旅情編 第九幕 勝利を我が手に
~前回までのあらすじぃ~
景品となった魔法スクロールを取り戻す為、”チャリオットレース”に参加する事になった拓真達。レース前に謎の刺客に襲われたりしてキナ臭い匂いがする中、ついにレースはスタートする・・・
「イーーーヤッハーーーーッ!!!」
独特の掛け声と共に馬を操り引かせた”戦車”を走らせる
拓真の横に並んだ4名の騎手はそうして巧みにレースを支配する
「いーーーやっはぁーーー!!」
拓真も真似て声を出し馬を走らせる。最も引かせる”戦車”は偽物
自走する”スモルガー・マークⅡ”なので馬に負担は殆ど無い
あっと言う間に4台をごぼう抜きしてトップに躍り出る
「きゃーー!タクマーーーッ!!」
戦車の詰め所でもあるピットインもどきの待機所ではキラッセが奇声を上げている
騎士団長サリオ以下、3騎士のミース、セイム、ソーネもきゃあきゃあ言っている
もちろん客席も大盛り上がり、大騒ぎだ
何せぽっと出の参加者である拓真があっと言う間にトップに立ったのだ
賭け事も成立しているこのレース、騒がない方がおかしい
「こらーー!」「ぼけーー!」「あほぉーー!」「しねぇーーー!」
客席からは物騒な声援しか聞こえない
直線が終わり、カーブにさしかかる
「とっとっと・・・!!」
不慣れな拓真はそこで少しもたついてしまい、後続の4名に抜かれてしまった
何せ自走する”スモルガー・マークⅡ”を操りながら馬も操作するのだ
馬に負担をかけずしかも見た目不自然にならない様にと、かなり気を使う
「ハーッハハハハハハーーッ!!!」
追い抜き様に相手の騎手が馬鹿にした笑いを残していく
「ちぇ、こっちの苦労も知らないでっと・・・!」
立て直した拓真は直線で加速し、またも4名を抜き去る
「だーーーっはははははははは!!!」
拓真も追い抜く時、馬鹿にした笑いを残していく。結構大人気ない
だが、またもカーブでもたついてしまい抜かれてしまう
「ヒャーーーーッハハハハハハハハッゲホゲホゲホ!!!」
追い抜き様に声を出しすぎたのか、むせながら笑い声を残していく
「くそー、やっぱカーブは難しいぜぇ~~~~!」
楕円形の競技場なので1週に付き必ずカーブが2回来る
カーブが下手な拓真は、そこがポイントになりそうだ
2週目に入り段々コツが掴めて来た拓真
前を走る4人も順位が分かれてきて若干遅れ気味になる戦車もいる
「よっし、まずはこいつらぶっこ抜きだ!」
馬の手綱をぱん、と張ると直線を加速していく
まず1人目、追い抜く!
「くっそーーー、このままじゃ故郷に帰って結婚できねぇーー!」
お前さんはその方が幸せかもよ?そう思いながら抜き去る
ついで2人目、追い抜く!
「ぐぁーーーっ、俺が身の程を教えられたーーッ!!」
はいはい、ズルしてます、ズルしてます、気にしないで!
そして並んで走る前3人目と4人目!!
「む・・・・!?」
並んで走っていた2人が左右に分かれて真ん中を空けた
誘っているな・・・・!
恐らく共謀して拓真を挟み込み、落車もしくは戦車の破壊を狙っているようだ
「やれるもんなら、やってみやがれ!」
拓真は更に加速して間に突っ込んでいく
案の定、間に入って並ぶと左右から笑い声が飛ぶ
「ハッハーーッ!くたばれぇーーーッ!!」
「ハーーーッ!!しねぇーーーい!!」
そう言うや否や、左右の戦車が幅寄せしてくる
よく見ると戦車の車輪の軸受けに尖った槍の先っぽが付いている
成る程成る程、この槍の先っぽで相手の戦車を破壊するのね
・・・でもそれはキミタチの戦車同士の話さ
拓真は取り合えずされるがままにしてみた
回転する刃が、がりがりと”スモルガー・マークⅡ”のボディに当たるが
異世界超金属で出来たボディには効果が無い
あっと言う間に槍の穂先はへし折れ、逆に自分の車輪に絡まり自壊してしまった!
ばきばきん
異音と共に車輪が砕け散り、バランスを失った戦車は地面に擦れる
「あぁーーーーーーッ!!」
地面に擦れた戦車は馬に引かれてスピードもついている為
接地した部分から弾け飛んで宙を舞う
飛ばされた騎手は戦車から放り出され地面に叩き付けられた
「ひぃッ」
その惨状を見たもう片方の戦車の騎手は操作を誤り
バランスを崩して落車してしまった
「ぐ・・・・お・・・」
落車した騎手の後ろから、身の程を教えられた騎手の戦車が突っ込んでくる
「ぐぎゃぁぁーーーーーッ!!!!」
悲鳴と共に馬と戦車に轢かれた騎手の声が響き渡る
競技場は大歓声だ
「ひっ」「つっ」「ぬ」「ふっ」「!」
ピットインもどきに詰めていたキラッセ達も、その惨状に眼を背ける
「・・・・墓場になったのは・・・・俺の・・・方だったか・・・」
ほぼ致命傷だった轢かれた騎手は、そう呟くと絶命した
事故が起きた後もそのままレースは続けられ
操作に慣れた拓真が圧倒的な強さで10週の周回を回りきり、一回戦を勝ち抜いた
どおん
ゴールインしたと同時に花火が打ち上げられ、第一レースの終了が告げられる
観客の歓声が響く中、ピットインもどきに戻った拓真にキラッセが抱きつく
「タクマ・・・・」
「あぁ・・・大丈夫だ、大丈夫・・・」
キラッセの頭を撫でながら拓真はそう囁いた
さすがにキラッセには先程の事故は刺激が強すぎたようだ
「タクマ・・・戻った所申し訳ない。次のレースは2時間後だ、気を抜くな」
サリオが拓真に気を引き締めるように諭す
「分かってる、分かってるよ・・・」
そう言うと一旦”スモルガー・マークⅡ”から降りて自分の待機スペースに向かう
用意してあったイスに座ると総監督のペッスムが横に来て話しかけてきた
「タクマ、レース中も情報を集めてたのだが面白い事が分かったぞ」
「なんだ、それは?」
「昨日お前さんを襲った人物、そのスポンサーが分かった」
「ほぅ、随分簡単に割り出せたな。何者だ?」
ペッスムからの情報に拓真も身を乗り出す
「”魔法省”と敵対している省庁があってな。なんとこの都の”防衛省”だ」
「なんだって?」
「本来なら密接な関係を持たねばならぬ両者だが、防衛省のトップに立った人物がエラく野心的な男らしくてな」
「野心的な男、ね・・・ペッスム、耳が痛いだろう?」
「ぬぐ・・・それを言うな・・・兎も角、そいつの名前が・・・」
拓真がからかい気味に言うとペッスムも少し堅い表情になる
「あぁ、丁度向こうからやって来たぞ」
その言葉に拓真がペッスムの視線の先を見ると
「やぁやぁ、始めまして!先程のレース、素晴らしかったですぞ!」
やたら恰幅の良い、エルフにしてはスマートじゃない
でっぷり太った”ビアダル”がこちらに話しかけてくる
「あぁ、有難う。申し訳ないがアナタは?」
拓真が礼を述べてその”ビアダル”に名前を尋ねる
「んほぉ、ワシか?ワシを知らんとは・・ほっほっほ・・・」
笑っているが目がマジだ
「防衛省の事務次官”ダール”さん、ですよね」
背後から声がかかる
振り向くと魔法省事務次官のマーナとホビットのコーディが並んでいた
「これはこれは、魔法省の事務次官殿。随分と腕のいい騎手を連れて来たようで」
ダールと呼ばれた恰幅の良いエルフは腹をゆすって笑い出す
拓真はあやうく吹き出しそうになるのを堪えながら目線をマーナに向ける
マーナはここは任せて、という視線を拓真に送るとダールに向けて話し出す
「いえいえ。こちらも財政難とはいえ、魔法スクロールを売却しましたでしょう?」
「ほぉほぉ、そう言うこともありましたなぁ!」
ダールがマーナを煽る。それをぐっと堪えてマーナが話す
「魔法省としましても、手を尽くさない訳には参りませんでしょう?」
「成る程成る程、それで・・・」
「残念ですがこのレース、私のチームが優勝させて頂きます!」
ダールにぴしゃりと言い放ってやった
「防衛省も、いえ、ダールさん個人で出資なさっているチームでしたか?負けませんよ?」
「・・・・ほぉ・・・」
マーナとダールの間に目に見えない結界が展開されているようだ
火花も見える・・・気がする
「まぁ、精々頑張る事ですなぁ!決勝まで来る事が出来たらばですがねぇ!」
ダールは話をそこで切ると、ぶわぁはははと笑いながら去って行った
「・・・一応聞いておくが、アレもエルフ、なんだよ、な?」
拓真がダールを見送った後、マーナに確認する
「えぇ・・・彼が防衛省の事務次官を努めるダール・・・正真正銘、エルフ種ですわ」
マーナが溜息混じりにそう答える
「そうか。俺、エルフについての認識を改めなければならんかも知れん」
拓真はそう呟くと見えなくなったダールを目線で追いかけた
「でぇぇぇい、あの女狐めがぁ!!」
貴賓室に設けられた私室に戻ったダールはそう怒鳴るとテーブルを蹴散らす
お付の召使はその行為にビクっとなる
「今までっ散々っ追い詰めてっ来たのにっまぁだっ歯向かうかぁっ!!」
テーブルだけでは飽き足らず、そこら中の家具や小物を蹴散らして暴れる
散々暴れ散らかした後、私室の中は滅茶苦茶になっていた
「んふー・・今回の優勝景品の魔法のスクロール・・・あれは絶対手に入れねば!」
目をぎらつかせ、怒りを隠さない
「んふー・・その為には今回のレース絶対に優勝せねば!」
そう言うと唯一ひっくり返らなかったソファーにどっかと座る
「はぁふぅー・・・それにはあの戦車と騎手を何とかせねばのぉ・・・」
そこへ声がかかる
「ダール様」
「なんだぁ!・・・・・”影”か」
ダールは声のした方向を見もせずそう答える
「我が方のチームは初戦を突破。魔法省のチームとは決勝で当たる事になりました」
影と呼ばれた男はカーテンの陰に隠れていた
「ふぅー・・・そうか」
ダールは大きく息を整えるとニヤリと笑う
「そうでなくてはな!そうだ・・・アレを試す良い機会ではないか」
その目に暗い炎を燃やすとダールはソファーにふんぞり返る
「承知致しました。ではそのように手配致します」
影はそんなダールの意図を汲んだのか、そう答えると煙のように居なくなった
「くっふふふふふふ・・・楽しみよのぉ!」
「すっごい!タクマ、次が決勝だよ!」
2時間後に行われたレースを終えて戻った拓真にキラッセが興奮して話す
「あぁ。これでさっきの”ビアダル”のチームとも当たるわけだな」
”スモルガー・マークⅡ”から降りた拓真はそう言いながらヘルメットを脱ぐ
どうやら一戦目のレース事故の影響はキラッセには無いようだ
「タクマ、あそこを見て」
サリオが横から拓真にその方向に目を向けるように話す
「ん・・・?」
そちらを見ると今までの戦車よりも煌びやかな戦車が一台、目に付く
どうやら防衛省チームの戦車の様だ
「タクマ、その戦車の向こう・・・馬の方だ」
言われてそちらを見ると引いている馬が騎馬並みに重装備をしていた
「あれは・・・馬に刃をつけているのか?」
「その様だ。タクマ、決勝では馬をやられない様に気をつけてくれ」
日の光を浴びてギラリと光る刃付きの装備を見て拓真は呟く
「あぁ・・・気をつけるさ」
決勝レースはまた血の雨が降る予感がするな、と考える拓真であった
次回予告ゥ 決勝レースにコマを進めた拓真達。目指す優勝まで後一歩。だが、それを妨害するべく防衛省のダールの魔の手が伸びる。果たして拓真達は無事に優勝し、魔法スクロールを手にする事が出来るのであろうか?・・・”旅情編 第十幕 勝者と敗者” でお会い致しましょう




