俺の、転生人生は始まった
小鳥のさえずり、木漏れ日の中で拓真は気が付いた
「おっと、ここはどこだ?」
どこか平坦な草原の街道沿いにある森の入り口、ともいうべき場所のようだった
見渡してみると地平線の彼方に勇壮な険しい山々が見える。
「結構広いな・・・遠くが霞んでみえるわぁ・・・」
そこまで考え、もう一度鳥のさえずりが聞こえた時に、ハタと気が付いた
「ぁ、なんか異世界に転生させられたんだっけな」
急いで今の自分の状況と周りの品々を確認してみる
まず、着て居るもの。シャツに革のベスト?ズボンはワークパンツ?靴は、なんかトレッキングシューズみたなやつだ、これ。
記憶にある、いつも自分が着ていたもののような気がする。記憶が曖昧だけど
「あとは、ポケットに所持金?なんか見たことない硬貨がジャラジャラ入ってんなこれ」
んで、自分が跨っている、お待ちかねの物体に目が行く
「おー、これこれ・・・」
ここに送られてくる前に世界管理機構者のメノンってヤツに頼んだブツだ
そこには
真っ赤なボディに黒光りするタイヤ、眩しいばかりの光沢に彩られたソイツ(・・・)は
「バイク!・・・つうか、でかいなこれ・・・1000㏄のモンスターバイクってレベルじゃねーぞ、これ」
跨ってるシートこそ中央にあるが、横幅や全長はそこから更に両手を広げても届かないくらいに広い
「んー、一応頭ン中に浮かんだカタチとかを伝えたつもりだったんだが・・・軽自動車かよ」
よく見るとタイヤもゴツゴツした突起が出てたり、スタンドらしきものはなく、横にせり出したボディの一部で車体が横倒しになるのを防いでるような感じである。
「タイヤは、一応2輪なんだがな・・・」
シートはタンデム(二人乗り)は出来る様だ。乗り降りはまぁ、多少ボディに乗っかったりすればイケルのかな。アレだ、昔見たアニメに出てくる変形バイクのデカイバージョン、て感じか
変形・・・そうそう、コイツは変形ロボットバイクなんだったよな!わかってるって!(何が?)
「それじゃ一応、確かめますか(ニヤニヤ)」
注文通りの性能なら・・・ボディの後部辺りのカバーをぽこん、と開けてみる
そこには、ヘルメットが内蔵されていた
「フルフェイスじゃなんだしな。システムタイプだと重いし。ジェットタイプを選択しておいて正解かな?」
ブツブツと独り言をつぶやきながら、取り出したそれを被ってみる
「ん、ぴったりだな」
パカっと正面のシールドを開けて視界の確認をしつつ左手で耳の辺りを触ってみる
「あったあった、動作指示スイッチ~」
昔見た再放送の特撮番組で、ヘルメットから指示を出すのに憧れてたんだよね
・・・俺、幾つなんだろ、年齢?
ふとそんな事を思いつつ、バイクのサイドミラーに目を移す
・・・むー・・・若くない・・・かといってジジイってわけでもない・・・微妙~~な感じだ
「イケメン整形と若返り、出来なかったしな・・・ちょっと残念」
カンで、30代前半くらいと想像してみる
「ま、こまけーこたぁ、いいんだよ、ってか~」
転生間際に投げかけられたセリフを口にして、バイクをひょいっと飛び降りる
そして、スタスタと歩きバイクと距離を置くと、おもむろに振り返り左耳のスイッチに手を触れた
「チェンジ、スモルガースイッチオン!」
どこかで聞いたような変形の指示をバイクに向かって出す。ボーズも決めてみる。
・・・他人には見せられないな・・・そんなことも考えてちょっと顔の温度を上げてると
指示が届いたのかバイクに変化が現れる
少し傾いていた車体が本体下部の謎パーツによって垂直に姿勢を制御すると、電子音を奏でる
そしてがきがきと各部を鳴らしながら、人型のロボットに早変わりしていった
「おー、動く動く♪」
二本足で起立した、それ、「スモルガー・ロボットフォーム」は身長5メートルはあるだろうか
「でっけぇな。乗ったまま中に納まることも出来るはずなんだが・・・」
つぶやきながら周りをうろうろ歩いてあちこち見て回る
「・・・剣と魔法の世界、だったはずだよな。違和感ハンパないな」
赤いボディカラーつうのも目立つよなぁ・・・外装色変更のオプションも付けとくべきだったか?
そんなことを考えながら今後についてどうするか、いまだ考えが纏まっていないことに気付く
「あ、そろそろ人がいるとこにでも行かなきゃだな。こんなに目立って大丈夫かな?」
そういやぁ、世界を救うんだっけか?なんか魔王を倒せ!的な事を言ってた気がするが・・・
両手でヘルメットの位置を少しずらし、正面を見据えるとおもむろに左手を耳側にあてる
「チェンジ・スモルガーバイクフォーム」
軽くつぶやくと、電子音を鳴らしてまたがきがきとロボットが変形してバイクの形に戻る
「そーなんだよな。別にヘルメットのスイッチを入れなくても大声やポーズ決めなくても、コイツは
変形すんだよな」
最初に決めた設定通りなら、第一のシモベ、スモルガーと拓真は精神的な部分で繋がっており、ヘルメットの指示器を必要としないのだ
・・・じゃあ、何故にわざわざ、こんなことをするのかって?
「そりゃあ、アンタ、漢のロマンでしょぉーーが」
誰に言うでもなくそう声に出して言った後、拓真はバイクに跨りエンジンを起動させる
「エンジンキーとかもついてないし、燃料は基本空気中のマナと呼ばれる謎成分と自家発電による電気バッテリーだしな」
自家発電、プププ・・・とつまらないことで含み笑いをした後、アクセルを吹かす
「それじゃド派手に異世界デヴュウといきますか~!」
以外に呑気にこの世界に順応し始めた(まだ何にもわかっちゃあいないんだが)拓真は
正面のモニターに映ったレーダーに反応のある地点に向かうことにする
「そうそう、カルマ値、ってのも貯めないといけないんだったな?良い事良い事、まずはテンプレで、どこかで野党とかに襲われてるお姫様とか貴族とか、いないもんかね?」
あくまでもお気楽な考えでバイクをスタートさせる。
道は良くないが、走行には問題無い様だ。
「ホ、さすがオフロード用、ってね~~」
土埃を巻き上げ、拓真は疾走する。この果てしない大草原を・・・
説明で終わりました。中途半端な説明でした。吊ってきます。(ぇ