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初陣の俺、微妙な立場の俺

集落の前で100対30の絶望的なにらみ合いが続いていた

「大隊長ラーセルス様、集落の包囲、完了致しました」

うやうやしく敬礼する中隊長らしき魔族が、御輿の玉座に鎮座しているラーセルスと呼ばれた人物に報告する

「んむ、この集落は後の城塞都市攻略の拠点にする。住人は皆殺しにしろ。蟻一匹逃がすな」

非常なまでの采配を指揮し、ラーセルスはその場で立ち上がり右手を差し上げた

「進軍。殲滅開始だ」

張りのある声で周囲に宣言する

ウオーともグォーとも聞こえるモンスター軍団の掛け声と共に集団はゆっくりと前進を始めた


「ぐっ・・・!長老、もはやこれまでのようです」

「ぬぅ・・・降伏勧告もなしか・・・非道な」

進軍を開始した魔族軍を前に、苦渋の表情の長老とその側近達

「長老ーーー!」

背後から突然かかった掛け声に、何事かと振り返る長老とその側近

見るとこちらに駆け寄ってくるケリスとキラッセである

「ケリス、キラッセ?」

懲罰部屋から連れ出したのかと、答える間もなくケリスが息せき切って話し掛けてくる

「長老、助かるかもしれません」

「何を突然」

「アレを!」

自らの走ってきた方向に腕を伸ばし指差す先を見れば、そこには真っ赤な機体を光らせたスモルガー、この世界の住人には奇怪な形に見えるであろう人型ゴーレムが歩いてくるのが見える


「あ、あれはなんじゃ?ケリス!」

「あの、不審者さ、、タクマって人が呼び出したゴーレムです」

「なんと・・・奴めは魔法使い、ゴーレム召喚士じゃったか・・・!」

悠然とした足取りで此方に向かってくる赤い巨人を見据え、異変に気付いた他の住人達と振り返って驚く

その背後から歩調に合わせ、時々小走りになりつつ拓真たくまも一緒に向かってくる

丁度いい距離感で停止させたスモルガーを抜き去り、拓真は長老達の傍まで近づくと

「長老、ここは俺に任せてもらおう」

とメットの中でニヤリと笑った


「・・・あれは、なんだ?」

進軍を開始したと同時に、集落の奥から現れた真っ赤に光る大きな巨人ゴーレムらしきものを確認した魔族軍は、その異様さに進軍を止めてしまっていた

「な、なんでしょう・・・人型のゴーレムにみえますが・・・集落にゴーレムを召喚できる魔法使いでもいたのでしょうか?」

ラーセルスが側近に尋ねると、当たり障りない返答が返ってくる

「そのような情報は聞いておらぬ。集落の奴らめ、斥候との小競り合いであんなモノを用意していたとは」

苦々しく吐き捨てると、側近に声を荒げて指示する

「ならばこちらも、大型モンスターで対抗せよ!オーガ部隊を前面に押し出せ!」

ラーセルスの掛け声と同時に側近が部隊後方に指示を飛ばす

「オーガ部隊、でませぃ!」

うごごごご

うなり声と同時に3メーターはあろうかという大型モンスターのオーガが5体、前面に出張ってきた

「あの赤いゴーレムを殲滅せよ。その後は予定通り、皆殺しだ」

指示と同時に、うなり声をあげオーガ部隊が走り出す

目指すは赤いボディのゴーレム・・・スモルガーだ


「細かい話は後だ。こいつで魔族軍を蹴散らして見せよう。前を空けてくれ」

手短にそう長老たちに説明すると、正面に固まっていた人員がサーっと左右に分かれて道が出来る

荷車のバリケードが邪魔していてフラットにはならなかったが、拓真もヘルメットの左側を触りつつスモルガーに指示を出す

「突っ込め、スモルガー!」

スモルガーの頭部に当たる双眼がキラリと光ると、真っ赤な巨人スモルガーは走り出した

「ジャンプ!」

荷車に接近した時に、声を上げ指示を飛ばす

荷車を破壊することなく軽やかに飛び越えると、迫りくるオーガ部隊の正面に降り立った


ぐおおおおお

耳を裂くような叫び声と共にオーガ部隊の先陣が手にした棍棒を振り上げてスモルガーを攻撃する

こわぁん

金属の塊を棒切れで叩いたような間抜けな音を上げて、オーガの棍棒がスモルガーの装甲に弾かれる

おぉ

集落の住人達から驚きの声があがる

追いついた他のオーガ達もそれぞれが手にした棍棒をスモルガーに叩き付けるが、全く歯が立たない

こんこわぁんと、恐ろしく重量差があると思われる打撃音が響き渡る

「スモルガー、旋風拳だ!」

そう指示を飛ばすとスモルガーは両手を水平に伸ばす

その手に二体のオーガが弾かれる

残り3体のオーガがそれでも怯むことなくスモルガーに組みかかろうとする

その刹那、胴体と腰の接続部分がうなりをあげて回転を始め、上半身がコマのように回転する

一瞬のうちに最高速に達した回転は強靭な刃と化し、触れる物を粉砕する風となった

ぱぱぱん

急速に回転された手刀によりオーガ達は弾かれた水風船の如く、弾け飛んで粉砕されてしまった

周りに飛び散ったオーガの肉片と体液に、集落の住人達は一斉に身をすくめる

その結果に満足した拓真は、勢いに乗り更に指示を飛ばす

「スモルガー、チェンジ・バイクモード!アクセルターンで回転しつつ敵陣に突っ込め!」

回転を止めたスモルガーはその場で制止すると、がきがきと音を立ててバイクモードに変形する

そしてタイヤが接地したと同時にホイルスピンを上げて敵陣に向かって突っ込んでいく

アクセルターンをしつつ、コマのように回転しながら魔族軍の前衛にうなりをあげて入り込むと、次々と魔族軍のモンスター達を弾き飛ばしていく


一瞬のうちに大混乱に陥った自軍を驚愕の眼で見つめた魔族軍大隊長ラーセルスは顔を引きつらせた

「ぬっくく・・・これはいかん、撤退だ、全軍撤退せよ!」

素早く自陣営の不利を悟ったラーセルスは撤退を命じる

何度かの斥候軍による小競り合いで、組みしやすしと思っていた人族の集落であったが突如現れた奇怪なゴーレムの出現で自ら描いた絵図が崩れ去る

「あの赤いゴーレム・・・!この借りは必ず返すぞ!」

大混乱を呈した自軍の前衛を切り捨て、魔族軍はそのまま撤退を始める

そうした混乱が収まると、その後にはスモルガーの回転によって弾け飛び、ひき殺され、肉片と化したモンスターの残骸と、返り血とも体液ともつかない液体を浴びたにもかかわらず、全て綺麗に流れ落ちたスモルガーの、輝くボディが残された


「ようし、スモルガー戻ってこい。戦いは終わりだ」

動く物の無くなった集落前の街道にゆっくりとスモルガーが戻ってくる

初陣にしてはまずます、か・・これで集落の人達からも感謝され・・・と思いながら振り返ると・・・

そこには魔族軍を蹴散らした英雄を、というよりも得体の知れない何か、を見つめる様な形容しがたい人々の眼があった

・・・アレ?これってば感謝される流れじゃないのか・・・

そんな不安な思いをよそに、拓真の横には赤く光り輝くスモルガーが停車するのであった

遂に明らかになったシモベ、スモルガーの戦闘能力。その力はまさに未知数。ビーム光線等は、出ません・・・出してみたいけどなぁ・・・

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