魔界決戦編 第四試合 家族の絆
全てを捨てて魔族になった!
戦いの渦に身を投じ、辿り着いたこのリング
滾る思いを胸に秘め、これが最後の闘いか
魔族四天王 ユウゼス 朝焼けに立つ!
魔族軍四天王が1人、ユウゼス
彼女は今、出撃前の瞑想にふけっていた
脳裏に浮かぶのは魔族となったあの日の事
「これが魔樹の果実か」
ユウゼスは金色に鈍く光る林檎に似た果実を手に取った
「そうだ。それを自身の意思で内に取り込むのだ」
そう言って説明するのは魔族軍の猛将ローバクウだ
「取り込む、すなわちこれを食べれば良い訳ね」
そういってカナコが箱の中に沢山ある果実を手に取った
「美味しいの?」
続いてヨーディが他の一個を手に取る
「味なんてこの際どうでもいいじゃなぃ」
ヤーンも続いて他の一個を手に取る
「本当に、良いのか?」
ローバクウが魔樹の果実をそれぞれ手に取った4人を見渡す
「もちろん。この実を食べて魔族にならなければ」
「他の魔族に認められない」
「そして魔族軍も再建出来ない」
「それ即ち、ボク達の目的も達成出来ない、でしょ?」
カナコ、ユウゼス、ヤーン、ヨーディがそれぞれ言葉を繋ぐ
「・・・まさか魔王様を倒した貴様等勇者パーティが魔族側に寝返るとはな」
ローバクウが溜息と共に腕を組む
「寝返るだなんて、語呂が悪いわねぇ」
ヤーンが果実を指先で弄びながら口を尖らせる
「まぁでも、間違ってはいないしねぇ~」
ヨーディも果実を頭の上に乗せて遊んでいる
「そうだな。寝返るでは無く目覚めた、というのはどうかな」
ユウゼスが果実を握り、キリリと言い放つ
「・・・言い方はどうでもいいわ」
最後にカナコが果実を掲げる
「この先の目標に進むには魔族になる必要がある。それだけのことよ」
その言葉に全員が含み笑いをする
「・・・ならば、最後にもう一度言っておく」
ローバクウが目を見開き、言葉を発する
「魔樹の果実を人族が取り込むと、猛烈な激痛に襲われる。そして体組織が変化し、魔族になる。だが、激痛に耐えて魔族になるかどうかは五分五分だ」
その言葉を全員が今一度、真剣に聞く
「・・・激痛に耐えられずに魔族になれなかった場合、待っているのは死だ」
ローバクウが全員の顔色を伺う
だが、ここに居る4人の人族の顔には変化が無かった
「解っている。色々、ありがとう」
カナコはそう言うとローバクウに微笑む
「いや・・・我はただ・・・」
ローバクウは魔王の気にかけた人物に、と言いかけた言葉を飲み込む
「では、私が魔族になった暁にはアナタを大将に任命しましょう」
カナコはそう言って笑った
「そいつはいいや!」
ユウゼスが釣られて笑う
「それじゃぁ、私達はぁ・・・四天王とかどうかしら?」
ヤーンが小首を傾げて言う
「カナコが魔王様になるから、3人しかいないよ?」
ヨーディがダメ出しをする
「それじゃ、魔族軍から見繕って4人にすればいいじゃなぁぃ?」
ヤーンが四天王に拘る
「え~~・・・」
ヨーディは不服のようだ
「がっははは!四天王!いいねぇ!それで行こう!」
ユウゼスが大笑いし、ヨーディの頭をぽんぽん叩く
「痛い、痛いよぉ~~う」
ヨーディが大袈裟に痛がる
「でも、いいのぅ?ユウゼス。アナタ、ダンナと子供がいるんじゃ?」
ヤーンが最後に念押しして来た
「ん・・・その件は熟考した。気にするな」
目を瞑り、ユウゼスは言葉を切った
「そうぉ・・・なら、いいわぁ」
ヤーンも最後の念押しをそこで切った
「それじゃ頂くわ。ローバクウ、また後でね」
カナコがそう言うと果実をかじる
「んじゃ、後はよろしく~~」
ヨーディもかじる
「うむ」
ユウゼスもかぶりつく
「ン・・・」
ヤーンがそれを見届けて、果実をかじった
全員が果実を飲み下し、魔樹の果実を体内に取り込んだ
ローバクウはそれを眺めながら考えていた
全員が果実を口にした
この後起こる激痛に耐え抜ければ
全員が魔族になる
そしてそれは
新たな魔王の誕生と
その精鋭なる部下の誕生でもある
「だが、果たして・・・」
ぼそりとローバクウが言葉を出した瞬間
果実を口にした4人は苦しみだした
くわ、とユウゼスは目を見開く
瞑想を終えたのだ
既に魔界に降り立った転生者、拓真には尖兵を送ってある
今頃は尖兵が蹴散らされている頃であろう
その間隙を突き、自身が直接転生者に攻撃を仕掛ける
そういう作戦であった
「出る!」
ユウゼスは一言そう叫ぶと
瞑想していた場所から立ち上がった
目指すは転生者、ただ1人!
「くそっ、数で押してきたか」
拓真は”スモルガー・マークⅡ”のコクピットで悪態をついた
「でもさ、こいつらってそんなに強く無いじゃん」
今日は後部座席にキラッセが座っている
前々回、一緒に来るのをダメ出しされた経緯から
出撃する際に躊躇するのかと思われたのだが
以外にあっさりと付いて来たのだった
それを拓真も、特に気に留める風も無く受け入れた
「こちらの消耗を狙っている様だな」
拓真は小声で呟く
すると
押し寄せていたゴーレムの軍勢が見事に左右に分かれて道筋を作る
その先には
両手斧を構えたユウゼスが走りこんでいた
「転生者ァァァァァッ!!」
怒声を響かせて走りこむユウゼス
その足元から黒い霧の様な物が全身を包み込んでいく
「四天王のユウゼス・・・ヤツもまた・・・」
他の四天王のラーセルス、ヤーンと同じく
身体強化の魔法を使ってきたようだ
あっと言う間に黒い霧に包まれたユウゼスは
巨大化し”スモルガー・マークⅡ”に肉薄する
どぎん
と異音を立てて対峙する両者
「デンゼイジャァァ!!」
くぐもった声を響かせて力押ししてくるユウゼス
「ユウゼス!ダンナと娘の所に戻って来い!」
拓真はユウゼスに関してはその一点だけを気にかけていた
「グガガガ・・・ダ・ン・ナ・・ム・ス・メ・・・!!」
ユウゼスは拓真の呼び掛けに反応し記憶の波を泳ぐ
「かぁちゃ~~ん!!」
「ティピ~!」
よちよち歩きで駆け寄ってくる娘のティピ・レッグを
ユウゼスは膝を落として抱きしめる
その様子を微笑みながら夫のアイゼン・レッグが見つめながら近寄ってくる
「はっは、ユウゼス。薪割りの邪魔だったかな」
夫の言葉を耳に、娘を抱き上げるユウゼス
その顔には汗が光る
「邪魔なもんかよ。娘がこうして来てるのに」
その逞しい上半身はドワーフらしく筋骨隆々だ
「今日は山岳ガイドの仕事が早く終わったんでな」
「そうか。ん~~、ティピ~良い子にしてたか?」
アイゼン・レッグの話もそこそこに、ユウゼスは娘に頬ずりする
「かぁちゃん、良い匂いがする~~」
「ん~~?汗臭いだけだぞ~」
そういいながらもユウゼスは嬉しそうだ
夫のアイゼン・レッグは熊型の獣人だ
ドワーフである自分とのハーフである娘は
どちらかというと獣人寄りだ
だがそれでも自分がお腹を痛めて産んだ子だ
かわいく、そして愛おしい
ははははは・・・
家族3人の明るい笑い声が北の地、ウルトゥラ山脈の裾野に響く
「どうしても、行くのか?」
冬
ウルトゥラ山脈の冬は厳しい
この家、夫のアイゼン・レッグが大岩をくりぬいて作った住居は
夏は涼しく、冬は暖気を逃がさない
その室内の暖炉の光を背に浴びて
ユウゼスは旅支度に身を包んでいた
「あぁ。この世界は救いを求めている。転生者である勇者様には仲間が、手助けが必要だ」
そう言って扉の取っ手に手をかける
「娘を、ティピを置いていってもか」
夫の言葉が胸に突き刺さる
「それは・・・」
一瞬、逡巡するがぐっと荷を持つ手を握り締める
「その娘の為にも、やらねばならぬのだ」
そう言って戸を開ける
猛吹雪だ
風向きの関係で室内には吹き込んで来なかったが
それでも音と風が室内に入り込む
「何故、お前なんだ?俺じゃダメなのか?」
そう言って机を叩く夫、アイゼン・レッグ
それを振り返って笑みを返すユウゼス
「仕方ないさ。お前は只の獣人山岳ガイド。だが」
視線を外に向けるユウゼス
「我はドワーフの戦士だ」
「ガガガ・・・ソウダ・・・ワレ・・ハ」
記憶の波から帰って来たユウゼス
ぐい、と巨大化した身体で武器を押し込む
「センシ、ダッ!!」
がきん、と”スモルガー・マークⅡ”を弾き返す
「うわっ」「きゃ」
拓真とキラッセが声をあげる
弾かれた機体は後方によろける
体制を立て直す前にユウゼスの追撃が当たる
がががん
破損しないまでも凄まじいまでの衝撃が襲い掛かる
マークⅡに強化されてから、破損したのは数える位しかない
拓真は自身のシモベの頑丈さに感謝しつつ前を見据える
「くっ、ユウゼス!」
もはや此方の、ダンナや娘の元には戻って来れないのか?
拓真はそう思いながらユウゼスを迎え撃つ
「ドリル・アタックだ!」
”スモルガー・マークⅡ”の右手が回転し突き出される
その切っ先に貫かれ、ユウゼスの肩が霧散する
「グ、ガァァァァァァッ!!」
悲鳴と共にユウゼスを包んでいた黒い霧が消えていく
みるみる小さくなった黒い霧は
最後に本体の人型に戻ったユウゼスを残した
「ぐ・・・うううう」
抉られた肩口を押さえながら呻いているユウゼス
それを確認した拓真はコックピットから飛び降りる
「タクマッ!?」
「そこを出るなよ、キラッセ!」
飛び降り様、そう叫ぶ拓真
地面に下り立ち、呻くユウゼスに近づく拓真
「ぐ・・・止めを刺せ、転生者ッ」
拓真を見るとユウゼスはそう告げる
それに首を振って答える拓真
「いや。お前には生きて家族の元に戻って貰いたい」
ユウゼスに話しかける拓真
「ふっふ、はははは!何を、今更!」
傷に苦しみながら笑うユウゼス
そこまで会話をすると
攻めて来ていたゴーレム軍団を殲滅し終えた
”ミドルオー”に”ビッグ・ダイン”が近くに着陸してきた
それぞれが残敵に警戒しつつも、機体から降りて来ている
”ミドルオー”からはカイムとケリス
”ビッグ・ダイン”からは騎士団団長サリオ
ミース、セイム、ソーネ、以下10名の騎士団員、ホークアイ
コーディ、ペッスムに配下の部隊員10名
そして
アイゼン・レッグにティピ・レッグ
「かぁちゃん!」
「ユウゼス!」
2人がユウゼスに駆け寄る
呻くユウゼスに抱きつくティピ・レッグ
その様子を全員が見守る
「ユウゼス、これが答えだ」
拓真が声をかける
「お前が過去に何をしようと、魔族になろうと、その絆は無くなってはいないという事だ」
傷ついた肩口を持っていたハンカチの様な物で押さえるティピ・レッグ
それを見つめるユウゼス
更に見守るアイゼン・レッグ
「・・・我は、全てを捨てて魔族になった」
放心したように話し始めるユウゼス
「全てを、捨てたのだ・・・・」
そのまま下を向き嗚咽を始めた
ティピ・レッグはそのユウゼスの頬に手をあてて泣いている
アイゼン・レッグも顔をくしゃくしゃにして泣いていた
その様子を見て女子メンバーが何人か貰い泣きしていた
・・・こういうの、苦手なんだよな
心の中で拓真はそう思いながら空を見上げた
魔界の空は赤い色合いをそのままに
やりきれない思いを表すかのようだった
次回予告!!
四天王の一角、ユウゼス墜ちる!!
その報は魔族軍にどのような影響を与えるのか!?
失地挽回を目指すラーセルスに、鳴りを潜めていたあのキャラが動き出す!
”魔界決戦編 第五試合 魔法合戦”
驚天動地の魔法戦!試合開始!




