリム

その事態にランチに入っていた3騎士の面々が飛び出してくる

「団長ッ!」「サリオ様ッ!」「逃げてエッ!」

口々に叫ぶ三人の声が戦場に木霊する

「もう遅い。そこでこやつの最後を見届けるが良い」

冷酷にも魔王ベルリムはその切っ先を喉元に突き刺した

「っく!!」

サリオはその切っ先を見切り、僅かにかわす

喉を掠めた刃はサリオの首筋から血飛沫をあげさせる

「良くかわしたな。だがここまでだ」

再度の突きを放とうとした瞬間、魔王の横で爆発が起きる

「む」

その爆発の元を確認した魔王はそちらを見て目を細める

ごぉぉぉぉぉぉ

ジェット音を響かせて飛来したのは”ミドルオー”

先程の爆発は先んじて放ったミサイルだ

高速で接近した”ミドルオー”は下部にぶら下げていた

”スモルガー・マークⅡ”を切り離す

どっごぉぉん

空中で変形を終えてロボットモードにチェンジした”スモルガー・マークⅡ”は

サリオと魔王の真横に着弾した

着地の爆風と土煙を上げて二人の邪魔をする形になる

平然と爆風を受け流した魔王だが土煙に紛れて放たれた剛腕をかわすべくその場を離れる

『大丈夫か!サリオ!』

スピーカーから聞こえる拓真の声に

「お、遅いぞ!」

と、土埃で目も開けられない状況だが、サリオは思わず叫んでいた

そのまま拓真はサリオを拾い上げ、旋回して速度を落としランチに合流した

”ミドルオー”共々、魔族軍と対峙する形になった


「遅くなった!皆、無事か?」

”スモルガー・マークⅡ”から飛び降り様に声をかけるが

「すまない、タクマ。ユウゼスが・・・」

首筋を押さえたサリオがそれを遮る

その視線の先にはうなだれる3騎士の面々とランチ前で首を振るホークアイ

「・・・そうか」

拓真がそう言うとキラッセが口を開く

「こっちもね、ペッスムさんとそのお仲間が・・・」

それを聞いたランチの面々の空気が更に重くなる

「感動の再会はもういいかな?」

その空気を切り裂いて、魔王がそう叫んで此方を威嚇してきた

「どうやら救世主殿の抹殺には失敗した様だな」

「魔王・・・!」

拓真は短く叫ぶと”スモルガー・マークⅡ”に乗り込む

「タクマ!」

乗り遅れたキラッセが叫ぶ

『キラッセ、皆!、すまない、ランチに入っててくれ。ミドルオーは戦いに必要なんだ』

スピーカーから拓真の声が響く

そのままずんずんとロボット・モードのまま歩を進める”スモルガー・マークⅡ”

異世界に召喚された2人の異世界人は今、何度目かの対峙をしていた


次回予告!!

異世界を救うべく召喚された二人の転生者

片や勇者として、片や救世主として・・・

二人の対決の行方は?果たして世界は救えるのか?

”魔界決戦編 第十二試合 それぞれの義”

だが結末は、ただひとつ・・・!

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