旅情編 第十四幕 地下世界
~前回までのあらすじぃ~
図らずも”真龍”オキと対峙することになってしまった拓真達。なんとか誤解を解こうと
”ビッグ・ダイン”を変形させて組み合うが・・・
拓真は”真龍”オキと
噴煙が立ち昇るウルトゥラ山脈の山肌で対峙していた
「くっそぉ、オキぃ!アンタ、このままじゃ噴火して吹っ飛ぶぞ!」
”ビッグ・ダイン”の全体が”真龍”オキとの力比べで軋む
『・・・・・・』
”真龍”オキからは頭の中に響く声は聞こえて来ない
その間にも、山肌の噴煙と地鳴りは激しさを増して行く・・・!
『ウルトゥラ山脈の火山活動開始まで、後10分くらイでス!』
ピグロンがロボットらしく、計算して時間を算出したようだ
「そうか!」
何時もより激しく、答える拓真
「ねぇ、噴火とかしたら皆どうなっちゃうの?」
キラッセが動揺しながら聞いてくる
「一応、火山の溶岩程度じゃ溶けちまう事は無い」
拓真が答える
「だがしかし、周囲への被害は!?」
騎士団団長のサリオが職務ぽく気にしている
「ここいらは何処の国とかにも所属してないんだろう」
拓真が答える
「カカカ・・・寒村地帯とは言え生態系に影響は出るかの?」
獣人ホークアイが種族らしく気にしている
「暖かくなって逆に寒村じゃなくなるかもな」
拓真が答える
「そうなれば開拓が進むな!?」
宰相ペッスムが国の重鎮らしく考えを口にする
「こんな僻地にまで人員を派遣する気があるならな」
拓真が答える
「その前に噴煙が大陸を覆い隠して氷河期とやらが来るんじゃ?」
炎の3騎士のミースが最もな事を聞いてくる
「出来れば噴火を止めたいが」
拓真が答える
「どうやって噴火を止める?」
炎の3騎士のセイムが話を繋げる
「”真龍”がこれ以上暴れなければ何とかなりそうだが」
拓真が答える
「で、まだこの組み合いを続けるの?」
炎の3騎士のソーネが締める
「そんな事は”真龍”野郎に聞いてくれ!!」
さすがに拓真は声を荒げた
その言葉を最後に全員が固唾を呑む
”ビッグ・ダイン”のボディは振動と共に、ぎしぎし軋んでいる
突然、”ビッグ・ダイン”と”真龍”の足元に亀裂が走り
ぼこっという音と共に両者は真下に落下した
「うお」「うわぁ」「キャー」「ひゃー」「きゃぁ」「ひっ」「カーッ」
全員の悲鳴と共に数十メートル近く岩盤の中に落ち込む
岩盤の下に落下した両者は、そのままの態勢で接地した
周囲には真っ赤に溶けた溶岩が川のように流れていた
その流れの中央、中洲のような場所に丁度下り立ったようだ
「っ、溶岩のど真ん中かよ」
拓真がモニター越しに見える映像を見ながら舌打ちする
『どうあっても、火口にある穴に向かうか?』
暫くぶりに”真龍”オキの声が頭の中に響く
「くどいぜ。行かなきゃならない理由があると言ったろう?」
拓真の声に同調し、キラッセやサリオ以下、ホークアイ、ペッスムまでが頷く
『ふむ・・・単なる好奇心からでは無いか』
”真龍”オキはそう答えると力を緩め、手を離した
溶岩の川の真ん中で”ビッグ・ダイン”と”真龍”は向かい合う形になった
「俺達はその穴から”魔界”へ行かなきゃならないのだ」
拓真はようやく対話状態になった”真龍”オキにそう告げる
「その前に、この火山活動を静めたい。手立ては無いか?」
拓真の問いに”真龍”オキは首を上にもたげる
『造作も無い』
そう声を響かせると”真龍”オキは口から冷気を含んだブレスを吐き出した
みるみる溶岩が温度を下げ、色が黒ずんだ物に変わっていく
「うぉ、すげぇな」
しゅうしゅうと音を上げ、溶岩が固まっていく様子を見て全員が感嘆する
”真龍”オキはそのまま冷えた溶岩を踏みしめて奥へと歩いて行く
その様子を見つめていると
『先に火口付近にある我の元住処にて待っておれ』
頭に声が響いてきた
「そうか、このまま地下の溶岩を冷却してくれるのか」
「規格ハズレな行動だ・・・」
「そこが”真龍”たる所以か・・・」
「王者の風格だよね・・・」
「カカカ・・・」
各人がそれぞれ感想を漏らす中、拓真は操縦桿を握りなおす
「それじゃ奴さんの言うとおり、上で待ちますか」
拓真は”ビッグ・ダイン”を飛翔させ、落ちた穴から脱出した
山脈のあちこちから吹き出ていた噴煙は収まりつつあった
地熱の上昇により周囲はすっかり雪が溶けてしまっている
「春到来、か」
その様子を眺めつつ拓真は深く抉れた火口に”ビッグ・ダイン”を着地させた
徐々に噴煙が晴れてくると、気温も下がり始めたようだ
「って、もう冬になるのか・・・」
すっかり噴煙が収まった頃、陥没した穴から”真龍”が飛び出して来た
上空に羽ばたいた”真龍”オキはそのまま此方に接近してくる
”ビッグ・ダイン”より少し離れた所に柔らかく着地する
『さて、落ち着いた所で詳しく話を聞こうか』
”真龍”オキも落ち着いた様で、此方の話を聞いてくれる様だ
「さっきも言ったが俺達は”魔界”を目指している」
拓真がここにきた経緯の説明を始める
『・・・成程、詳細は把握した』
”真龍”オキは暫く拓真の話を聞いていたが全て聞き終わるとそう答える
「ふぅ・・・理解してくれて助かるよ」
『汝等の言う”魔界”と言うのは我の認識では”地下世界”の事だな』
「地下世界?魔界とは、地下にあるのか」
サリオが驚愕した様子で呟く
「それでオキさんよ、そこに向かうにはそこの”穴”から行けるのか?」
『うむ。そこが唯一、地下世界への入り口だったのだ』
”真龍”オキは首をもたげ、火口の奥を見つめる
『遥か昔、我等眷属によって誓いは守られていたと思っていたが』
「魔法の力によって、地下世界の住人が此方の世界に出て来たと?」
拓真が言葉を補完する
『両方の世界の交わりは元々の仕組みが違う故、無理なのだ』
そういや”魔界”の物は此方の人間にとっては毒だったりするからな
と、拓真は思い返す
『今や我等の眷属は数少ない。昔の様に力も無い』
今も十分に規格外ですよ、と全員が思っていた
『転生者タクマと言ったな』
「ん、おう」
『貴殿の案、転移用魔方陣を封じる、という方法確実なのか?』
「あぁ、確実だと思うんだが・・・アレ?」
そこで拓真はようやく肝心な人物
ホビット種のコーディの姿が見えないのに気がついた
「コーディは、何処にいった?」
拓真の問いに全員が顔を見合わせ、首を捻る
「カイム、そっちにコーディが行ってないか?」
拓真は”ミドルオー”に通信を繋げると搭乗者のカイムに問いかける
『いや、こっちにいるのはケリスだけだが』
当然と言えば当然の返事が返ってくる
「ピグロン、船内の探索をしてくれ」
『了解しましタ』
ピグロンが両目をちかちか点灯させる
『ハッケンしましタ。コーディさんは、お風呂場でス』
「風呂?」
『はイ。湯船に仰向けになって浮かんでいまス』
「ちょ、生きてるんだろうな?」
仰向けという事で息は出来ていただろうか?
拓真の心配をよそにピグロンが答える
『どうやら気絶しているようでス』
「一体何してたんだアイツは・・・」
「やー済まない皆の衆!ワシはこの通り、元気ぢゃ!」
「元気ぢゃ!じゃねーよ」
復活したコーディに拓真は突っ込みを入れる
「大体警戒態勢だったはずなのに、なんで風呂場に居たんだ?」
「そ、それはじゃな・・・」
急にしどろもどろになったコーディにピンときた拓真
「・・・コーディさん、もしかしてですが」
サリオが怖い顔で睨んでいる
「これは確信犯ぽいですね・・・」
「今なら証拠がめっちゃ出ると思います・・・」
「お仕置き確定ですね・・・」
3騎士のミース、セイム、ソーネがそれぞれ怖い顔をしている
「あー・・・ピグロン、後で風呂場を点検しといてくれ」
拓真が額を押さえつつ、ピグロンに指示を出す
「や、やめるのじゃ!がんばって、がんばって、がんばったのに!」
何をがんばったのかは知らないが、別の方をがんばれよ!と拓真は思う
「・・・で、コーディ。魔方陣の件なんだが」
肝心の話をコーディに振る
「む、おぉ!魔方陣の封印じゃな。案ずるでない」
急に顔色を良くしたコーディは胸を張る
「魔界にあるはずの移動魔方陣、その大元に封印をかけられれば」
テーブルにばん、と両手を突きポーズをとる
「魔界から移動魔方陣を使う事は出来なくなる!」
にやりと笑うコーディ
「だ、そうだ。”真龍”オキさん」
拓真はモニター越しに”真龍”オキに答える
『承知した。汝等の働きに期待しよう』
頭に声が響く
「なんじゃ?誰の声じゃ?」
コーディだけが事情が飲み込めず、きょろきょろしていた
『この火口を降下していくと、溶岩の海の中にもう一つの火口がある』
”真龍”オキから魔界の穴、地下世界への行き方の再確認だ
『その火口に飛び込み進んでいくのだ』
「了解した。地下世界に着く直前に、反転現象が起きるんだったな」
拓真が教わった事を復唱する
『そうだ。上下が入れ替わる感覚だ。十分に注意するのだ』
「分かったぜ。色々、教えてくれてサンキューな」
『転生者タクマよ。我等眷族に代わりこの偉業を成し遂げる事を期待する』
「あぁ、しっかりと封印してくらぁ」
拓真はそういうと”ビッグ・ダイン”の操縦桿を握り締めた
ロボット・モードのままの”ビッグ・ダイン”は静かに宙に浮く
そのままウルトゥラ山脈の火口へとゆっくり降下を始める
「アイゼンレッグ、いいのかこのまま俺達と一緒で?」
新たな乗組員となったアイゼンレッグに拓真は話しかける
「あぁ。このまま上の世界にいるよりは。それに」
側にいるティピレッグの頭を優しく撫でる
「なんとしてもアイツ・・・ユウゼスを連れ戻す為にな」
やさしく微笑むアイゼンレッグに、微笑み返す娘のティピレッグ
「・・・何度も話したが最悪の場合もあるぞ」
「その時は・・・俺が・・・」
そう言って拳を握り締めるアイゼンレッグ
拓真は”真龍”オキの言葉を思い返す
『本来なら交わってはならぬ二つの世界。遥か昔に我等眷属が全てをかけて二つの世界の交わりを断ち切った。それ以降お互いの不可侵を守る為、唯一の接点であるこの”穴”を見守り続けてきた。だが、時の流れはそれを飛び越える為の手立てを魔法の力で生み出した様だ。魔法の力で生み出された物は魔法の力でしか消す事が出来ぬ。転生者タクマよ、遥か昔に立てた我等眷属の誓いを我等に代わって果たしてくれ』
「元よりその為にここまで来たのだからな」
拓真は呟くとモニターに映る映像を見る
「コーディ!確認だが、魔界の魔方陣を封印すれば、魔族の連中は移動魔法を使えなくなるんだな?」
拓真は”ビッグ・ダイン”を操作しながらコーディに再確認する
「うむ。古の古書の情報と照らし合わせた結果じゃ。魔界に構築された移動魔方陣の封印を行えば魔力の流れが断ち切られ、移動魔方を有する個人でも、上の世界、人間界に移動魔方陣を展開する事は不可能になるのじゃ」
「それを聞いて安心したぜ」
拓真は首を少しだけか傾けると全員の方を振り返る
「皆、覚悟はいいな!魔界へ行くぜ!」
「おう」「はい」「了解」「行こう」「あぁ」「オッケー」「うむ」「カカッ」
それぞれがそれぞれの言葉で返事をする
目指すは地下世界、別名”魔界”
次回予告ゥ ついに魔界へと降り立った拓真達一行
待ち受けるは魔族四天王、魔族大将、副将、そして魔王
”旅情編 第十五幕 約束の地”
旅情編完結にて、お会い致しましょう




