魔界決戦編 第六試合 とある決着
魔法! それは万能なのか?
魔法! それは英知の結晶なのか?
魔法! それは人には過ぎた力なのか?
その答えを出すべく、魔法を極めた達人
齢300! コーディ 入場!!
ホビット種、コーディは考える
今、目の前でこちらを見つめながら魔法陣を展開し始めた
かつての愛弟子、ヨーディと初めて出会った時の事を
あの時、自身は200歳を超えた所
相手は戦災孤児だった
それから100年
ありとあらゆる魔術を教え込み、叩き込んだ
最初は親を失った哀れみだったか?
それとも・・・
ホビット種、ヨーディは思い出す
今、目の前でこちらの出方を伺いながら魔法陣を展開し始めた
かつての師匠、コーディとの修行の日々を
あの時、自身は両親を戦災で失い途方に暮れていた
相手は次期族長と目される有名人だった
それから100年
後継者となるべく魔術の習得に没頭した
己自身に魔法の才覚を見出してくれたからか?
それとも・・・
あの日、仲間を探しているというヒューム種の女が現れた
名を”カナコ”と名乗った
何故かヨーディは彼女を気に入り、一緒に行くと言い出した
当然、ワシは大反対した
だが・・・
カナコはヒューム種にしては珍しく、魔法の心得があった
”ズンダ”と呼ばれるババアが横に居たから
てっきり彼女の弟子なのかと思ったら違うという
なんとカナコは、この世界に転生してきた”勇者”だったのだ
その力の強さと思いの熱さに、ボクは心を動かされた
当然、師匠のコーディには大反対された
だけど・・・
結局、ヨーディは反対を押し切り里を出て行った
魔族の魔王を討伐したら再び帰ってくると約束して
長命種のホビット種にとってはほんの僅かな時だ
・・・あの時はそう思って見送った
魔族の魔王は討伐された
他ならぬカナコ自身の手で
目的を果たした筈なのにカナコの表情は曇っていた
・・・知っていた
討伐対象であるはずの魔王とカナコは
お互いに思いを寄せ合うようになっていたのを
・・・そしてあの日が来た
ヒューム種の城塞都市で祝賀パーティが催された
あの夜・・・
魔王討伐の報は、ホビット種の里にも伝わって来た
これで長きに渡る魔族と人族の争いが終わり
平和が訪れると、誰もが考えていた
ワシにとっては待ち望んでいた
愛弟子ヨーディが帰ってくる、と
そして帰って来た
魔族となって
「何故じゃヨーディ!」
コーディは続け様に魔方陣から水流の矢を放っていた
ヨーディが放つ火流の矢を相殺する為に
「ジジイ!とっととくたばれ!」
ヨーディはポーカーフェイスを崩さずに魔法を放ち続ける
双方の魔法がぶつかる中央は
水と火のぶつかり合いから起きる水蒸気爆発で
地面まで抉れるほどの爆風が吹き荒れていた
「凄いな魔法ってのは・・・」
拓真はその様を見つめながら
2人のホビット種の魔法の撃ち合いをそう評した
「ねぇ、なんか蒸し暑くなってきたよ」
後部座席でしがみついていたキラッセが身体を少し離して
首元をくい、と開ける
「そうだな、蒸し暑いな」
拓真も同調し、首元を緩める
爆風に巻き込まれないように離れているのだが
周囲一帯が湿度上昇をしているようだ
「残念ながら”スモルガー・マークⅡ”には空調設備が無いからな」
バイクが変形して座席を装甲の下に覆い隠すだけの物なので
気密性に欠けるのだ
「こんな所で問題点が発覚するとはな」
拓真はひょんな所で解った弱点を憂慮した
「にしても・・・」
先程から延々と続く魔法爆発に目を向ける
「魔法ってのはマジックポイントとか無いのか?」
「何それ?」
「魔法を撃つ度に減っていくモンだ」
「あぁ・・・弓矢の矢みたいな?」
魔法使いがあまり居ないので
その辺りの確認をした事が無かった
拓真はゲーム等でよくあるゲージを思い浮かべていた
コーディとヨーディの魔法爆発が起こっている場所から後方
魔族の四天王”ラーセルス”と
人族の魔道士”ズンダ”が接近していた
2人は姿を見られない様に隠れながら移動していた
「ズンダ、まだ貴様の魔法は届かないのか」
ラーセルスは後ろに居るズンダに小声で問いかける
「まだですぅ・・・」
一時の洗脳されたっぽい素振りは止めて
すっかり素の言動に戻っているズンダである
「チッ、人族最強といっても大した事は無いな!?」
悪態をつくラーセルス
自身の大した事無さは棚に上げて言いたい放題である
「むぐ・・・ラーセルスさんは酷いです・・・」
酷い言われようにむくれるズンダである
城塞都市での脱出時には魔王の放った火球から
防護壁にて助けた事もあるというのに・・・
そんな事を考えながらじりじりと近づく二人
狙うはその魔法合戦を眺める拓真である
魔法陣を描いてそこから魔力を込めた水流を放つ
それを幾度繰り返した事か
愛弟子であるヨーディと修行していた時でも
これ程放った事は無いのではないか?
コーディがふとそんな事を考え始めた時
不意にそれは襲ってきた
目眩
明確にマジックポイントが存在しない世界であるが
魔法を撃ち続けるのにはそれなりの体力が必要である
言うなればマラソンランナーに近い
スクロールによって脳裏に刻まれた魔法を詠唱し行使し続ける
マジックポイントを消費するのでは無く
体力を消費していくのである
それを補う為の魔法も存在するが
それを駆使してもこの有様になってきた
向こう・・・ヨーディはどうなのだろうか?
息切れもしてきたコーディが、遠目に見える相手の様子を伺う
ポーカーフェイスは変わらずだが息が荒そうだ
そろそろ、か
愛弟子時代だった頃と考えれば後数十回
魔法を撃ち尽くせば
お互いにぶっ倒れる頃合だ
だが・・・
「今日、ここが”剣が峰”ってね!」
ヨーディはそう叫ぶと
渾身の魔法陣を描き始める
「!?まさか、あれは・・・」
コーディがその魔法陣を見て驚愕する
その大きさと内在する禍々しい魔力を察知したのだ
「なんだ、あの魔方陣から感じる嫌な気配は!?」
その様子を見ていた拓真もそれを感じ取ったらしい
”ビッグ・ダイン”と無線が通じているので
それを通して甲板に居るコーディに問いかけてみた
『お、タクマの声じゃな。聞こえるか?』
甲板にいるコーディにスピーカーを通して会話が成立した
「あぁ、聞こえる。相手が描き出した魔方陣、アレ、やばいんじゃないか?」
拓真がコーディに感じた事を伝える
『そうか感じたか』
コーディが拓真に答える
”ビッグ・ダイン”の甲板の上
コーディはヨーディが描き始めた魔法陣を眺めていた
『どうなんだ、コーディ』
甲板の上のどこかにあるスピーカーから拓真の声が聞こえる
「タクマ・・・あの魔方陣はヤバイ・・・」
コーディは脱力しつつそう話し始めた
「アレはホビット種に伝わる禁呪のひとつじゃ」
『禁呪?』
「うむ。彼奴め、まさかアレを覚えていたとは」
コーディは一瞬の内に脳裏に思い出す
魔術を教え込んでいたあの日
書物に記されていた禁呪の数々の中で
唯一興味を示したひとつの禁呪魔法
「ありゃ、お日様の光を呼び出す魔法陣じゃ」
コーディがその魔方陣の正体を明かす
「お日様の光?まさか、太陽のコロナの事か!?」
拓真が驚く
「ピグロン、太陽のコロナの温度だ!」
拓真は即座に”ビッグ・ダイン”にいる案内ロボットに問いかける
『はイ。太陽のコロナは”100万度”以上ありまス』
「100万度だとぉ・・・」
『はイ。太陽自体は6000度ですガ、コロナは別でス』
「そんな事が・・・可能なんだろうな・・・」
拓真は途方も無い数値に思考を止めた
そんな物を魔方陣から吐き出すというのか?
魔法防護壁といえど100万度の高温に耐えられるのか?
たとえ耐えられたとしてそんな高温が吐き出されたこの場所は
いったい、どうなってしまうのか?
尽きない問題が、頭の中を駆け巡る
「・・・タクマよ」
コーディが拓真に呼びかける
『なんだ?』
「今からワシは”アレ”を止める」
『可能なのか?』
「恐らく・・・後の事は頼むぞ」
コーディは短く言い残すと
残り少ない体力を振り絞り
自身に魔法をかける
身体能力強化、そして・・・
次の瞬間、コーディは矢の様に”ビッグ・ダイン”の甲板から飛び出した!
しゅばっ
そんな空気を裂く音を残してコーディはヨーディに向かって飛翔した
「!コーディ?」
拓真はその様子を目にして思わず叫んでいた
「何?コーディ、飛んだの?」
後ろに居るキラッセが拓真に聞く
「あいつ、自分を犠牲にする気じゃないだろうな」
拓真がそう呟いた瞬間、爆音と振動に襲われる
「うわ」「何?」
下方を確認すると、なんとズンダが確認出来た
「ズンダ?!なんでここに?ってか、今、かよ」
闇雲に魔法攻撃を”スモルガー・マークⅡ”と”ミドルオー”に撃ってくる
『タ、タクマ!?あの魔法攻撃は・・・』
”ミドルオー”から搭乗者であるカイムから通信が入る
かなりの振動で、向こうも姿勢制御に気を取られた様だ
「あっ」
魔法攻撃の一発が”ミドルオー”に掴まっていた手に当たった
その衝撃で手が離れ”スモルガー・マークⅡ”は落下を始めた
「やべぇ!」「きゃー!」
慌てて拓真は姿勢制御の為に操縦桿を握る
脚部のバーニアを吹かし着地すると
そこに以前にも対峙したラーセルスの巨人化モードがぶつかって来た
『グハハ!油断じだナ!』
くぐもった声でラーセルスの馬鹿が話しかけてきた
「ほんっと、この、ばか!」
拓真が弾けとんだ先で態勢を整えきる前に
更にラーセルスが追い込みをかけて来た
不利な態勢のまま、巨人ラーセルスに押さえ込まれる”スモルガー・マークⅡ”
『バハハ!!終わりだァ!転生ジャアアアアア!!』
勝ち誇った様に頭部を締め上げ、引き千切ろうとするラーセルス
普段なら取りつかれる前に叩きのめせるレベルなのだが
今回は不意を突かれて態勢が悪かった
めきめきと、頭部が変形し始める
「タクマぁ!このままじゃ!」
「解ってる!」
キラッセの情けない声に返す拓真
矢の様に飛んでいったコーディも気になる
矢の様に”ビッグ・ダイン”の甲板から飛び出し
ヨーディの元に飛び込んでいったコーディ
それを見越してかヨーディの周りには
飛翔タイプの魔獣がガードする様に立ち塞がる
「く・・・心を持たぬ哀れな魔獣共よ!」
コーディは舌打ちをしたが構わずその中央に突っ込んでいく
「!・・・ジジイ!!」
魔獣の爪や牙がコーディの強化された身体に掠っていく
それらを意に介さず、突き進んでくるコーディ
「・・・!」
もうじき魔方陣が完成する
そして構成した魔法が発動するまであと少し
その間に詠唱者の行動を害すれば、魔方陣は発動せず魔法は破棄される
が
この禁呪は行き場を失った力場が大爆発する
それを解っていて
このおいぼれジジイは・・・
「ヨーディィィィィ!!!」
身体強化されたとはいえ、傷だらけ、血塗れになりながら
かつての師匠だった漢は、今、まさに自分の手を掴む
「この、くそ、じじい、が・・・」
「この、ばか、でし、が・・・」
詠唱者の行動が害され、魔方陣は完成せず魔法の発動は失敗に終わる
だが
その側で行き場を失った力場が渦を巻き発光し始める
大爆発
その閃光に、その場に居た全てのモノが包まれていった
次回予告!
大爆発を起こしその場に居たモノ全てが閃光に包まれた!
果たして拓真達の生死は!?
魔王城で策を講じて待つ魔王ベルリム!
”魔界決戦編 第七試合 魔王城にて”
ほくそえむのは、闇か、光か!?




