魔界決戦編 第五試合 魔法合戦
見た目の幼さとは裏腹に 内に秘めるは大きな想い
義理と人情秤にかけりゃ 義理の重さに傾く天秤
嗚呼 これも世の為人の為 ぐっと握った拳を隠し
漢ヨーディ浪花節 漢 ヨーディ 浪花節!
魔族四天王 ユウゼス墜ちる!
その報は瞬く間に魔族軍全体に広がった
新生なった魔族軍において
その尖兵としての勇猛さと戦果の多さには
他の四天王よりも一目置かれる存在だったからだ
見た目と実際の強さが最も合致していた1人であったのだ
それが崩れ去った
その衝撃は強さを標榜する魔族にとって計り知れない程の動揺を与えた
「落ち着け、馬鹿者共!」
魔族軍大将、ローバクウは浮き足立つ配下に激を飛ばした
一瞬で静まり返る配下の者達
静けさの中で正面の玉座に座る人物に注目が集まる
魔王ベルリム
元勇者が魔界の魔樹の果実を口にした事により魔族に変質し
魔族として魔界の王に君臨した吉崎加奈子その人である
その見た目からは想像も出来ない戦闘能力を秘めた人物が目を薄っすらと開く
「・・・よい、ローバクウ」
「はっ、魔王様」
ローバクウが畏まる
「元より四天王達が生き残るとは思っておらぬ」
そう言うと魔王ベルリムは立ち上がる
「それだけ相手は、強い」
居並ぶ魔族の精鋭たる配下を見やる
全員がその言に再びざわつく
「だが」
魔王が言葉を繋げた為、一瞬でざわめきが止まる
「最後は我等が勝つ・・・そういう闘いなのだ」
その言葉に全員が「おぉ」といった言葉を発する
それを確認した大将ローバクウが再び声を張り上げる
「聞いたな、皆の者!我等が勝利を収めるは必定!」
魔族はそれぞれが歓声を上げる
「ゆけい!そして戦果を上げよ!」
ローバクウの激に全員が歓声を大にして出立していった
玉座の間から全ての魔族が出立して行き、誰も居なくなった頃
魔族四天王の1人であるラーセルスが柱の影から現れた
「どうした、ラーセルス?」
それに気付いたローバクウが声をかける
「御願いが御座います」
ラーセルスが腰を屈めて頭を下げる
それを見たローバクウは心の中で少々うんざりした
元々、魔族の中では少々腕が立っただけで四天王の一角に滑り込んだ人物
それがラーセルス
元勇者パーティの面々が魔族に転じ、四天王と名乗った時に
人数合わせとして当時の魔族軍から選抜したのだ
瓦解しかけていた魔族軍から選抜しただけで
取り分け秀でた能力があった訳でもなく
戦闘能力が他の魔族達よりも、少しだけ高かったという理由だけ・・・
だが、その優先感からか上昇志向だけは強い人物
そしてそれは今までの戦果の乏しさからも伺える
・・・要は”御荷物”なのだが・・・
そのラーセルスが今また、”御願い”とか抜かしている
どうせロクな話ではあるまい、とローバクウは思案していた
「なんだ、申してみよ」
型通りの返答をして出方を伺うことにした
すると
「此度の出陣、私も参加させて頂きたい」
ぬけぬけとそう抜かしてきた
コヤツめ・・・
ローバクウは内心、怒りに似た感情が込み上げるのを感じていた
転生者がこの魔界に侵入した際の尖兵を任せたのはつい最近
その大事な一戦に、変化の鎧と強化薬を与えて任に就かせたと言うのに
結果は敗北しての敗走
その際の責任を取らせる為謹慎させていたのだが・・・
懲りない・・・ホント、懲りない・・・
実力も無いくせに、功名心だけは人一倍ある馬鹿
どうしたものかと考えていたローバクウに横から声がかかる
「今回は何か策があるようだな?」
副将のレゾウである
「はっ」
その言葉を待っていたかのようにニヤリと口角を上げるラーセルス
・・・ははぁ・・・
ローバクウはその受け答えで全てを察する
・・・今回は副将レゾウの入れ知恵か・・・
副将レゾウの長い銀髪から見え隠れする目を見ながら判断する
「申してみよ」
ローバクウはそこまで察すると先の言を誘う
「魔道士ズンダ。彼女と行動を共に致したいと存じます」
ラーセルスが思わぬ人物の名を口にした
その名前に大将ローバクウは元より
魔王ベルリムもその眼を見開いた
魔道士ズンダ
人族唯一の魔道士にして最強の魔法使い
先代のズンダから学ぶ事数十年
幼少の頃より叩き込まれた魔道の数々は先代を超えたとさえ言われる
最初は魔族に対抗し転生者である拓真達に協力していた
だが
先代ズンダの遺産である魔法スクロール”リヴァー”を発見してから
彼女の人生は迷走を始める事になる
”リヴァー”と共に収められた遺言状に魔王ベルリムこと
元勇者”カナコ”を頼るべし、とあった事から
彼女は城塞都市テンペロスト攻防戦最終局面に於いて魔族側に寝返ったのだ
そして魔王ベルリム達とその行方をくらまし現在に至るのだ
表舞台に現れなかった彼女は今まで何をしていたのか?
それは・・・
「あ~~~~っ、もうおおおおお!!!」
魔王城に用意された魔道士ズンダ専用の実験室兼自室
その中で彼女はうず高く積まれた魔道書を蹴散らしていた
「どれも、これも、あれも、それもっ!!」
怒りにも似た怒声と共に魔道書を崩していく
「ぜんっぜん!!役に立たないですぅぅぅ!!!」
はぁはぁと息を荒げて机に手をつくズンダ
そして眉間に皺をよせていた顔をくしゃくしゃにして泣き出した
「このままじゃ・・・何の為に・・・」
ぼろぼろと大粒の涙をこぼしだした彼女の脳裏にあの日の出来事が思い出される
城塞都市テンペロスト攻防戦の最中、意を決した彼女は地下牢に繋がれた
魔族四天王”ラーセルス”にコンタクトを取ろうとしていた
牢獄の前でバッタリ出くわしたのは城塞都市の宰相”ペッスム”
双方ともひっくり返るぐらい驚いたが何故か目的は同じらしい
牢屋に繋がれたラーセルスと会話をし
魔王ベルリムにコンタクトを取る事に成功した
その際に会話した内容
「魔王城にある魔道書の全てを与えよう」
その言葉にズンダは安堵感を覚えた
ズンダにとって先代のズンダの言質は絶対であったのだ
その絶対から”魔王を頼れ”と言われたのだ
真意は兎も角、先代の言質どおりに事が運ぶのは彼女にとっての安寧
だからその後のラーセルスやペッスムへの助力も苦も無く行えたのだ
・・・その後の流れでペッスムと立場が入れ替わる様になってしまったのは
彼女にとっての皮肉としか言い様が無いのだが・・・
案内されるままに魔界の魔王城に入城して部屋をあてがわれ
大量の魔道書との格闘が始まった
元々魔界にあった魔道書から、四天王の1人であったヨーディが
故郷のホビットの集落から持ち込んだ魔道書一式
全てに目を通し、先代から譲り受けた魔法”リヴァー”の研究に没頭したのだ
・・・が
全ての書物に目を通し終えた彼女が出した結論
”リヴァー発動条件が解らない”
つまり、魔族に寝返ってまでして得た情報でも解明出来なかったのである
「これじゃ・・・意味無いじゃない」
ズンダの胸に去来するのは後悔か、はたまた・・・
「魔道士ズンダを連れ出したい?正気かラーセルス」
大将ローバクウは突拍子も無い事を言い出したラーセルスを問いただす
「はっ!転生者めは今だズンダを仲間と考えているはず。そこを突きます」
したり顔して最もな意見を述べているが全て副将のレゾウの入れ知恵
そんなハッキリとした筋書きが見えているにも関わらず
ラーセルスは得意満面だ
大将ローバクウは内心大きな溜息をつく
・・・どうしたものか・・・
結論を出すのは簡単だが・・・そう思案していると後ろから助け舟が出た
「良かろう。好きにするが良い」
魔王ベルリムがそう告げたのだ
驚くローバクウとレゾウをよそにラーセルスは
「はっ!」
と、威勢よく返事をして飛び出して行ってしまった
「・・・よろしかったのですか魔王様?」
ラーセルスが出て行った後、暫くして大将ローバクウが言葉を出す
副将レゾウも予定内だが予想外、といったおもむきで魔王を見やる
「良い。今更あヤツやズンダ等どうでも良い」
魔王ベルリムは姿勢を正すと目を瞑る
「それよりも、だ」
魔王は言葉を繋げる
「転生者の操る巨大なシモベ、あれをどうにかしないと我等に勝機は無い」
拓真のシモベ”ビッグ・ダイン”の脅威を口にする
「そこでだ・・・」
目を開くと大将ローバクウ、副将レゾウに策を告げるのだった
「ねぇタクマ!この数じゃこっちが持たないよぅ!」
”スモルガー・マークⅡ”の後部座席でキラッセが叫ぶ
魔王城へのルートを捕縛した四天王の1人、ユウゼスから何とか聞き出した拓真達
ユウゼスは現在”ビッグ・ダイン”内の一室に軟禁状態にある
監禁ではないのはアイゼンレッグ、ティピ親子に配慮してだ
その合間を縫って魔族軍が攻めて来たのだ
地上に現れた魔獣群を拓真が”スモルガー・マークⅡ”で蹴散らす
上空にはミドルオー”が無双状態で飛行魔獣を殲滅している
その後方を”ビッグ・ダイン”が悠々と付いて来ると言った感じだ
だがいかんせん、数が尋常じゃないのだ
後から後から押し寄せる魔獣群に飲み込まれそうになる拓真
その時、”ビッグ・ダイン”前方に魔方陣が描かれそこから大量の水が吹き出す
『タクマ、コーディの魔法だ。ジャンプしてくれ』
拓真の頭の上に”ミドルオー”が近接する
「おう!」
脚部のノズルからジェット噴射で飛び上がり”ミドルオー”の下部に掴まるのと
その直ぐ足元を多量の水流が押し寄せるのが同時であった
ぐえーぐぎゃー
悲鳴を上げながら魔獣群が水流に流されて行く
「ふぅーすげぇな、やっぱ魔法ってやつはよ」
その様子を見ながら拓真が言う
背後の”ビッグ・ダイン”の甲板上にポーズを決めたコーディが立っていた
「カカカ、さすがじゃのコーディ殿」
獣人ホークアイがぱちぱちと拍手をしながらおだてる
「フ、お主に褒められても嬉しくはないがの」
コーディが今正に発動させた水魔法の魔方陣を解くと悪態をつく
「それじゃ、私が褒めたげよっか?」
炎の3騎士の1人”爆炎”のミースがおどけて言う
それを見たコーディが目尻を下げてミースに飛びつく
「おうおう、そうじゃそうじゃ、褒めてくれぇ~~」
我が意を得たりとばかり、うっかり失言したミースの胸に顔を埋めるコーディ
今回は戦闘配置が無いと考えて鎧を装備していなかったのが裏目に出たミース
着衣の上から胸に顔を突っ込まれ、ついでに揉みしだかれる
「調子に」「乗るなっ」
両サイドから、残る3騎士の2人
”焦熱”のセイムと”煉獄”のソーネにしばかれるコーディ
「ぶがぁっ」
変な声をあげて剥がれ落ちるコーディ
「うひぃ、ありがと2人とも」
咄嗟の事で防御出来なかったミースが2人に礼を述べる
「油断大敵」「自己防衛」
セイムとソーネにお叱りを受けてしまった
「カカカ・・・おふざけはそこまでじゃ」
ホークアイが真面目な顔をして全員に注意を促す
その声に反応して前方を見ると
巨大な炎が舞い上がり、コーディの水流を消し去っている所だった
その魔法と思える巨大な炎を出した人物
空中に浮遊する魔獣に鎮座していたのは
魔族四天王の1人、ヨーディだった
「・・・ヨーディ」
その姿を見てコーディが呟く
佇まいを正したコーディを感じ取ったのか口角を上げる
「まだまだこんなもんじゃないよね?」
そう呟いたヨーディの横に二つの魔方陣が展開される
そこから吹き出す赤い炎
それを見たコーディも素早く魔方陣を展開させて
同等の水流をそれにぶつける
ぶつかった先で二つの魔法の炎と水は蒸発する
その熱と水蒸気で周りが暴風に晒される
「ぬしら、中に引っ込んどけ!吹き飛ばされんようにな!」
コーディが他のメンバーに叫ぶ
「ここがわし等の決着の時、か」
目の前のヨーディを見据えるコーディ
それを見てさらに口角を上げるヨーディ
「魔法合戦、か」
拓真は蚊帳の外にされながらも
2人の間には誰にも入り込めない何かを感じていた
次回予告!!
ついに始まるコーディとヨーディの師弟対決!
ホビット種最強の魔道士2人の戦いの結末は!?
そこに水を注す形で現れるラーセルスとズンダ!!
”魔界決戦編 第六試合 とある決着”
勝つのは、誰だ!!




