旅情編 第六幕 エルフっていうけどさ
~前回までのあらすじぃ~
ホビットの長老コーディから”移動魔方陣”のスクロールを見せられた拓真達は
他に必要な存在「エルフって知っとるか?」と聞かれたのだが・・・
「エルフ、か・・・」
拓真は頭の中で古今東西、語り尽くされた感のあるエルフ像を思い浮かべていた
一口にエルフといっても、今では種族名ってだけで何でもありの様相だ
耳のとがった、ナイスバディ、もしくはスレンダーな美女を思い浮かべてもやもやしてみた
そう言えば四天王の1人”ヤーン”もエルフだったけ?と思い出す
「そのエルフが”移動魔方陣”を封じる魔法を知っていると?」
騎士団長のサリオが長老のコーディに問いただす
拓真の妄想はそこで終わった
「エルフの住む”エルフの都”に行けばおのずと道は開ける」
コーディはそう言うと出口に向かって歩き出す
「タクマよ、そのスクロールは預ける。後は向こうに行ってからじゃ」
「いいのか、貴重なものなんだろ?」
拓真が机の上のスクロールを手にとってコーディと副長老のムーディを見る
「好いも悪いも、それが目的じゃろう?」
「長老がそうおっしゃってますからね」
2人ともオーケーみたいだ
「そうと決まれば”エルフの都”に向かうぞい!」
コーディは威勢よく出口から出て行ってしまった
拓真はスクロールをSFチックな胸当ての一部をぱこんと開くとその中に収納する
「そんじゃまぁ、その”エルフの都”ってとこに行って見ますかぁ」
全員に声をかけて部屋を後にする
「・・・アレ、開けっ放しだ」
最後尾になったキラッセが開けっ放しだった金庫に目が行く
なんとなく、近づいて中を見る
沢山のスクロールが並ぶ中、その内の一本に目が留まる
手にとってみるが、字が読めなくて何のスクロールか解らない
「キラッセー、いくぞー」
拓真が部屋の外から声をかけてきた
「うーん、いまいくー!」
部屋を出たキラッセだがスクロールを持って来てしまった事に気が付いた
「あ・・・・・・・・・・・・・ま、いっか」
キラッセは拓真と同じく胸当てをぱこんと開くとその中にスクロールを収納した
階段を駆け上がるとムーディが戻って来た
「いかんいかん、金庫と扉が・・・」
すれ違ったキラッセだがスクロールを一本ちょろまかした事は内緒だった
ぺろっと舌を出したキラッセ
・・・後にこの事が大きな出来事に関わってくるのだが・・・
広場に戻ると着陸待機していた”ミドルオー”の前にカイムとケリスが待っていた
「戻ったかタクマ」
カイムが声をかけてくる。隣には微笑みを浮かべたケリス。うん、リア充だな
「待たせてスマンな。これから”エルフの都”を目指す事になった」
拓真が2人に声をかけると
「了解だ。”ビッグ・ダイン”もすぐ上まで移動して来ている。直ぐにでも行こう」
カイムが上を指差すと上空に待機している”ビッグ・ダイン”が見える
「おぅ、手回しがいいな。それじゃ行こうか」
拓真が通信機に手をかけて連絡を取る
「あぁ、忘れてた」
拓真が振り返り、コーディとムーディに向き合う
「コーディは一緒に行くのかい?」
「無論じゃ」
コーディは胸を張って言う
「私は残ります」
ムーディはそう言うと軽くお辞儀をした
「そっか。そしたら世話になったな。また機会があれば寄らせて貰うよ」
右手を差し出し、ムーディと握手を交わす
「御武運を」
全員が広場の中央に固まると、拓真が合図を送る
”ビッグ・ダイン”からトラクター・ビームが照射されて拓真達が吸い込まれていく
眼下では他のホビット達がこちらを見ながら手を振っていた
「ホビット種か・・・」
拓真が感慨深げに呟く
「なぁ、何時かまたさ、此処にこようぜ?皆でさ」
キラッセが全員に明るくそう告げる
その言葉にサリオ、3騎士のミース、セイム、ソーネ、獣人ホークアイの全員が頷く
『俺達も忘れてもらっちゃ困るぜ』
スピーカーマイクから外を飛翔する”ミドルオー”のカイムから声が聞こえる
「もちろんだよ、全員でさ!」
外の”ミドルオー”に向かって手を振るキラッセ
それに呼応するかのように”ミドルオー”は機首を振るとそのまま上昇していった
”ビッグ・ダイン”の格納庫に収まる為に
「全員でさ・・・」
呟くキラッセを拓真が優しい眼差しで見つめる
短い間だったがそうしてホビットの集落を後にする拓真達であった
「”エルフの都”まで1日か。結構距離があるのだな」
カイムと拓真、ホークアイと新たに加わったコーディが並んで歩く
「コーディ、さっきの説明通りの場所で間違いないんだろう?」
拓真がコーディに確認する
「なんじゃ、疑っとるのか。ワシの記憶に間違いはないぞ」
コーディが反論する
「疑ってる訳じゃないんだがな」
拓真がそう答えるのと目的の施設に着くのが同時だった
「なんじゃここは?」
「コーディは初めてだろうけど、ここは”ビッグ・ダイン”の温泉施設なんだ」
拓真が連れて来たのは”ビッグ・ダイン”にある遊興設備の一つ、温泉施設だ
「目的地まで時間もあるし、なにより汗もかいたし」
「カカカ・・・コーディ殿。ここの施設は素晴らしいですぞ」
拓真の説明にホークアイも同調する。実はお気に入りらしいのだ
「異世界でも漢同士の裸の付き合い、ってのも大事だろうってね?」
拓真はそう言うと温泉施設の入り口をくぐる
「オトコ同士の裸体を見せられてものう・・・」
「まぁまぁ、入った入った」
コーディは渋ったがカイムに背中を押されて施設に入っていった
かぽーん
お決まりの大浴場でのヒトコマ。それぞれが思い思いに湯船に浸かっている
「異世界でも大浴場ってのが通用するのか不安だったんだが、問題無い様だな」
「異世界と言われてもピンとこないが・・・」
「カカカ・・・別に風呂文化が無い訳では御座らんよ」
拓真とカイム、ホークアイが湯船で会話をする
「あー、そうそう。エルフって言うのはどんな奴等なんだ?」
拓真が考えていた事を口に出す
「カカカ・・・エルフというのは頭も切れるし身体能力も高い。意外と思うかも知れんが、武芸者も多数おる種じゃ」
「へぇ・・・武芸者つうと四天王の”ヤーン”みたいな?」
「カカカ・・・そうじゃの。あやつはエルフの中でも変わり者での。各地を武者修行して回っていたそうじゃ」
「あぁ、ペッスムから聞いたな。放浪の格闘家、だったけか」
拓真とホークアイがエルフ談義に花を咲かせていると
横からコーディが湯船に飛び込んできた
どっぽん
「わ」「カカっぷ」「ぬあ」
とばっちりでカイムにも飛沫が跳ね上がる
「ぷあ!ワシぢゃ、驚いたか!!」
飛び込んだ湯船から元気よく顔を出したコーディ
「驚くも何も・・・順応はえぇな!」
拓真がコーディに抗議する
それを軽く受け流して湯船の中をすぃーと泳ぐコーディ
「全く・・・300歳のジイさんにゃ見えんな」
その様子を見て拓真が呆れる
「うーむ、ワシもこの大浴場、気に入ったぞ!実に良い!」
平泳ぎから背面泳ぎに切り替えながらすいすい湯船を泳ぐコーディ
「そうかそうか、そりゃぁ何より。招待した甲斐があったってもんだ」
その姿を見ながら汗を拭う拓真
「さっきの話の続きじゃがの・・・エルフの事じゃ」
コーディが泳ぎながら話し出す
「格闘家や武道家ばかりじゃないんじゃぞ、エルフっていうのは」
そう言うと湯船の奥に設置されている岩肌のオブジェにたどり着く
そこに登り、腰掛ながらコーディは一息つく
「頭も良い。ホビット種に負けない魔法使いも多く排出しておるのじゃ」
「文武両道か。優秀だな。そんで上背もあると」
「そこじゃ。ホビットとエルフの違い。奴等は長命の上に、でかいのじゃ」
コーディが拓真の呟きに反応する
「悔しいのう・・・ワシら上背さえあればのう・・・」
その様子を見て小さいのを気にしてたのか、と思う拓真達であった
「きゃーやっぱひろーい!」
突然、お約束の女子の声が響く
この”ビッグ・ダイン”の温泉施設も数多の例に漏れず、男女併設であるのだ
当然、仕切りはあるがその向こうは女子風呂である。仕切りはあるが・・・
「タクマよ・・・この塀の向こうはもしかすると・・・?」
低い声色でコーディが拓真を凝視しながら尋ねる
立ち上るオーラに只ならぬ雰囲気を感じた拓真は
「あ、あぁ・・・カンタンには行けないだろうが・・・もしかするな」
塀の向こうでは女子の嬌声が響き渡る
「わーやっぱサリオさんの胸、でっかいなぁ」
キラッセである。実況有難う
「ふふふ、大きさでは団長に適う人物はおりませぬよ!」
自慢げに言うのは炎の3騎士”爆炎のミース”
「あ~ら、そういうアナタも大きさでは引けをとっていなくてよ?羨ましい・・・」
そう言うのは炎の3騎士”焦熱のセイム”
「そうね。でもセイムはその分カタチが良くってよ?」
フォローするのは炎の3騎士”煉獄のソーネ”
「俺も後2~3年すれば、ねーちゃん達みたくなるかなぁ?」
キラッセが少し気落ちした声を出している。そうだな、そこは同意するぞ
「大丈夫だ、キラッセ。これから毎日、騎士団の鍛錬をすれば良いんだぞ!」
騎士団長のサリオがキラッセを勧誘しとる。人員確保に熱心ですな
「え~~?毎日鍛錬は辛いよう~~」
「頑張らないと目標には辿り着かないぞ」
キラッセの情けない言葉にサリオが発破をかける
「みなさん済みませんね、キラッセが我侭ばかり言って」
そう言ってきたのはケリスだ。アナタも温泉入って来たのか、元ナンバー1
男湯でそんな会話の流れを聞いていた拓真達だったが
全員が押し黙る中、1人の漢が行動を起こす
コーディである
「お、おいコーディ・・・!」
急にオブジェの岩肌を上へとよじ登り始めたのだ
無言でぐいぐいとロック・クライミングよろしく登っていくコーディを見つめる拓真達
「はっ、いかんいかん、皆コーディを止めろ!」
小声で拓真は他のメンツに指示を出す
「カカ・・・困ったものじゃ」
「アイツ・・・向こうにはケリスもいるってのに・・・!」
ホークアイとカイムが小声で応じると、コーディの後を追って岩肌を登りだす
見た目は子供中身はエロジジイなんて洒落にならんぞ、と拓真は思いながら後を追う
オトコ4人が岩肌をハダカでよじ登る様は滑稽である
コーディが一番上に辿り着く直前、拓真がコーディの足首をがっしと掴む
「ええい離せ!すぐそこにパラダイスがぁ!」
小声でコーディが叫ぶ
「馬鹿、そこから入ろうとしてもなぁ!」
拓真が小声で進入防止のトラップがあるぞ、と言いかけた時
他の2人も追いついてコーディに掴みかかる
「カカカ・・・御老体、そこまでですぞ」
「ふぅ、爺さんそこまでだぜ」
覗き事件はこうして未遂に終わったのであった・・・
・・・え?ホントにこれで終わりッスよ・・・
次回予告ゥ 何事も無く”お風呂回”をやり過ごした拓真達。不完全燃焼の中エルフの都に辿り着くと、早速コーディの案内でエルフ種の長老と会う事になったのだが・・・”旅情編 第七幕 脳筋ばかりの都” でお会い致しましょう




