城塞都市編 第五撃 四天王の秘密
小説の中ではまだ言及してませんでしたが、今回、魔族と人族の違いを考察してます
今更感はありますが、軽く読み流して下さい
拓真は思う。魔族軍とはなんぞや?と
魔族軍の構成はオーク、ゴブリン、オーガ等の人型ではあるが言語が通じず、独自の生態系を築く異形のモンスター群の集合体である。それを統率するのが”魔族”
拓真は”魔族”を見たのは先の集落”フロスト”で捕縛した”ラーセルス”が初めてだ(その時の軍の中にも数名、”魔族”が居たらしいが、確認はしていない)
”魔族”と”人族”の違いは何だろう?
見た目は、”人族”と大差ない。二足歩行で、男女の区別はつく。言及はされてないが、頭部に一本、もしくは数本の角が生えている。背中にコウモリのような翼を持つ(普段は隠しているらしい)高い魔力を持つ。だが、全員が魔法使いという訳では無いそうだ。俊敏性が高い。知能も高い。言語が通じる。”魔界”という場所から来ているらしい。だから”魔族”
・・・”人族”も5種いたよな?ヒュム、ホビット、ドワーフ、エルフ、獣人・・・何故に魔族は人族と敵対しているのだろう?・・・
その辺りまで考えて、拓真は深く考えるのを止めた。結論等、出ないのだ。実際、こうして攻めて来て戦いが始まる。お互いに消せない怨み辛みが蓄積されている。もはやどちらかがこの世界から居なくなるまで、戦いは終わらないのであろう。で、あるならば・・・
「こまけぇこたぁ、いいんだよ・・・か」
殺伐とした中に、答えを見つけるにはもう一度”魔王ベルリム”いや”カナコ”と対峙して、話をする以外無さそうだ
「・・・そういや”人族”であったカナコが”魔族”になれる秘密もあるな」
そんな簡単に転族?出来るのかね?と、拓真はカナコに問い詰めたかった
ずん、とスモルガーの足が地面を踏み固める。魔族軍の先鋒を蹴散らし、丁度見晴らしが良くなった所だ。中央に見える御輿に乗っかってるこの軍の指揮官らしき魔族が見える・・・御輿、好きだね
「おい、そこの!魔族軍の指揮官と見た!大人しく撤退するか、このスモルガーにやられるか、どうする!・・・前にも言ったな、この台詞」
拓真はそう宣言してから、御輿に座る人物の反応を待った
「お初にお目にかかるわぁ・・・アタシ、魔族軍四天王が1人、”ヤーン”ていうのぉ。ヨロシクね?」
艶っぽい動きで自己紹介した魔族は”女”だった
「俺は”拓真”だ。魔族軍を蹴散らす男だ!」
「あらそう。話が早いわぁ。アナタ、”よわむしラーセルス”ちゃんはどうしたのぉ?生きてたら返して欲しいんだけど?」
「お仲間が心配か?」
拓真はラーセルスを取り返しに来た仲間思いの魔族か、と思う
「ま・さ・か・・・あんな恥さらしは、殺して息の根を止めるのよぉ」
柔らかい感じで恐ろしい事を口走ったよ、このひと。仲間意識はないんかぃ!と拓真は盛大に突っ込みを入れたかった
「でも、いいのよぉ。取りあえず、その変なゴーレムに乗ってるアンタから殺してあ・げ・る」
獰猛な笑みを浮かべると、御輿から物凄い速さで此方に向かって飛び出して来た
「ッ・・・ラーセルスよりも、早い!」
その動きに驚く拓真。頭部の装甲板が無い今の破損したスモルガーでは、取り付かれたらマズイ事になる。そう判断した拓真は素早くコックピットを抜け出し、外に飛び降りた
「いい、判断、ねッ!」
そう言いながら、鋭い突きをしてくるヤーン。首をひねってかわすと、被っていたヘルメットを掠る
ちゅぃん
刹那、急接近した拓真とヤーンはお互いの顔を至近距離で見つめ合う形になる
「ウフフ」
躊躇した拓真とは別にヤーンは余裕の笑みを浮かべ、ヘルメットのバイザー越しに拓真の唇辺りにキスをした
「ぬっ」
その行動に舐められてる、と感じた拓真は首元を通り過ぎて伸び切っていた腕を掴むと、柔道の技である一本背負いをヤーンに繰り出した。背中越しに柔らかい感触が当たり、ちょっとだけピンクな気持ちになる
「ひゅうー!やるわねぇ、アナタ」
投げ飛ばされ、地面に叩きつけられる前に空中で猫の様に丸くなり、地面に下り立ったヤーンは拓真に称賛を送る
「っったりまえだ。こちとら、現地人の3倍の強さを持ってるんだぜ!」
言いながら拓真は、そういや”3倍”の基準って、何?と自問自答する。自分で言い出した事ではあるのだが
「3倍、ねぇ?よわむしラーセルスちゃんを倒したからって、調子に乗ってるんじゃないのぉ?四天王の中でも最弱だったアイツに」
「四天王の中では”最弱”ね・・・」
テンプレ的な紹介、ありがとさん。拓真は舌打ちしつつヘルメットを素早く脱ぎ、左手に持つ。相手の武器が鋭い爪による突き攻撃と見て、素早い動きに対応するにはヘルメットが邪魔だったのである
「調子に乗ってるかどうかは、これからわかるぜ?」
そう言って中腰になり、どっからでも来い、という姿勢。その時
「あぶないっ」
そう言って背後に上空から下り立った人影があった。獣人”ホークアイ”である
背後に下り立ったホークアイは、その卓越した体術で拓真に射掛けられた弓矢を足で踏み落としていた
「な!?」
驚く拓真にホークアイは告げる
「カカカ・・・気をつけよ、タクマ。大人しく一騎打ち等をさせてはもらえぬぞ」
見渡すと、いつの間にか周りでは魔族軍が弓矢で拓真を狙っていた
「わりぃ、助かったぜホークアイ」
「カカカ・・・礼には及ばぬ。ワシとてあのままでは終われぬしな」
そう言うと拓真の背後で周囲に目を光らせる
「タクマさぁ~~ん、おまたせですーー!」
集落からズンダ達の援軍も接近してきた。これでいきなり背中から弓矢で撃たれる心配は無さそうだ
「あら~ん、誰かと思えばホークアイじゃなぁ~い?」
急に名前を呼ばれたホークアイは、ぎょっとしてヤーンの方を振り向く
「・・・ワシの名を知ってるオヌシは・・・?」
「やぁねぇ、忘れたのぉ?ちょっと魔族になっちゃったけど、この顔と声を忘れるなんて、酷いわぁ」
そういってウィンクしてくるヤーンの顔をを見つめたホークアイは、驚愕した
「お、オヌシは・・・!」
「あれ?まさか・・・ヤーン、さん?」
ホークアイが思い出した名前を言おうとした瞬間、後から来たズンダがその台詞を奪ってしまう
「カ・・・カ・・・」
台詞をとられ、口をぱくぱくさせるホークアイ・・・なんかコイツの立ち位置、解ってきた気がする・・・拓真はその姿を見てそう思った
「あらあら、誰かと思えば”ひよっこズンダ”ちゃんじゃない?懐かしいわぁ」
「わ、やっぱり!ってか”ひよっこ”は、やめてくださいぃ!!」
突然のガールズトークにすっかり白けた感じの拓真は、脱力しながら問う
「をいをい・・・四天王ってなアレか?みんな知り合いなのか?」
「・・・違う。こいつは四天王なんかじゃない。元勇者パーティのメンバーの1人、エルフ族のヤーンだ!」
「なんだって?」
こいつが、探していた元勇者パーティメンバーの1人?そう思ってじっくりとヤーンを観察する拓真。その視線に気付いたヤーンが、身体をくねらせる
「やぁねぇ、あんまり見ないでよ、エッチ!」
「誰がエッチだ!というか、説明しろ!どういう事だ!」
憤慨する拓真。にらみつけるホークアイ。はわはわしてるズンダ。よく解らないけど、取り合えず交互に見やるキラッセとソーネ。と、集落の守備兵と魔族軍
「・・・ふぅ、なんだか白けちゃったわねぇ」
戦闘態勢だったヤーンが構えを解き、クスクスと笑う
「そうねぇ・・・明日の正午、ワタシとアナタ、たくま、だっけ?二人で話しましょ」
「何を勝手に・・・」
「場所はそうねぇ、この先の開けた丘の上に席をセッティングしとくわぁ。それまでは一時休戦。軍も離れた場所で待機させとくから、妙なマネはしないでネ?」
そう言うと素早い動きで魔族軍の側に戻り、撤退を始めた
「待て!そっちの都合ばっかり!」
拓真が追い掛けようとすると、ホークアイに制止させられる
「カカカ・・・タクマ、ここは乗っておけ」
「何故だ?ホークアイ!」
やけに落ち着いているホークアイに苛立つ拓真。ズンダ達も側に寄ってくる
「この際だ、全てをヤツから聞いておくのが良い。ワシの勘だと、恐らく四天王というのは・・・」
「もしかすると、元勇者のパーティメンの成れの果てなのかも、ですね!」
またしても肝心な所を言われてしまったホークアイは、顔に影が差している。対して、ズンダは得意満面だ
「・・・疑問に思った事を聞いていいか?カナコが魔王になってから1年経ってるよな?その間、元勇者のパーティメンバーが魔族の四天王になっていたのって、誰も気付けなかったのか?」
拓真は、そう言うとズンダを見る
「わわわ、私は城塞都市からこの数年、一歩も出てませんから!」
そうか、引きこもりだったか、と拓真はホークアイを見る
「カカ・・・ワシはこの集落で隠遁生活しとったじゃけぇ、魔族軍とはかかわっておらぬ!」
言葉遣いがおかしい・・・誰だよ。と、拓真はソーネを見る
「え?私?魔族軍とは交戦経験はありますが、四天王と名乗る人物は、この間捕縛したラーセルスが初めてでして!元勇者パーティとは面識がありませんです、はい!」
だったのか、と天を仰ぐ拓真
「ホントに・・・なんなんだろうな、魔族とかって・・・」
心の中に再び、考えるのを止めたはずの疑問が湧き上がってくる
「をーい、タクマ~?俺には聞かないの?」
出番の無かったキラッセの台詞も頭には入ってこない拓真であった
「騎士団所属、炎の3騎士が1人”煉獄のソーネ”だ。サリオ団長の指令の下、元勇者パーティメンバーの探索チームに加われた事、光栄に感じている。トントン拍子でメンバーが見つかっている現状は喜ばしい。が、メンバーの1人が四天王に成り果てているとは予想だにしなかった。まさか他のメンバーも? 次回 城塞都市編 第六撃 元勇者の苦悩 で相見えようぞ!」




