魔界決戦編 第九試合 英雄
果て無き空を飛翔する、背中の翼で何処までも
行き着く先は天か地か、切り裂く風が教えてくれる
此処が戦う戦場か!
眩いライトに照らされて、鷹の獣人ホークアイ
戦いの渦中に今、降臨!
「チェンジ!”ビッグ・ダイン”ロボット・モード!」
拓真の号令が響き渡る
がきがきがきー
切羽詰った様な拓真の号令に合わせ
慌しく変形する”ビッグ・ダイン”
変形前の超弩級要塞モードは全長380mだが
ロボット・モードに変形する事で身長400mの巨人になる
対して崩落を始めている魔王城の離れは
軽く見積もってもその倍以上ある
某レジャーランドのお城の最高点が51mであるらしいので
最初に拓真が得た感想はかなり間違っているようだ
「くそ・・・サイズがおかしいじゃねぇか!」
誰に言うでもなく悪態をつく拓真
「まぁ、相手はでかいからな・・・?」
拓真の悪態の意味が解らず、騎士団団長サリオは疑問系で返す
「あぁ、どうでもいいんだぁそこわぁ!」
崩れてくる離れをモニターで見つつ、拓真が声を荒げる
「タクマ、落ち着いて!」
キラッセが横から叱責する
「ふぃー!やっぱり城内には転移魔方陣らしきものは発見出来なかったよ」
”ビッグ・ダイン”の操舵室に飛び込んで報告してきたのは
途中で別行動を取っていた炎の3騎士のソーネである
自慢の黒髪ロングヘアーが瓦礫の粉だらけだ
『おツカレさまでス』
案内ロボット”ピグロン”が労を労いつつタオルを差し出している
「つーこたぁ、やっぱり他の場所か」
報告を聞いた拓真は予想していたとは言え悔しがる
「カカカ・・・では一体ドコなのであろうか?」
獣人ホークアイが腕を組み思案する
「此処で無いとすると思いつくのはアソコしかない」
同じく思案していた元四天王のユウゼスが口を挟む
「そこは、一体何処なんです?」
炎の3騎士のセイムが、ユウゼスに問いただす
腕組みをしていたユウゼスは目を瞑る
「・・・この城門を出て北に真っ直ぐ向かった所に、大軍を移動する為に建設した転移門がある。恐らくはそれこそが、転移魔方陣本体なのだろう」
「なるほど。単なる移動用の既成魔方陣と見せかけて、実はそれこそが大本命だったと言う訳ですかぁ」
魔道士ズンダがようやく本来の姿を取り戻しつつ、話を繋げる
「よし、それじゃぁとっととこの厄介者を片して其処へ急ごう!」
拓真が話を纏める
だが
轟音と共に崩れ落ちてきた離れに皆が息を呑む
どごごごご
地滑りを起こしながら迫り来る巨大な塊
全く現実感の無い光景がモニターに映し出される
「うおっ!?」
両手を広げてその巨大な塊を受け止める”ビッグ・ダイン”
どどーーん
物凄い激突音と振動が皆を襲う
途端に鳴り響く警報音
『キケン、キケン、”ビッグ・ダイン”のパワーオーバーでス!!』
ピグロンが頭部を回転させつつ警告する
「くく、く・・・」
操縦桿を握る拓真は、反動で戻りそうになるレバーを押さえる
押さえ切れない質量をまともに受け
谷底に一緒になって滑り落ちていく
けたたましい警告音は更に激しさを増していく
「ほ、他に、方法は無いのか!?」
レバーを押さえ続ける拓真は誰と無く尋ねる
だがその問いに誰も答えられない
「こ、このままだと全員谷底に真っ逆さまだぞ!?」
激しい振動でまともに立ってられない状況でサリオが叫ぶ
がっつん
谷底の崖の途中で何かに引っかかったのであろうか
ひと際大きな振動が全員を揺さぶる
「きゃっ!?」
キラッセがまともに振動のあおりを喰らって床に倒れこむ
ぱかっ
拍子に装着していた胸当てにあるポケットが開く
こんこんころろろ
そこから飛び出したのは
かつて魔法の国であるホビットの集落でちょろまかしたスクロールだ
「・・・こ、これは?」
転がった先にはズンダがいてそのスクロールを見て驚いている
「あ、あ、ちょ、無し無し!」
キラッセが少し慌てるが、ちょろまかした事実は誰も知らない
転がったスクロールを拾い上げズンダが目を見開く
「このスクロールは!ホビットに伝わる禁呪魔法では!?」
ズンダが声を大にする
「あー、えっと、えっと・・・ゴメンナサイ!」
キラッセが何故か謝る
「それが、どうかしたのか?」
取り合えず引っかかった事により一時的に収まった振動の中
拓真が落ち着きを取り戻して聞いてきた
「ちょっと待ってください・・・・」
おもむろにそのスクロールを手に取ったズンダは
表面の文字を読み解く
「・・・この禁呪魔法、覚えがあります!コレを使えばこの状況を打破出来るかも知れません!」
ズンダがやや高揚した口調で皆に報告する
「一体、どんな禁呪魔法なのだ?」
成り行きを見守っていた宰相ペッスムが口を挟む
「えぇ、この禁呪魔法、”ストーンワールド”と言ってその名の通り石の世界を作り出す魔法なんです!」
禁呪魔法の効果を、声高らかに宣伝するズンダ
「ストーンワールド?石の世界?それがこの状況にどう作用するんだ?」
いまいちピンとこない拓真が聞き返す
「石の世界、すなわち広範囲に渡って空間を石化させることが出来るんですよ!」
じれったい、といった感じで説明するズンダ
「カカカ・・・という事は、この谷間を石で埋め尽くす事が出来ると!?」
「そうです!谷間を埋め尽くして塞ぐ事が出来るんですぅ!!」
ホークアイの回答に同意しつつ宣言する
そうなれば話は早い
落っこちる谷が無くなれば
この魔力爆弾と化した塊を
星の核へ届かなく出来る
「ようし、頼むズンダ!スクロールを使って覚えてくれ!」
拓真が理解し叫ぶ
「了解ですぅ!」
ようやく皆の不信を払拭できる機会を得て、弾む声で答えるズンダ
華麗な手付きで魔法スクロールを紐解く
すると広げられたスクロールが発光し
光の粒子となってズンダの額に吸い込まれていく
光の粒子となった魔法スクロールが全てズンダに吸収され終わったとき
ズンダの目が見開かれる
「・・・ダメです・・・」
その口から弱弱しい声が漏れる
「ダメ?な、何が、だ?」
サリオが驚いて聞き直す
「ストーンワールドを使用するにはコアとなる核を必要とします」
ズンダが下を向き声のトーンを落とす
「コア?核?どういうことだ!?」
3騎士のミースが苛苛した様子で言い寄ってきた
「石の世界を構築するのにはとても強固な”もと”になる礎が必要なんです」
「魔法かなんかで、ぱーっと、作れないのか?」
「強力なコアを作るには時間がありませんー!」
涙声になり眼鏡の奥から涙が溢れそうになってる
そんなズンダを見やり、拓真が問いかける
「・・・この”ビッグ・ダイン”をコアにしたらどうだ?」
「へ・・」「え?」「な」「何!」「ちょ!」「そ!」「カ!」
操舵室にいた全員が拓真の言葉に驚きの声をあげる
「なんかさ、そんな気がしてたんだよ」
割とサバサバした声で拓真が皆に告げる
「この巨大な塊を押さえるのには、この”ビッグ・ダイン”を犠牲にするしかないんだろうなってさ」
コンソールパネルに手をついて拓真が声を落とす
「タクマ・・・」
キラッセがそんな拓真の腕を掴む
「ま、そんな訳だ。一丁頼むぜ」
ズンダに明るい口調で話しかける拓真
「う・・・」
躊躇するズンダ
「ほら、急いで頼むぜ?この後、転移魔方陣にも行かなきゃならんし、止めたとはいってもこの魔力爆弾?を無効化しに行かなきゃならねーんだぜ?」
努めて明るく話す拓真に
「は、はいぃ!!」
意を決したように、元気良く返事をするズンダであった
「それじゃ必要物資は最低限だ、準備はいいか?」
”ビッグ・ダイン”の格納庫から脱出用ランチに乗り込んだメンバー達
拓真の問い掛けに全員が頷く
「うぅ・・・美味しい料理ともこれでオサラバ・・・」
「温泉も・・・ぶてっく、も・・・」
「コラ、未練たらしいよ!?」
3騎士はそれぞれ文明の利器とお別れするのが辛そうだ
「なぁに、この戦いが終わったら・・・いや、何でもない!」
危うくフラグを立てそうになって拓真は頭を振る
「ここから二手に分かれるぞ、ランチチームは転移魔方陣に向かってくれ。”ミドルオー”と”スモルガー・マークⅡ”はこの魔力爆弾を無効化しに行く」
小型バスの様な飛行ランチに乗り込んだのは
騎士団員達とサリオ、3騎士のセイム、ミース、ソーネ、獣人ホークアイ、
元四天王のユウゼス、夫のアイゼンレッグ、娘のティピレッグ
戦力的には心許無いが、魔力爆弾も一筋縄ではいきそうに無いので仕方ない
それぞれがそれぞれの顔を見合わせ合い、大きく頷く
「それじゃいくぞ!」
拓真の号令と共に全員が”ビッグ・ダイン”から飛び立った
・・・只1人、いや一体を残して・・・
「それじゃズンダ、やってくれ」
「はいですぅ!」
威勢よく返事を返したズンダは
開放したままの”ミドルオー”横にある搭乗口から手をかざす
間違って落っこちない様に、腰に安全ベルトが巻かれている
集中したズンダの視線の先には
崩壊しかかっている魔王城の離れを支えている”ビッグ・ダイン”が写る
「いきます・・・・!」
そう告げた途端、幾つもの魔方陣が”ビッグ・ダイン”の周囲に
取り囲むように展開されだした
ぶんぶおんぶおん
電子レンジの様な音を立てて魔方陣が振動し
”ビッグ・ダイン”に光を当てていく
「・・・ピグロン」
その様子を見て拓真が呟く
そうなのだ
”ビッグ・ダイン”に残った只1体のロボット、”ピグロン”
彼は”ビッグ・ダイン”とワンセットになっている固体の為
離れる訳にはいかなかったのだ
『・・・気にしないでくださイ、タクマさン・・・』
”ビッグ・ダイン”の操舵室に佇んでいるピグロンは
聞こえるはずの無い言葉を拓真に向けて発声していた
『短イ間でしたガ、私はすごク、幸せでシタ』
「バカヤロウ・・・」
拓真は何故かピグロンの言った言葉が
聞こえた様な気がして、そう呟いた
「タクマ・・・」
”スモルガー・マークⅡ”の後部座席に座っているキラッセは
優しく拓真の腰に腕を回して抱え込んだ
沢山の魔方陣に囲まれた”ビッグ・ダイン”は
それが発する光に包まれて発光していく
そして
「はっ!!」
ズンダの気合と共に一瞬にして其処を基点として
古の禁呪魔法、ストーンワールドが発動した
ばきばきばきばき
光の中心から深い谷底を覆い尽くす様に
石の塊が伸び広がっていく
あっと言う間に谷底は見えなくなり
谷があった場所は平坦な岩肌の道路に変わってしまった
「すごいな」
その効果を見届けた”ミドルオー”操縦士、カイムはそう言って唸った
横のシートには同じく彼の妻であるケリスが驚いた表情をしている
平らになってしまった元は谷だった場所に
”ミドルオー”と”スモルガー・マークⅡ”は降り立った
「カチカチだ・・・普通の地面と変わらん」
地面を手で触ったり叩いたりしていた
宰相ペッスムはそう評した
「星の核に直接被害が及ぶのが回避されただけで、まだあの爆弾とやらの脅威が無くなった訳じゃないんだからな?」
惚けた様になっているペッスム以下、私兵の海兵隊もどき達に
拓真は発破をかける
おお、そうだった等と我に返っているペッスム達を横目でみつつ
拓真は地面に半分突っ込んだ様な形になった
魔王城の離れの成れの果てを見つめた
「我が魔力の詰まった爆弾、とか言ってたな?」
拓真は魔王ベルリムの言葉を思い出しながら
”スモルガー・マークⅡ”に乗り込み叫ぶ
「急ぐぜ、みんな!」
拓真の最大の武器である三つのシモベ
その一つである”ビッグ・ダイン”は
魔王の罠を阻止する為に犠牲となった
果たしてこの先、この世界を救うという
拓真の最終目的に辿り着けるのであろうか?
皆が通り過ぎた後に吹いた一陣の風は
最後に見せた”シモベ”の意思表示か・・・
次回予告!!
拓真達が魔力爆弾の無力化に尽力する中
転移魔方陣の本体に向かった他のメンバー達は
魔族軍の最終防衛ラインに苦戦することになる
傷つき倒れ行く仲間の下へ、急げ拓真!
”魔界決戦編 第十試合 最終防衛戦線”
戦いも、いよいよ大詰めか!?




