城塞都市編 第一撃 テンペロストの憂鬱
城塞都市編、突入です。サブタイトルにくっつけました
ブックマーク、評価ポイント、有難う御座います。これからももっと評価して頂ける様に、頑張りますので宜しく御願い致します。
「お、見えてきたぞキラッセ」
団長サリオ率いる騎士団と一緒に城塞都市”テンペロスト”に向かっていた拓真とキラッセは、城塞都市に近づいていた
「あれが城塞都市”テンペロスト”かぁ・・・でっかいなぁ!」
「なんだ、キラッセは城塞都市を見るのは初めてか?」
紅い短髪を風に靡かせて、驚く声を上げるキラッセに拓真は聞く
「うんー、俺はずーっと”フロスト”にしかいなかったと思うし」
”フロスト”とは拓真達が後にした集落の名前で、城塞都市”テンペロスト”を取り巻く五つの集落の一つだ
「フロストの他には、”ヒャダオ””ヘローン””ハーベス””ホイフム”の四つの集落があるのだぞ」
横で話を聞いていた騎士団団長サリオが、そう付け加える
「へぇ、結構変わった名前だね~?」
間の抜けた声で拓真が答えると、サリオは少しむっとした声で
「元からこういう名前なのだ!私が名づけたわけでは無い!」
ときつい口調で返してきた。そりゃぁ、ごもっとも、と拓真も思い
「悪い!そこまで悪気があったわけじゃぁ無いんだぜ!?」
と返しておく。低速走行とはいえ、騎馬とバイクの上での会話は意思の疎通が難しい
「・・・まぁいい。それよりそろそろ城門前だ。行儀良くしてくれよ!」
サリオはそう言うと、配下の”炎の3騎士”に指示を飛ばす
「城門前だ!隊列を整えさせろ!」
「はっ!」
3人はそれぞれ短く返答を返すと、騎馬を走らせ部隊に指示をしに向かった
「城塞都市、テンペロスト、か・・・」
その様子を見ながら拓真は数日前に、弓矢で追いたてられてた事を思い出していた
「あの時はヘルメットが無かったら、弓矢の直撃を受けて終わってたかもな・・・」
騎士団の先導もあり、今度は拓真は無事に城塞内に入ることが出来た
「フリーパスか。当たり前だが、騎士団の威光はすごいな」
城塞都市の門をくぐり、感心しているのもつかの間、城塞内はお祭り騒ぎであった
「なんだいこりゃ?何時もこんななのかい?!」
カーニバルもかくや、という大騒ぎに拓真はもちろん、キラッセも眼を丸くしている
「今回は、魔族撃退の報もあるし、なにより”ドラゴン”の首と魔族の”捕虜”がついているからな」
サリオが拓真に説明する。そうか、俺の”スモルガー”が珍しいだけって事じゃない訳か、と拓真は思い、隊列に引かれている”ドラゴン”の首と、”捕虜”のラーセルスを見やる
城塞内の人々は、騎士団に称賛を喝采し、スモルガーに怪訝な視線をとばし、ドラゴンの首に驚き、魔族の捕虜に罵詈雑言を浴びせるのだった
「・・・こりゃぁ・・・思った以上にすげぇ反響だ・・・」
自身の搭乗するバイク、スモルガー以上に城塞内の人々は魔族に反応していた。最初は罵詈雑言を浴びせるだけだったが、誰かが投石をした事で火がつき、あっという間に魔賊軍の捕虜、ラーセルスに投石が雨の様に浴びせられ始めた
「や、やめんか!こら、貴様ら!!」
投石の数が異常に増えた事で、サリオは慌てて住民に止める様に大声を出すが、収まらない。まぁ、サリオ自身も、最初に魔族の捕虜を見た時は、真っ先に剣を振りかざして切ろうとしてたしな。と思いだし、それを考えるとまだかわいいほうだと思う
収まる気配が無い投石を見て、やれやれと拓真は思いキラッセに声をかけつつハンドルを握り直す
「キラッセ、変形すっぞ。掴まれ!」
「う、うん」
キラッセが背中にしがみ付いたのを確認すると、拓真は叫んだ
「チェンジ! スモルガー・スイッチ・オン!」
がきがきと音を立てて、スモルガーはロボット・フォームに変形する。頭部と装甲版は吹き飛んだままなので、そのまま肉眼で5m位の高さから住人達を見下ろす形になる
「ようやく、収まったか?」
スモルガーの巨人化を見て、人々はあっけにとられ投石の手を止めたようだ。目線でサリオに今のうちだ、と合図をするとハッとした様に部下に指示を出し魔族の捕虜ラーセルスを箱型の荷馬車に移そうとする
こん
と、スモルガーの装甲に投石が当たる音がする。拓真がその方向を見ると、まだ幼い少女が憎しみのこもった顔で、涙を浮かべながら投石をしたポーズで止まっていた
「!・・・こんな幼い少女まで・・・」
拓真が驚愕していると、背後でキラッセが呟く
「・・・みんな・・・みんな同じなんだ・・・魔族軍に誰かしら身内を殺されて・・・」
そういうと拓真の背中をぎゅう、と両手で掴むのだった
城塞都市の最奥にある王城に着いた拓真と騎士団は、そのまま城主の下へと向かう事となる
「タクマ、私と一緒に来てくれ。城主に御目通りに行く」
サリオがそう言うと騎馬から降りた後、御付の者にかちゃかちゃと装備品を外して身軽になる
「了解。・・・キラッセも一緒で構わんだろ」
拓真もスモルガーをバイク・モードにして騎馬隊の馬小屋の隅に停車させるとサリオの傍に来てそう告げた
「なんせこいつは”相棒”だからよ?」
そう言って拓真は親指をグッとつきた立てて、ニヤリと笑う
「・・・身なりは仕方ないとして・・・城主の前では行儀良く、な」
装備品をあらかた外し、身軽な服装になったサリオは仕方ないと言った感じで拓真に告げると、先立って歩き出す
「えー、俺、城主なんて初めてみるかもーー!」
「何だよキラッセ、おーれだって初めて見るぜぇ~~?」
そんな二人の掛け合いを背後で聞きながら、相棒ね、未来の奥さんじゃなくって?と思いながら苦笑するサリオであった
城主が待つと言う謁見の間に、拓真、キラッセ、サリオの3人と後から遅れて”炎の3騎士”が入室する。正面の最奥に、偉そうな椅子に座っているいかにも、といった感じの城主が見える
集落の”コウズ”とジジイ度では良い勝負だな、と拓真は思いながら歩を進める
「城主”ガデム”様、騎士団団長サリオ、無事帰還致しました」
そう言いながら、城主ガデムの前に進み出て、膝を突き畏まる。その様子を見て拓真とキラッセもその場で同じ様な格好をする
「良くぞ戻った、サリオよ。報告は聞いておる。魔族軍を撃退し、ドラゴンを倒し、捕虜まで手に入れたというではないか。上々であるぞ」
城主ガデムは鷹揚に頷くと、数々の戦果を口にする
「は!ありがたき御言葉。ですが、その全てはここにおります”転生者”タクマによってもたらされた物であります」
サリオが顔を上げ城主ガデムにそう告げる。視線を感じ、拓真が顔を上げると城主ガデムと視線がばちっと、合ってしまった。仕方なく、にこりとしたが反応が無い
「・・・転生者とな・・・」
・・・ぁ、そうか、今代の魔王”ベルリム”は元勇者で、この城塞都市で活躍してたんだっけ、と思い出す。・・・転生者に良い感情が無いよな、と考えていると
「・・・新しい”転生者”タクマよ・・・貴公はこの世界において何を望むのだ?」
城主ガデムが尋ねてくる。何を望む、か・・・
「俺は・・・この世界を救う為に”救世主”としてやって来た者です」
「ふむ?」
すっくとたちあがり、宣言する
「力の及ぶ限り尽力し、平和を望みます」
おぉ、と周りに居並ぶ臣下達や護衛の騎士団から声が上がる。決まったかな?と心の中で思っていると横槍が入る・・・このパターン、多くね?
「お待ち下さいガデム様」
見るからにずるそうな顔付きのおっさんが(拓真もおっさんなので人のことは言えないが)臣下の中から進み出て城主に進言する
「転生者の言う事等、アテにしてはいけません。現に前回の転生者は、この国を救うどころか魔王になってしまった事をお忘れなく」
うやうやしく頭を垂れ、城主に頭を下げたと思いきや、その下げた頭の下から此方を見やるとニヤリと笑う。あ、こいつ、絶対仲良くなれないタイプだ。と拓真は思う
「よい、ペッスム。解っておる」
城主ガデムがそう言って片手を挙げると、ペッスムはすす、と列に戻る。ペッスム、ね。要注意人物として拓真の頭の中に、顔と名前がインプットされる
「転生者タクマよ。平和を望む貴公は、この国に、いや世界にどう貢献してくれるのかな」
「魔族軍を打倒し、魔王を、倒します!」
拓真はそう言い切って胸に手を当て、敬礼のポーズをとった。正しいのかどうかは解らなかったけども、なんとなくこうしたほうがいいな、と思ったからである
「そうか、相解った。であるならば、我等も出来る限りの補助を約束しよう」
城主ガデムのお墨付きを貰った。これで当面は食う寝る所にには困るまい、と内心ほくそ笑む拓真にガデムが話を続ける
「・・・で、話は聞き及んでいるとは思うが、今は魔王になってしまった”カナコ”・・・いや、ベルリムと呼ぼう。きゃつめの動向についての話だ」
そこまで話すと、ふぅ、と溜息をつき思案顔になる。なんだろう?何か嫌な予感がする。拓真の脳内に稲妻が光る
「・・・先代魔道士の”ズンダ”・・・アレの弟子の今代魔道士の”ズンダ”なんだが・・・」
そこまで話しかけると、突然謁見の間の別方向の扉が、ずばーーーーん、と開かれた
「話は、聞かせてもらったわーーーーッ!」
大声でそう叫びながら、逆光を浴びて何者かが入って来た。ずかずかとその足で拓真の方へと近づいてくる。びん底みたいな分厚いまん丸な眼鏡をかけた、紫の巻き髪おさげのその女の子は
「アナタが、新しい”転生者”ね!色々と試したい事があるから、一緒に来て!」
そう言うと腕をがっし、と掴んでぐいぐいと引っ張って出て行ってしまった
・・・キラッセの腕を掴んで・・・
「ぇ~~っと・・・・?」
あっけにとられている拓真に城主ガデムは、額に手を当てて考える人のポーズよろしく頭を振る
「あの調子での・・・ベルリムとの隠された逸話等を聞きだせるのなら、なんとか頼みたいのだが」
たった一人の魔道士、という事で拓真の脳内にあった”ズンダ”へのイメージががらがらと瓦解していく中、サリオに目を向けるとサリオもまたふるふる、と首を振っていた
「はぁ・・・取り合えず、追いかけますか・・・」
そう言う拓真の足取りは重かった
「よぉ、俺だ、拓真だ。ようやく辿り着いた城塞都市”テンペロスト”だったが、何やら一筋縄じゃいかねぇ内情がぷんぷん匂って来るぜ。おまけに、紫巻き髪おさげでぐるぐるびん底眼鏡の魔道士、”ズンダ”様。この子がまた、曲者だったんだわぁ~。と、言うわけで次回、城塞都市編 第二撃 魔道士ズンダ で、また会おうぜ!」




