魔界決戦編 第七試合 魔王城にて
その手は何を掴む為に?
その目は何を見る為に?
その美貌は何を魅了する為に?
謎、謎、謎、妖艶な元エルフの格闘家
魔族四天王 ヤーン、満を持して再び入場!
拓真は、まどろみの中に居た
「ここは・・・どこだ・・・?」
夢を見ているかのように、ふわふわした感じだ
だが、意識がハッキリとしている
「たしか・・・俺は・・・戦っていて・・・」
じわじわと記憶が覚醒していく
「・・・そして、コーディが・・・」
そこまで思い出すと、かっ、と記憶が鮮明になる
「そうだ、コーディ!!」
先程までの戦いの記憶を取り戻し、現実に戻る
途端に、激痛が全身を襲った
「つっ・・・・・・!!!」
どうやら”スモルガー・マークⅡ”のコックピット内で気絶していたようだ
目を覚ますと、体中が痛い
「くそっ、魔法爆発の衝撃波か」
魔族四天王のヨーディが発動しようとしていた禁呪魔法を
コーディが捨て身で阻止した結果
行き場を失った力場が暴走し、大爆発を引き起こしたのだ
「どうなった?他の皆は?」
モニターをみるが、煤けていて何も見えない
「このっ!」
悪態をついてハンドルのスイッチを押す
ばぎぎぎぎ
異音を立てて、歪んでしまった上部ハッチが開いていく
開ききるのももどかしく、ハッチを両手で押し上げる
すると、熱気が中に吹き込んできた
「あつっ!?」
一瞬目を瞑るが、それ以上は温度が上がらなかったようだ
外気が熱を帯びているのを考慮して、ゆっくりと目を開ける
「・・・・・!」
声にならない驚きがそこには広がっていた
一面、焼け野原
木も草も、そこには無く
地面ですら焦げたような臭いと熱を撒き散らしていた
「なんてこった・・・」
その光景に絶句した拓真
「う、うぅぅ・・・ん・・・」
背後で同じく気絶していたキラッセが熱風を感じて気がついたようだ
「キラッセ・・・!」
近づいて身体を起こす
「うっ・・!イテテ・・・!」
拓真と同じく、衝撃波で身体を痛めていたようだ
「大丈夫か?少し横になってろ」
ゆっくりと起こした身体を横たえて、拓真は外に出る
焼け野原になった地面は熱を持ち、足底から熱が伝わってくる
見渡すと”ビッグダイン”と”ミドルオー”が地面に横になっているのが見えた
「ふぅ・・・見た目が無事だから、中身も大丈夫そうか?」
原型を保っている両機を発見し、少しほっとする拓真
「そうだ、コーディは?それと土壇場で攻撃してきたズンダは?」
爆発の中心部らしきクレーターが見える
その横に丸く円を描いたように地面が残っているのを発見する
中心部に倒れている人物がいる
ズンダだ
恐らく、爆発の瞬間に防御壁を展開したのであろう
最終的には魔力を使い果たし気絶してしまった様だが・・・
取り合えず、側まで行って確認をしてみる
・・・どうやら息はあるようだ
そっと、上半身を抱き起こして頬をぴたぴたと叩く
「ズンダ・・・おい、起きろ」
少し乱暴な言葉遣いで覚醒を促す
「う・・・ん・・・」
やがてゆっくりと目を開けたズンダ
「あ・・・たく、ま、さん・・・・タクマさん・・・!」
どうやら自分を起こした人物が拓真だと気付いたようだ
「す、すみません・・・わた、わたし・・・」
相当体が弱っているのか、蚊の鳴くような声で泣き始めた
大粒の涙が、ぐるぐる瓶底めがねの縁から溢れ出す
「あぁ、もういい。お前がこういう行動を取ったのは、大体察しが付く」
拓真はそう言うと、ゆっくりと地面にズンダを寝かせた
「細かい話は、後だ。取り合えずそこで休んでろ」
そういい残すと先程確認した大きなクレーターを目指す
「うぅ・・ずびばぜん・・・」
背後でぐずってるズンダを残し拓真はクレーターの淵に立った
爆発からどれくらいの時間が経過したのであろうか?
クレーターの底は未だに火山の噴煙のように煙を上げていた
周りを見渡したが動くものが一切無かった
確か最後に見たときは少なくても飛行タイプの魔獣の数匹は居た筈だ
その影も形も無い
全部、蒸発してしまったのだ
ズンダでさえ、爆発の衝撃波を防ぐのに気絶するほど体力を消耗したのだ
魔法合戦をしていた、コーディとヨーディの爆心地に居た2人は・・・
「え?それじゃコーディは・・・」
騎士団団長サリオは、拓真の説明を聞いて絶句した
魔法爆発の衝撃波で墜落していた”ビッグ・ダイン”の会議室である
「あぁ・・・一緒に居た四天王の1人、ヨーディと一緒にな」
重い口調で拓真は繋げる
「そんな・・・」「・・・・」「ふっ・・・・く」
炎の3騎士の3人も感情の波に押し流されているようだ
「カカカ・・・かの御仁は本懐を遂げたのかのう」
獣人ホークアイは弟子との確執を聞いていたのか、そんな言葉を口にする
「四天王と言えば、タクマに組み付いてきたでかいヤツ・・・」
キラッセが思い出した様に尋ねる
「あぁ、ラーセルスってやつだが・・・ヤツも生死は不明だ」
キラッセにそう告げた拓真は部屋の隅っこに居るズンダを見る
そこには同じく城塞都市の宰相だったペッスムもいる
「ズンダ、早速で悪いが魔王城への道案内を頼めるか?」
気まずそうにしている2人を見かねて拓真は声をかける
「えっ、はっ、はいぃ!」
急に話しかけられたズンダは素っ頓狂な返事をする
「・・・タクマ。申し訳無いが私は彼女をまだ信用出来ないぞ」
サリオがきつい目つきでズンダを睨む
「うっ・・・はぅ・・・」
ズンダがその威圧で気圧される
「ま、待ってくれ。その件に関しては私にも責任がある!」
ズンダの近くで気まずそうにしていたペッスムが助け舟を出す
「あの時は、私の計画に彼女が乗せられたのだ!悪いのは私だ!」
わりと熱い感じで皆に力説するペッスム
現在では”ビッグ・ダイン”の艦長的なポジに納まっているが
元々は姦計を弄する敵対していた人物だったのだ
「だが、彼女は我々を裏切ったのだ!」
サリオ以下、騎士団員はそこそこ根に持っていたようだ
口々に非難の声を上げる
「まぁ待て。皆落ち着け」
ひとしきり声が上がった所で、拓真が制止をする
「今更だが、俺は例え敵でも協力してくれるなら味方だと考えている」
下を向いていたズンダが、その言葉に肩を震わせる
「・・・甘い考えだと思うか?」
皆を見渡し、拓真が問いかける
「甘い考えだな!」
皆が押し黙る中、声を上げた人物
四天王の1人、軟禁中のユウゼスだ
その後ろには夫である獣人のアイゼンレッグと娘のティピレッグが一緒に居る
「ユウゼスか」
その姿を見て拓真は呟く
「すまん、タクマ。どうしてもと言うので連れて来てしまった」
アイゼンレッグがすまなそうに拓真に詫びる
「いいさ。元々、拘束はしてないしな」
「その考え方よ、貴様の甘さは」
ユウゼスが拓真の言葉に更に被せる
「かぁちゃん・・・」
娘のテイピレッグがユウゼスの服の裾を引っ張る
「だが・・・」
そんな娘の頭を優しく撫でるユウゼス
「そんな甘さが貴様の良い所なのだろうな」
そう言うとニコリと笑う。その笑顔にティピレッグも笑顔になる
「そう言う訳でだ。我も魔王城へ向かう手助けをしよう」
そう言って拓真にニヤリと笑いかける
「そいつぁ心強いな」
拓真もニヤリと笑い返す
そして、全員に向かい直すとキリ、と表情を引き締める
「皆、色々思う所、言いたい事等あるだろう」
ズンダの側に行き、肩に手を載せる
「だが、今は俺を信じて付いて来て欲しい」
顔を上げて拓真を見上げるズンダ
「こまけぇこたぁいいんだよ。愚痴は後で聞く!いくぜ!」
強引に話を纏めると、拓真は威勢あげた
全員が、「おぉ!」とは成らなかったが、一先ずこの場は納まった感じだ
ざわつく空気の中、拓真はズンダの背中をポンポンと叩いた
「まぁ、色々あるが・・・よろしく頼むぜ?」
拓真はそう言うとズンダに似合わないウィンクをしてみせた
魔王城の中心部、魔王が鎮座する玉座の間
ひとり静かに瞑想をするベルリムこと、カナコの姿があった
「し、失礼します!」
慌しく玉座の間に飛び込んで来た伝令が叫ぶ
「正面から転生者とおぼしき一団が襲来!既に戦闘が開始されました!」
その報を聞いた魔王ベルリムは静かに目を開いた
「来たか・・・」
「正面突破だ!雑魚は蹴散らしていけ!」
拓真は”スモルガー・マークⅡ”のコックピットから指示を飛ばす
『了解した!』
”ミドルオー”からはカイムの返事がする
『転移魔方陣を発見次第、連絡を入れる』
”ビッグ・ダイン”からはペッスムが返してくる
そうなのだ
最大の目的は魔界に存在する”転移用魔方陣”の封印なのだ
「俺は正面突破で魔王の所まで行く!」
そう言ってバイクモードで魔王城の城門から突っ込んだ拓真
大きな鉄の門が行く手を阻んだが”ミドルオー”のミサイルがそれを破壊する
「ラ○ダー・ブレイク!!」
爆発と同時にウィリー走行で門から進入する
「ねぇ、その言葉の意味、何?」
背中に張り付いたキラッセが尋ねる
「某有名ライダーの必殺技!!」
拓真がハイな感じで返事をする
敵の本部に突撃するというシチュエーションに感じるモノがあるようだ
行く手を阻む雑魚っぽい衛兵の間を縫って爆走する拓真
「いいねぇ!こういうシチュ、嫌いじゃないぜぇ!!」
若干ハイな状態になった拓真は高揚した気分のまま叫ぶ
広い城内をバイクで疾走し続けていると
急に視界が開け、断崖の上に架けられた陸橋の様な通路に出た
その先に、いかにも的な建造物が見える
「・・・アレっぽいな」
その建造物を眺め拓真は呟く
その先に向かうべくスロットルを回す
と
中程の柱の影から人影が現れる
「・・・・・」
無言で此方を睨みつける
「・・・ヤーン・・・」
その人物を見て拓真は呟く
四天王の1人、ヤーン
だが、包帯だらけのその姿は弱弱しい
恐らく魔界へ来た時の戦闘の傷が癒えていないのだろう
だが、その双眸に光る光は明らかに殺意に満ちていた
アクセルを弛め、停車する
「タクマ・・・」
只ならぬ気配に怯えた様にキラッセが拓真に声をかける
「キラッセ、ここで待っててな」
拓真は”スモルガー・マークⅡ”から降りるとヤーンに向かって歩き出す
1m程の距離で歩みを止める
「よう、これで何度目かな?」
ヤーンに向けて話しかける拓真
「いい加減諦めな。お前じゃ俺には勝てんよ」
溜息と共に話す拓真
対してヤーンは無言のままだ
「大体、最初に会った時から・・・」
「ヨーディは」
「ん?」
会話の最中に被せて来たヤーン
「ヨーディは・・・死んだの・・・?」
怖い位の凄みを利かせ、ヤーンが尋ねる
「・・・あぁ・・・」
やや間を置き、拓真が答える
「・・・そう・・・なの・・・」
その答えを聞き少しだけ下を向くヤーン
だが直ぐに顔を上げ下から睨み上げる
「・・・全霊を賭けて、転生者、お前を・・・殺す!!」
そう叫ぶと両手の爪をサーベルの様に伸ばし、躍り掛かって来た
その斬撃をかわし、腰からレーザー・ソードを取り出す拓真
「悪いが・・・死ぬ訳にはいかないんでね」
レーザー・ソードを構える
一触即発の気配を感じて魔王ベルリムは口元に笑みを浮かべる
「ふふふ・・・早く来い転生者タクマ・・・ここが貴様の終焉の地だ」
そう呟いた魔王の玉座からは・・・
いかにもな禍々しいオーラの放射が溢れ出していた
次回予告!
魔王城にて対峙した拓真と四天王ヤーン!
二人の戦いの結末は?
魔王城の最奥にてほくそ笑む魔王の策とは?
”魔界決戦編 第八試合 罠”
落ちるのは罠なのか、それとも・・・!?




