旅情編 第十二幕 山脈の主
~前回までのあらすじぃ~
エルフの都を後にした拓真達一行は魔力反応の大きい北の地へと進路を取った。最北の地ウルトゥラ山脈の頂上に目指す目的地があると睨み、情報収集の為に立ち寄った小屋で熊型の獣人アイゼンレッグに話を聞くのだが・・・
「うー・・・さむっ!」
ウルトゥラ山脈の山肌に吹きすさぶ風は、容赦なく頬に突き刺さる
獣人アイゼンレッグと会談して翌日
拓真とホークアイ、キラッセ、サリオの選抜メンバーは
アイゼンレッグの案内で山登りをしていた
「後、どれ位かかるんだい?」
拓真が先頭を歩くアイゼンレッグに尋ねる
「そうだな・・・後2~3時間と言った所か」
「ひぇ~、やっぱ留守番しとけばよかったぁ」
素っ頓狂な声を上げたのはキラッセだ
「行きたいって言ったのは自分からだぞ。頑張れ!」
はっぱをかけるのは騎士団団長サリオだ
「カカカ・・・いざとなればワシが抱えて飛んで帰って進ぜよう」
ホークアイが自慢の翼を収納している背中を指差す
「べー、それだけは勘弁ー」
「カッ!?な、なぜ・・・・」
折角のホークアイの申し出を断るキラッセ
断り方ってのがあると思うんだが・・・
最後尾からはもくもくとアイゼンレッグの娘、ティピレッグが付いて来ている
年の頃は13,14歳位だろうか。キラッセよりも幼く見える
「アイゼンレッグ、彼女は平気なのか?」
拓真は最後尾のティピレッグが気になって聞いた
「問題無い。かれこれ5年は一緒に山に登っている」
「そうか」
振り返って見ていると目があった
ぺこりとお辞儀された
なんとなく照れ臭くなって前を向く
拓真は照れ臭さを忘れようと昨日の話を思い出していた
アイゼンレッグの話ではこのウルトゥラ山脈にある大穴
通称”悪魔の穴”、”魔界の穴”とも呼ばれている場所に向かうには
一度、登山をして現地を見た方がいいと説明を受けた
拓真のシモベ、”ビッグ・ダイン”で一足飛びに向かおうとしたのだが
強く止められたのである
理由は視界が悪い事、そしてもう一つ・・・
穴の中が”フロストドラゴン”、寒冷地に住む”真龍”の住処だからだという
この穴に潜む”フロストドラゴン”
拓真が戦った魔族のドラゴンなんぞとは全くの別種で
”真龍”の名を冠しているだけあり、大きさも半端ではないらしく
全長はなんと300mを超えるらしい。おまけに翼を有し、空を飛ぶというのだ
ワイバーンなんぞカワイイものだという
そんな訳でこの山脈の主である真龍を刺激しないように
まずは様子見という運びになったのだった
「とは言えさすがに後2~3時間というのはきついな」
拓真が後列のキラッセやサリオを見て息をつく
キラッセは多少バテ気味で、サリオも口数は少ない
ホークアイは獣人だからか?あまり気にしていないようだが
「先は長い。休憩はこまめに取るが、キツくなったら早めに申告してくれ」
アイゼンレッグが山岳ガイドよろしく細やかな配慮を見せる
「了解」「分かったわ」「んー」「カカカ」
拓真、サリオ、キラッセ、ホークアイがそれぞれ返事をした
一部返事じゃないが・・・
目指す山頂はまだまだ遠い
何度目かの休憩の後、アイゼンレッグが不意に立ち上がった
「どうした?」
皆がゼイゼイ言う中、拓真が声をかける
「・・・様子がおかしい」
「なんの?」
「・・・山の上だ。妙に騒がしい。こんな事は初めてだ」
間近に見えてきた山頂を睨み、険しい表情をするアイゼンレッグ
「上の様子は霞がかかってよく見えないが・・・」
拓真は目を凝らして山頂を凝視する
「あぁ、そうそう。ピグロンからこんなの預かってきたんだ」
急にサリオが背中に背負ったバッグから何やら取り出す
「お、そいつぁ双眼鏡か?」
双眼鏡と言っても中々にSFチックな見てくれだ
「・・・なんか色々付いてそうなやつだな」
受け取った拓真が色々いじる
「赤外線に暗視モード、温度センサーなんてモードもあんのか」
もはや何でもアリだな、と考えつつ双眼鏡を覗き込む
「・・・アイゼンレッグ、山頂で結構な熱量が観測出来たんだが・・・」
「熱量を持っているのは”真龍”だけだぞ」
「穴からの熱量とかは無いのか?」
「ウルトゥラ山脈は休火山だ。熱量があるとしたらマズイぞ」
「・・・噴火の兆候と言うわけじゃなさそうだ」
拓真は更に双眼鏡を調節し、詳細を調べる
中の画面に熱量の細かな位置や形状が映し出されていく
「・・・どうやらお客さんのようだな」
「お客さん?」
「あぁ。俺達以外にこの登山にチャレンジしてる奴等がいるようだ」
双眼鏡の画面には数名分の人型が映し出されて移動していた
「何者だ?」
「さぁて、そいつは行って見なきゃ分からんな」
ほぼ拓真とアイゼンレッグの会話だけであったが
他の皆はすでに移動の準備を始めていた
「行こうタクマ。準備はいいぞ」
サリオ以下、キラッセ、ホークアイは立ち上がって頷く
「オーケー。そんじゃお客さんに挨拶に行こうか」
拓真がそう言って出発を促す
その目の前にアイゼンレッグの太い腕が突き出される
「なんだ?」
止められた格好になった拓真が問う
「その、お客さんとやらだが・・・心当たりがあるのか?」
「あぁ。恐らくだが魔族の連中だと思う」
「魔族・・・」
「うむ。行く先々で出っくわすんでね。今回もその目算が高い」
拓真がちょっと身震いをする
「本気でお祓いするか、どこかにGPSの存在を疑うぜ」
「じーぴーえす・・・?」
「こっちの話よ、気にせんでな!」
そう言ってアイゼンレッグの肩をぽん、と叩くと拓真は歩き始める
「・・・それにしても魔族がここになんの用だ?」
拓真は脳裏に湧き上がる疑問に答えが出せなかった
切り立った岩肌に横穴が開いているのが見える
「・・・あの穴は?」
「山頂の大穴に続く細道だ。細道と言っても中は広い。待ち伏せとかにも使える」
「待ち伏せ、ね。気をつけましょう」
横穴を伺っていた拓真達だったが
じっとしてても仕方ないので横穴に向かう事にする
「タクマ・・・」
キラッセが不安そうに聞いてくるので、その頭をぽんぽんする
「そう不安な顔すんな。さっき無線で”ミドルオー”の待機を頼んでおいた」
「呼ぶの?」
「ん、相手の出方次第だな」
拓真はそう言うとサリオとホークアイに向かって頷く
「私も何時でもいいぞ」
「カカカ・・・ではワシも臨戦態勢に」
2人とも何時の間にか取り出した剣と槍を構える
一行は横穴に向けて慎重に歩を進める
横穴の中は以外に広く、明るかった
「明るいな」
「ヒカリ苔という寒冷地に群生する苔が生えているのだ」
「へぇ。是非、御家庭に用意しときたいね?」
軽口を叩きつつ中に進む拓真
がしん
一行が中に入りきると同時に地面の岩肌に何かを叩き付ける音が響く
「来おったな、転生者!」
横穴の中、丁度正面の奥へと続く道を塞ぐ様に立つ人物
「魔族四天王のユウゼス、か」
元ドワーフ族だけあってがっしりとした身体に強そうな鎧を纏っている
その両手には新調したと思われる真新しい両手斧が光る
先程の音はその武器を床に叩き付けた音らしい
「ここからは一歩も進ませぬ!」
そう言うが両手斧を構える
「ちぇ、やっぱそう来るか!」
此方もサリオとホークアイが武器を構える
「・・・お前さんだけか?お仲間はどうした?」
先程の双眼鏡で確認した人型は少なくても数名は確認出来た
だが目の前にいるのはユウゼスただ1人
「ふ・・・答える道理は、無い!」
構えた武器を振り下ろすユウゼス
拓真に当たるかと思われた瞬間に、サリオとホークアイの武器がそれを遮る
がちん
せめぎ合う3者の武器
「・・・ユウゼス・・・?」
アイゼンレッグがその名前を口にして前に出て来た
「おい、あぶな・・・」
拓真が制止しようとするが、アイゼンレッグは構わず前に出る
「どうしてお前が・・・その姿は一体・・・」
「え?知り合い・・・?」
拓真が困惑する。他のメンバーも同様だ
「・・・おかぁ・・・ちゃん・・・」
あまり言葉を発さないティピレッグが後ろから歩み寄る
「え?」「え?」「え?」「カ?」
突然の台詞にその場の拓真達一行は固まる
「・・・アイゼンレッグか。久しいな」
ユウゼスはちらりとアイゼンレッグを睨む
「お前、勇者様のお供をすると言ってここを出て行ってから・・・」
アイゼンレッグはわなわなと震えている
ティピレッグは涙目だ
「ふん・・・過ぎた話だ。我は全てを捨てたのだ!」
「娘、娘は、ティピは12歳になったぞ!」
あ、12歳だったのか。思ったよりも幼かった
拓真は頭の中で予想が外れてがっかりした
が、それよりも衝撃の事実
「ユウゼス、お前・・・人妻だったのか!?」
「前にも言った筈だ。我は”おんな”だとなぁ!!」
拓真の驚愕の台詞を物ともせず、ユウゼスはサリオとホークアイの武器を弾く
「ちょっと待て!色々と聞きたい事が増えちまった!どうしよう!?」
拓真が思わず叫ぶ
「聞く耳も、話す事も、無い!!!」
ユウゼスは構わず両手斧をぶん回してくる
「っく!」「ッカァ!」
武器を構えていたサリオとホークアイが応戦する
きぃん かいん かぁん
金属の甲高い音が響く中、拓真はアイゼンレッグとティピレッグを下がらせる
「どういう事だ!?簡潔に詳しく教えてくれ」
難しい事をアイゼンレッグに聞く拓真
ティピレッグはキラッセが押しとどめている
剣劇を続けるユウゼスを見やったアイゼンレッグは口を開く
「ユウゼスは俺の妻だ。娘のティピはドワーフと獣人の混血だ」
「マジか・・・」
「勇者様と旅をするからと此処を離れて、音信不通になったのだ」
そういうと拳を握り締める
「それが・・・あんな姿に・・・魔族になっているなんてッ」
あんなごっつい女を妻にするアンタがすげぇと
心の中で思う拓真であったが、それは胸の内にしまって置こうと思った
ずずずずず
突然、山脈全体を揺るがす振動が襲ってくる
「うお」「何?」「なんだ!」「きゃ!」
突然足元が揺るぎだし、ろくに立っても居られなくなる
「くくく・・・ふはははは!」
突然笑い出すユウゼス
「何がおかしい!?」
拓真はその態度を確かめようとユウゼスに問いただす
「くくく・・・我が此処に来た理由を知りたがっていたな?」
「・・・ま、まさか」
アイゼンレッグがその言葉に反応する
「察しがいいな、アイゼンレッグ。さすが我が夫に選んだだけはある」
「馬鹿な!そんな事をしたらこの山脈が、いや世界が滅ぶぞ!?」
アイゼンレッグがユウゼスに向かって叫ぶ
「くははは・・・!我はすでに魔族なり。この世界がどうなろうと関係無い!!」
「なっ!?」
「おかぁちゃん!!」
アイゼンレッグの驚愕の声に、娘のティピも思わず叫んでいた
「どういうことだ!?」
完全に後手に回ってしまい、成り行きを見守るしかない拓真がかろうじて尋ねる
「この山脈に住まう”真龍”、きゃつを叩き起こしたのだ!」
「何!」
「間もなくこの山は崩れ去り、怒り狂った”真龍”は勢いで世界を滅ぼしてくれるだろう!」
両手斧を構え、声高に笑うユウゼスを拓真は複雑な表情で見つめる
「くそっ、みんな!外に出ろっ!!」
崩れ始める横穴に危険を感じた拓真は全員に逃げるように指示する
「くくく・・・あーっははははははは!」
崩れ落ちる横穴の背後からユウゼスの笑い声だけが響く
外に出た拓真達は辺りに響く咆哮に視線を向ける
見ると、山脈上空に羽ばたく”真龍”が見える
羽ばたきで山脈の霞が吹き飛んで、周りの視界がクリアーになっている
「でかい・・・・」
遠目からでもその巨大さと鮮烈な印象を目に写す”真龍”
ごああああああああああああ
その”真龍”が、ひと鳴きすると口から青白い塊を吐き出した
どっごおおおおおおおおおおおおおおん
爆音を響かせて山肌にぶつかった塊は山脈を削り形を変えてしまった
ぐあっぐああああああああああああああ
耳をつんざくような咆哮をあげて羽ばたく”真龍”を見る拓真は
一気に増えたしがらみに、困惑するしかなかった
次回予告ゥ 四天王ユウゼスは”人妻”で”真龍”を怒らせ、世界を滅ぼそうとしていた!?それを止めるべく拓真は”ビッグ・ダイン”をロボット・モードに変形させて”真龍”と対峙する。果たして世界は守れるのか?頑張れ拓真、未来は君の手にかかっている!・・・”旅情編 第十三幕 世界の終わり” でお会い致しましょう




