旅情編 第三幕 ホビットの矜持
~前回までのあらすじぃ~
ホビット種の生息エリアに侵入した拓真達一行はその助力を得ようと
森林地帯に降り立つ。が、そこで思わぬ奇襲を受ける事となった
拓真達の周囲には炎の壁が立ち塞がる
おまけにその範囲は狭まりつつあった
「このままじゃ丸焦げだよ~~~!」
”爆炎”の二つ名が泣くぞ、ミースよ
「ミースと一緒になんて遠慮したいわね」
”焦熱”の二つ名も意味が無いな、セイムさん
「2人とも情けない事を言わないでね」
”煉獄”の二つ名にふさわしい言動だな、ソーネ。後でジュースを奢ってやろう
「そういやこのメンバーには魔法対策出来る人、おらんかったか」
拓真がじりじりと狭まる炎の壁に下がりつつ皆に聞く
「魔法対策×」「無いです」「無いわ」「なーい」「カカカ」
ゴメン、聞いた俺が馬鹿だったよ。拓真は心の中で呟く
魔法系は全て”ズンダ”任せだったからなぁ
改めてその存在の大きさを確認してしまった
「でもまぁ、この程度ならな」
拓真は上空を見上げ、高さを確認するとホークアイに目配せする
「カカカ・・・いいのか、タクマ?」
「取り合えずだ、頼む」
「承知した!」
ホークアイは拓真を背後から抱え込むと、そのまま背中の羽を展開し飛翔した
「ホークアイ、残りも急いで頼む!」
炎の壁を越えた辺りで、拓真はホークアイに炎の壁の外側に放り投げてもらう
「カカカ・・・任されよ!」
すぐさまホークアイは炎の壁の中に戻って行く
強化された身体能力は10メートル位の高さから飛び降りた程度ではなんとも無い
「改めて感謝だな、メノンさんよ!」
拓真はここに転生する時に関わった世界管理者機構
”メノン”の名を口にすると周囲を索敵する
「そこかぁ!」
拓真の強化された身体能力が、わずかな違和感を覚えたその位置に
子供程の身長を持つ”ホビット”らしき人物を捕らえた
取り合えずその位置に身体を踊りこませた拓真はその人物を威嚇しようとする
「ぬっ」
「くわわわ」
木の茂みの中で2人の奇声が交錯する
その瞬間術者の意識が離れた”移動する炎の壁”は霧散した
「わ」「ふう」「熱かった~」「カカカ・・・二人目じゃったのだが」
炎の壁が消えた中からサリオ以下、ミース、セイム、ソーネ
そしてキラッセを抱えたホークアイが姿を現す
「こんの、いい加減に・・・」
「くわわわ」
全員が茂みの中でばさばさと移動を繰り返す拓真とその相手を目で追う
がっさぁ
ついに茂みの中から2人が飛び出して来た
「ふー、チェック・メイト、だぜ?」
拓真が茂みから飛び出したときに取り出したレーザー・ソードを抜き放ち相手に突きつける
その相手とは・・・
「ぐぬぬ・・・ワシとした事がぬかったわ」
言葉遣いとは裏腹に、その人物は子供然とした見た目で拓真を見上げていた
「ひゃひゃひゃ、しかしなんじゃのう!お主は以外に動けるのう!」
なんだか急にフレンドリーになったその”ホビット”は親しげに拓真に話し掛ける
「褒めてもらってなんだが、”小手調べ”ってのは済んだのかい?」
その態度に敵意無しと判断した拓真がレーザー・ソードを収めながら聞く
「済んだもなにも、この結果じゃ。合格、ごーうかく、じゃ」
大袈裟に言うとそのホビットは半身を起こし、膝をぱしんと叩く
「ワシはホビット種の”コーディ”と言う者じゃ。よろしくの」
そう言うと拓真に向かって右手を差し伸べる
「俺は拓真だ。転生者で魔界を目指している」
「転生者とな・・・それでか」
その手を握りながら、拓真はコーディと名乗ったホビットを立ち上がらせる
「なんだ、転生者は初めてじゃないのか?」
「んむ・・・前にあった転生者はカナコと言ったか」
「あー・・・あいつもここに来てたのか」
そんな話をしながら拓真は他のメンバーを紹介する
「こっちは俺の仲間だ。この他にも上に滞空している”ビッグ・ダイン”にも何人か」
「おーおー、上におる馬鹿でかいのじゃろ」
コーディは腰を曲げて上空を見上げる格好を取ると右手で目線の光量を調節する
「アレが見えたときはたまげたぞ。どこの魔法道具が攻めて来たのかとな」
「それは申し訳なかった」
サリオが会話に割ってはいるとコーディに謝罪する
「此方もこの位置にホビットの集落があるのを見落としていたのでな」
その謝罪するサリオを見て、コーディの目の色が・・・目じりが下がる
「う・・・お、っとと・・・」
急によろけたコーディがサリオの太腿にしがみつく
驚いたサリオが声を出す前にコーディが弱弱しくサリオを見上げ
「スマンスマン、年甲斐も無く張り切ったので目眩が・・・うぅっ」
と言ってサリオの太腿に、ことさら強くしがみついた
「そ、それは・・・年甲斐も無く、とはお幾つなので?」
サリオが戸惑いながらもコーディの肩を支えて話し掛ける
「ワシか?こう見えても今年で300を数えるわい」
そう言いながらサリオの太腿に顔をぐりぐりするコーディ
その見た目のギャップからその場の全員が「えぇ!!」と驚く
「そ、そうなのですか・・・それはそうと、コーディ殿?」
あからさまな太腿ぐりぐりに違和感を覚えたサリオがコーディを引き離そうとする
が、がっちりとホールドした両手がするすると臀部にも伸びてきた
「ひっ!?」
その段になって、さすがに回りもその異常な事態に気が付く
「良いではないか、良いではないか」
どこぞの時代劇の登場人物みたいな台詞を吐きながらサリオをまさぐるコーディ
「ちょ、コ、コーディ、どのぉ!!!」
サリオが羞恥心に顔を真っ赤にしてコーディを揺さぶる
「よい・・・んがっ!!!!」
キラッセがコーディの後頭部を思い切りぶん殴っていた
「なんなの?このエロガッパ!」
キラッセがぶん殴った自分の拳をふーふーしながら、崩れ落ちるコーディを見る
「さーてね・・・」
拓真も呆れながらこの世界にカッパっているのか?と余計な事を考えていた
「・・・いや・・・ウチの長老がスイマセン・・・」
唐突に周りの茂みの中から数人のホビットが現れてコーディの所業を謝罪した
「長老?コーディ殿は長老なのか!」
サリオが驚きの声を上げ気絶したままのコーディを見つめる
「えぇ・・・お恥ずかしい限りですが・・・」
たしかこの見た目で300歳を超えるとか言ってたな、と拓真は心の中で思う
「ホビット種てのは、長命なものが多いのかい?」
「えぇ、平均で200歳は超えますね。あぁ、私は副長老のムーディです」
どこぞのタレントみたいな名前に吹き出しそうになりながら拓真達は集落に案内された
ホビットの集落はそれなりに開けた場所であった
森林の中に開けた広場に巨木をくりぬいて居住区にしたようなメルヘンチックな空間だ
「へぇ、案外面白い場所だな」
「他の方々から見ればそう見えるのでしょうか。こちらへどうぞ」
感想を述べた拓真にムーディが別棟で建てたような建物に案内する
一緒に来たメンバーも物珍しさから辺りをきょろきょろしている
ホビットが行き交う広場では何人かが拓真達”来訪者”を珍しげに眺めていた
「皆子供に見えて、大人か子供かわからんね?」
「ホビットは長命ですので、見た目がほとんど変わらないのですよ」
拓真の問いにムーディが答える
別棟の建物の中で客間の様な場所に通された拓真達は用意された長椅子に座る
「それで、この集落に来た目的というのは?」
向かいに座ったムーディが拓真に聞く
「見当は付いていると思うが、”魔界”へ行く方法を探している」
「そうですか、協力は出来ません。お引き取り下さい」
「えっ?!」
早すぎる。もっとこう、何かあるだろう?と拓真がわなわなしていると
「ムーディ殿、それではあまりにも。訳をお聞かせ願えないでしょうか?」
サリオが助け舟をだす。いいぞサリオさん。拓真がガッツポーズを取る
「訳ですか・・・それは人族なら、この世界の魔族以外の者ならばお分かりでしょう?」
「それは・・・今現在までの魔族との確執の事ですか?」
「無論、それもあります。そして我々はどことも関わりを持ちたくないのです」
ここでも魔族に対する根深い反発心があったのだ
そしてそれは外界との接触まで拒絶している
「その閉鎖的な考えが打開策を構築出来ない弊害だとしたら?」
拓真がムーディに問う
「我々の行動が世の理を害していると?」
ムーディがその表情に若干の怒りを滲ませる
一食触発的な空気が漂う中、扉をずばーんと開け放って入ってきた人物がいた
「ワシぢゃ!驚いたか!!」
先程キラッセに張り倒されたコーディである。大袈裟に頭部に包帯を巻いている
一気に白けた空気にもめげずにコーディが話し出す
「スマンの、転生者。こやつは頭も固いがナニも固い若造での!!」
「ちょ、長老・・・ナニは関係ないでしょう・・・」
コーディの物言いにムーディは眉間にしわを寄せる
「常々ワシが言っておろう?閉鎖的な考えは何も生まぬと!」
「アンタの様に開放的過ぎるのもどうかと思いますがね!」
話し方がエキサイティングになってますよ、ムーディさん
「と言う訳だ転生者。魔界への道を探すのはワシが手伝ってやろう」
「ちょうろおーー!!何処を如何すればそういう訳になるんだコンチクショー!!」
とうとうムーディがコーディの首を締め出した。きゃーひとごろし!
「ちょちょ!2人とも落ち着いて下され!?」
サリオ以下、3騎士が2人を引き離しにかかる
目が血走っているムーディからようやく引き剥がされたコーディ
息をぜいぜいさせながらも、またもサリオに抱きつく
「わーーん、ひどいんじゃひどいんじゃ、ムーディのやつがぁ!!」
「こりねぇな、このジジイ!!」
その後頭部をキラッセがぶっ叩く
ぐはぁと唸りながら沈んでいくコーディ
落ち着きを取り戻したムーディが襟を正しながら拓真に向かって話し出す
「・・・はぁはぁ、兎に角そこのクソジジイが勝手にする事です。我々は関知しませんよ」
「出来れば、ホビット種の全員の合意ってヤツで協力して貰いたいんだがなぁ」
頭を掻きながら拓真はそう呟く
その時、窓の外に閃光が光る
「なんだ!?」
全員がその閃光に驚き、窓の外を見る
広場の中央に赤い魔方陣が展開され、誰かが転移して来る様だ
「まさか、そんな・・・」
ムーディがその魔方陣を見て驚き外へ飛び出していく
「全員、建物に非難しろ!守備隊は前へ!!」
ムーディが大声で指示を飛ばしている。誰が来るというのだ?
嫌な予感がして拓真も外へ飛び出す
「サリオ、キラッセを頼む、ホークアイ行くぞ!」
「カカカ、承知した!」
2人で外へ飛び出すと魔方陣を囲んで数十人が戦闘態勢に入っていた
「ムーディさんよぉ、一体誰がくるってんだぁ?」
こわばった顔のムーディに拓真が問うと
「ヤツだ・・・ヤツが・・・来る!」
そう言って魔方陣を見つめる
その魔方陣の中から姿を現したのは・・・
「あれェ?久しぶりに故郷に戻ってみたら・・・”転生者”がいるじゃん?」
魔族四天王の1人”ヨーディ”であった
次回予告ゥ 突然現れた魔族四天王の1人”ヨーディ”。故郷帰りだと宣言する彼だが拓真達とかち合ってしまい、戦闘モードに。魔法攻撃に苦戦する拓真達。ヨーディの真の目的とは何か?ホビット種の全員の合意は得られるのか?・・・次回 ”旅情編 第四幕 師弟”でお会い致しましょう




