城塞都市編 第八撃 管理者の権限
オトコは~♪だ~れ~もみなぁ~♪ ・・・で始まる歌のCMが昔にありまして
そのCMが流れる度に、自分の”オトコ”が目覚める気がした、幼少期でした
おお、斉藤 拓真 よ しんでしまうとは なさけなや !
拓真は夢とも、幻ともつかない、不思議な白い空間に漂っていた
「・・・ぬ・・・見たことも、聞いた事もある、場所と声だな・・・」
・・・世界管理者機構の”メノン”です。お久しぶり?
なんか、会話のノリが軽くなってないか?拓真はそう思いながらも、落ち着いていた
「わりぃな。世界を救う前に、おっちんじまった。約束守れんで、スマンかった」
ホントに何故だか気持ちが穏やかだ。死んだらみんな、こうなのかしら?
・・・困りましたね・・・
ホントに困ってる?そう問い詰めたくなる位、メノンの口調は軽い
「ま、所詮、器じゃ無かったってこった。三つのシモベも、二つまでしか開放出来なかったしな」
気持ちが穏やかなせいか、口をついて出る言葉も、軽い
良いんですか・・・? 泣いてますよ・・・
・・・泣いてる?誰が?どこで?拓真には思い当たるフシが無い
・・・キラッセさんが
その瞬間、拓真の脳内に稲妻の様に記憶が流れ込んで、蘇って来た
「ッツ!!!そうだ!キラッセ!ズンダ!ソーネ!えっと・・・ホークアイ!」
微妙に忘れかけてたホークアイには気の毒だが、それでも全てを思い出した!
「こうしちゃいられ、ねぇえええええーーーーーんんん、動けねぇ!」
空間に漂っている拓真は、身動きが取れなかった
しんじゃってますからね?ムリっすわ
以前にも増して軽いノリで会話をするメノン。その態度にイラっとする拓真
「うぉぃ!めのおーーーん!頼むから、そんな、のんびりしてないで、俺を!」
・・・生き返ってどうするんですか?
何だって?今更なんでそんな事を言う?拓真はメノンの声がする方向を見つめる
生き返って、どうするの?また死んじゃうよ?
・・・なんか、声は同じだが以前の”メノン”とは別人みたいだ
「お前、前と同じ”メノン”か?なんか感じが違うんだが」
アレ、気付いちゃいました?そーぅです、私は別の”メノン”です
そういや、”我々”とか言ってたな。複数の人格があるのか。それでも、今は!
「別でも同じでもどっちでも良い!頼む!俺をもう一度、あの世界へ!」
アナタだと、また同じ結果になりそうですしね~
今度の”メノン”は、”俺”に優しくない!
「だーーっつ!今度は上手くやるから、たーのーむーって!」
んー、信用出来ないッス。新しい人を”勇者”にして送り込む方が良さげ
でっすね
どういうノリ?会話すればするほど、なんかムカついてくるんですけどぉー?!
ガッツガガガ・・・ピーガーガー!!!!!!!
? 突然壊れたラジオみたいな音を立てて、”メノン”からの話が途絶えた
「どしたぁーー?」
何も無い空間に向かって声を発するが、しん、として何も帰って来ない
・・・失礼致しました。拓真さん。以前お話しました”メノン”です
ぉぉーーお、以前の、最初の、”メノン”さん、キターー!
先程の”メノン”はまだ新人でして・・・スミマセン、教育が行き届いて
なくて
「あー、いやいや・・・こっちもつい、煽られて対応が雑になってしまったんで。スマン」
思わす、謝罪する拓真。が、すぐに気を取り直して、直ぐに嘆願する
「頼む、最初のメノン!俺を何とか生き返らせて、あの世界に戻して欲しい!出来ないか!?」
頼み方が、やや乱暴だが切迫した状況は解ってくれる筈、と拓真は考える
そうですね・・・拓真さんのその”やる気”に今回は賭けてみますか
マジか・・・!やった、戻れる。もう一度続きが出来る・・・!ゲームのコンティニューがギリギリで繋がった様な安堵感が拓真を包む・・・ゲームじゃないんだけどな・・・
で、復活にあたり、少々お話が
あら、やっぱりタダってわけにゃ、いかんの?と脱力する拓真にメノンは告げる
あぁ、いやいや・・・条件、ではなくお詫び、というか。今回、拓真さん
には急な”転生”で、ご迷惑をお掛けしましたから、此方の”権限”内で
特典を
「え?権限て・・・」
はい。拓真さんを”転生”させた時は”権限”が消耗してまして、十分なケアが
出来無かった物とし、今回”復活”と”強化”をお与えしようかと
マジか。初めての転生の時の話では、”権限”が無いから、という事で”三つのシモベ”能力しか貰えなかったからな。これで”無双転生”出来るのか?・・・某神拳の奥義名ちゃうぞ・・・
と、いいましても”復活”にポイントを結構使うので、あまり多くは
お与え出来ませんが
どっちなんだよ!と突っ込みつつ、拓真は表面上、謙遜する
「取り合えず、生き返らせて貰って、元の世界に戻れりゃいいよ」
ふふ、と笑いながら目を閉じる拓真
それでは、”復活”と”強化”・・・主に”身体系の強化”を行います
「助かる。もう毒なんかで死ぬのはゴメンだからな」
それと同時に、”シモベ”も強化されます。戻ったら再召喚してみて下さい
「お、そいつぁ助かる。スモルガーは壊れたままだったからな。アレを修理するには、修理工場機能を備えた、”第三のシモベ”召還で待たなくちゃイカントコロだったんだ」
拓真は思い描いていた、第三のシモベに関する情報をメノンに話す
それは知っていますよ。今回のは、それとは別です
「はっ、そうだったな。アンタ達にゃつつぬけ、だったか」
自虐的に笑う拓真に、姿の見えないメノンも笑っている様だ
・・・拓真さん、感謝しているのですよ?
「感謝、だって? 俺に ?」
えぇ。此方が送り込んだ人物の、イレギュラーを修正しようと奮闘して
くれるアナタに
「あぁ・・・アレな。まだもう少し、かかる気がするが・・・なんとかケリをつけてみるさ」
そう言って、”魔王ベルリム”となってしまった”カナコ”の事を考える
「なんとか、するさ・・・!」
拓真のその目は決意に満ちていた
「・・・そういや幾つか、聞いときたい事があったんだった」
拓真は何時も頭の片隅にあった思いをこの際に、聞いておこうと質問する
「俺は・・・何者だったんだ?何か特別な事をしていた、なにがしかの人物、だったのか?」
・・・アナタ、斉藤 拓真 さんは、特に取り上げることの無い
平凡な一市民でしたよ
さらっと、メノンは拓真の素性を明かす。その”平凡”に拓真は噛み付く
「いやいや、だって俺はなんか戦いにも平気で突っ込んでいくし、強そうな相手にもビビらないし、何より窮地に立たされても、軽口がぽんぽん出てくるし・・・」
ホント、世のオトコ達っていうのは、自分を”特別”扱いしたがるの
ですねぇ・・・
メノンは呆れる、というか溜息に近い物言いでそう語る
普通のオトコなら、誰しも心の中には”強者として振舞いたい”という願望
もしくはそういった”思い”はあるのですよ
「・・・そう、なの、か・・・?俺は、”特別”じゃない、と?」
・・・がっかりさせるかもしれませんが、我々は”転生”させる際に、その
”願望”や”思い”が素直に出せる様に、記憶を一部、消去するのですよ
「つまり、本来の俺、は何の取り柄も無い、その辺の普通のオトコだと?」
拓真は自分こそが、本来は危険に身を置いて日夜何かと戦い続けていた、何がしかのヒーロー的な存在だったのでは?という考えがあったので、メノンの言葉には少なからずショックを受けていた
・・・気落ちする事は、ありません。世の全てのオトコは皆、心の中では
”自分がヒーロー”なのですから
そうなのか?拓真がいぶかしむ中、メノンは更に続ける
ですが世のオトコ達は、成長する段階に於いて数々の試練を受け、徐々に
その意識を、深層心理の中に埋没させていくのです
・・・そして、いつしかそういう”闘争心””心の牙”を折られた
もしくは隠した状態で日々、生活していくのです
その言葉に、拓真自身思い当たる節もある。幼い頃は、何にでもなれる気がしたし、何者にも負ける気がしなかった。それがいつしか、自分より強いもの、優れたものに出会ったり、負けたりして・・
「・・・そうして、大人しくなっていったんだな。俺は」
自分の分をわきまえる、という点では間違っては居ませんが、今回の様に
異世界で活躍してもらうには、少々邪魔な”鎖”なので、毎回外させて
貰ってます・・・
「そうか・・・それと、もう一つ。俺はアッチの世界では”3倍の力”を持っている様に感じたんだが、間違ってないか?」
・・・”3倍”の意味が良く解りませんが・・・確かに、元居た世界と
異世界では世界を構成する物質の違いにより、力が強くなっていますね
”3倍”が適正値かどうかは・・・
・・・まぁ、そこはアレだ。なんかの記憶で、強い奴は、〇倍!っていう表現があってだな・・・拓真が心の中で考えているとメノンが優しく?言葉をかけてくる
兎に角、これでまた、あの世界”フェルメール”で活躍して下さい
あぁ、そういや異世界の名前、そんな名前だったな・・・拓真はおぼろげながら思い出す
恐らく、拓真さんと会うのはこれが最後になるかと思います。くれぐれもお気をつけて
「あぁ、何から何まで世話になった。記憶は戻ってないけど過去が解って?幾らかスッキリしたよ」
ですか。あぁ、そうそう、拓真さん
「ん?なんだい」
・・・”イケメン整形”と”若返り”も、今なら出来ますがどうします?
今頃、トンデモ無い事を言い出すなぁ。メノンさん。そう思いながら拓真は右手で自分の顎をさする
「・・・いや、いい・・・実はな、俺は結構、この年食ったオッサンの自分の顔、気に入ってるんだ」
そう言って、ニヤリと見えないはずのメノンに向かって笑った
「たまたま、良くも悪くも無い、普通の顔だったから、かもしれないが、な」
そう言うと拓真は見えないメノンに敬礼した
・・・ですか・・・”こまけぇ事は、いいんだよぉ”ですね
「その通り!」
拓真はウィンクした。自分の身体が光に包まれ、何処かへ転送されていくのを感じながら
では、御武運を・・・・・・ガガッツ
む?最後にまた混線したような・・・?
をぃ、拓真!
ぁ、最初の意地悪な”メノン”か!
今度は、”上手く”やれよな! 女の子、泣かすんじゃねぇぞ!
・・・ツンデレかよ・・・!そう思いながら拓真は最後に、返す
「わーってるよぉ!期待しとけって!」
その言葉を最後に、拓真は完全に光の粒子となった
転生先は、戦い渦巻く異世界”フェルメール”
「四天王が1人、ユウゼスである!我は昔、勇者パーティの一員で、今代魔王ベルリムとなったカナコと世界各地を転戦していた!その時の話は・・・長くなるから割愛する!兎に角、我の出番が少ないのは嘆かわしい!という訳で、次回 城塞都市編 第九撃 復活の漢 に期待するぞ!・・・作者よ、早く我の出番を作るのだ!作るのだったら、作るのだ!」




