尋問していた俺だが、いつの間にか尋問されていた
昨夜の喧騒がウソのように夜明けはやって来た
「ん、ぬ・・・朝、か・・・」
昨夜から新しく召喚された第二のシモベ”ミドルオー”のコックピット内で色々な点検やモードの確認等を行いつつ、そのまま寝落ちしていた拓真は目をこする
「ようし、”ミドルオー”の性能は大体把握した。後はオートモードにして、と」
コンソールパネルのスイッチ類をぽんぽん押すと、拓真は新しく用意されたインカムを手に指示を出す
「チェンジ、ミドルオー・タンクモード」
そう言うと着陸していた飛行形態のミドルオーは正面のランプをちかちか、と点灯させると変形を始める。がきんがきん、とスモルガーよりもダイナミックな稼働音を響かせると、あっと言う間に飛行形態から戦車形態への変形を完了する。その搭乗ハッチをかぱん、と開けて拓真はミドルオーから降りた
「タクマ、丁度良かった」
カイムが此方に向かって歩いてきていて、そう声をかけてきた
「昨夜捕らえた魔族が目を覚ましたのだ。長老達と尋問を開始するから、一緒に来て立ち会ってくれ」
「了解、一緒に行こう。ミドルオー、索敵モードに」
カイムに返事を返した後、手にしたインカムに指示を飛ばすと、了解とでもいうように正面のランプがちかちか、と点灯をした
「いこうか」
連れだって歩こうとすると、街道の彼方から馬の蹄の音がかすかに聞こえた。振り返ると、馬に乗った誰か、が遥か遠くに見える。が、一瞬の内に踵を返すと走り去っていってしまった
「なんだい、ありゃ・・・」
カイムは気づかなかったようで、先に歩いて行ってしまっていた。気にも留めず、拓真も後を追う。今は尋問が先だ。何か異常があれば、ミドルオーがインカムを通じて教えてくれるだろう、と
「タクマ、来てくれたか。早速だがこやつの尋問を始めようと思うのじゃ」
すでに懲罰部屋のあった建物の一室に、縄でぐるぐる巻きに固定された魔族のラーセルスが連れて来られていた。テーブルの机に裁判官よろしく、長老のココウズが座っている。周りにはやや殺気立った集落の若者等数人が睨みを利かせていた
「まずは・・・ラーセルスじゃったか。何故、わし等の集落を襲撃してきたのじゃ」
長老が拓真とカイムが列席したのを確認すると、そう発言した
「・・・・・・」
ラーセルスは押し黙って一言も発さない。黙秘する様だ
「困ったのう・・・何も喋らぬか・・・」
溜息をつく長老に、周りの人々が声を荒げる
「もういいでしょう、こんな奴一思いに!」
「そうだそうだ、わざわざ尋問する必要なんてねぇ!」
「俺の親父は、コイツらのせいで!」
魔族には散々な目に合わされてきたと見えて、皆が口々に叫び、怒鳴る
「まぁまぁ・・・俺が質問しよう」
喧騒を拓真が制すると、間に入ってラーセルスの正面に立つ。ぐわ、と目を開いて睨んでくるラーセルスに視線を落とすと
「改めて自己紹介しよう。俺が拓真だ」
「・・・・魔族軍四天王が一人、ラーセルスだ」
「聞こうかラーセルス。魔族軍の目的と行動原理を」
「貴様等などに語る話は無い。さっさと殺せ」
ふうと息を吐くと、拓真は恰好を崩してざっくばらんに話しかける
「そういきり立つなよ。俺は自分が誰かも分からない放浪者だ。だから悪いが、この世界の事はよくわからねーんだわ」
拓真の話にややざわつく室内。それを見渡すようにみやると拓真はさらに続ける
「だから、質問だ。魔族軍は本当に人族全部を殲滅し、蹂躙したいだけなのか?」
「・・・なんだと?」
「だから、理由は他にあんだろ?魔王ベルリム、だっけか。なんでアイツは魔王になった?転生者としてこの世界に降り立ったのなら、アイツは元勇者かなんかだろ?」
いきなりの発言に、さらにざわつく室内
「タクマ、お主何故それを・・・!」
長老が驚きの声を上げる中、拓真は更に続ける
「昨日の戦いの最中に長老、アンタは現場にいなかったか?魔王が現れて自身が”転生者”だと名乗った上に、俺を仲間に勧誘してきたんだよ」
「その話は聞いておるが・・・」
恐らくコウズは、ここには顔を出していないがケリスや他の女子供達と、前線からは離れた所に避難していたのだろう。詳しい話までは聞かされていなかった様だ
「転生者がこの世界に召喚されて為すべきことは一つ、世界の救済だ。だがヤツはその反対側の勢力、魔王になっちまった。何があった!?」
「そ、それは・・・」
コウズが何がしか知っているようで、言葉を濁した発言をする。と、インカムに反応がある
「ん、なんだ?」
敵意は無いが、エライ剣幕な反応の集団が来たようだ
「長老、カイム、何者かが集団でこの集落に来たようだ」
「何?もしや要請を頼んだ城塞都市”テンペロスト”の騎士団では」
「・・・ぁぁ、きちゃったのか・・・早いね」
集落の正面入り口では、50人程の騎士団員が騎馬や荷馬車を伴って現れていた
「テンペロスト騎士団、団長”サリオである!状況の説明を求める!代表者を出せ!」
騎士団の団長と名乗る人物が、騎馬の上から集落の見張りに声をかける。その横に鎮座している、タンク・モードの”ミドルオー”に警戒心バリバリだ
そこへ拓真ら尋問していた全員が、捕縛状態のラーセルスを伴って現れる。さっきの単騎で現れた騎馬は、この騎士団の斥候だったか、と拓真が思っていると長老が口を開く
「集落”フロスト”の長老コウズです。テンペロストの使者殿、ようこそおいで下さいました」
「あいさつはいい!この不審な物体はなんだ?穴だらけの街道や脇に寄せてある魔族軍の骸はなんだ!?説明せよ!」
言われてみればもっともな疑問をストレートにぶつけられてきた。どう説明したもんかな、と考えていると長老が答える
「昨夜、魔族軍の襲撃を受けました。撃退したのはここにおるタクマと申す者。彼の使役するゴーレムのおかげです。街道の穴や魔族軍の骸は、その時の戦闘跡ですじゃ」
ほおぉ、さすが年の功。上手い説明だ。と感心していると
「ではそこの塊はそやつの使役するゴーレムか。害は無いのだな」
「はい、そうでございます」
そこの塊、ミドルオーの説明にも納得したようで、そこまで会話が進むと、ようやく騎士団員は続々と騎馬から下馬する
「承知した。魔族軍の討伐、ご苦労。城塞都市城主に成り代わり、礼を言うぞ」
自身の騎馬から下馬し、団長のサリオはこちらにむかいつつ、騎士団の装束である兜を脱いだ。すると長い金髪のストレートな長髪がさらりと流れ、それをかきあげて此方を見据える
「タクマというのか。先程も名乗ったが団長のサリオだ」
そういって軽く敬礼をしたサリオは、女性であった。
「あ、ぁぁ・・・俺が拓真だ。今はこの村にやっかいになっている」
あまりの美しさに、心奪われそうになる。すると、拓真は誰かに脛を蹴り飛ばされた
「・・・ッ」
見ると、いつの間にか拓真の背後に、どこからか現れたキラッセが睨んでいる
「ん、ははは、可愛いお目付け役がいるのだな」
軽快に笑うとキラッセへかがんで目線を落とし、声をかける
「私はサリオ。えーと・・・?」
「・・・キラッセ」
「よろしくキラッセ」
そういうとサリオはキラッセに微笑む。それも一瞬、突然厳しい表情になると、集団の端に目を向ける。そこには引っ立てられて来ていた魔族のラーセルスがいた
「魔族・・・」
そう呟くと、がしゃがしゃと装備を鳴らして近づいていく。利き腕が腰の長剣に伸びている
「ヤベ・・・」
察知した拓真が急いで、駆け寄る。同時にサリオは腰の長剣を引き抜き、ラーセルスに振り下ろす。が、間一髪、拓真がそれを阻止した。背後から利き腕を押さえる
「・・・!離せッ!タクマ?!何故邪魔をする!?」
「待て待て待ってって!捕虜なんだから、いきなり殺そうとスンナ」
「馬鹿なッ!」
ひとしきり拓真とサリオがもみ合った後、お互いの距離を保つと、落ち着いたと見て拓真がサリオを離す
「なぜ、魔族なんぞを生かしておく!こいつらは仇敵だぞ!」
「だから捕虜だっつってんだろ。色々と聞き出すことがあるんだよ」
平行線をたどる会話の中、サリオの眼が集落の内側に置いてあった真っ赤なボディの”スモルガー”を発見した。破損したままであるが、バイク・モードにしてあったのだ
「・・・!ア、アレは・・・!タクマッ!貴様、数日前に城塞都市に現れた、怪しい物体の持ち主か!」
そう言って、今度は拓真に長剣を突き付けてきた
「う・・・その・・・それは・・・」
立場が一転、苦しくなった拓真はそう返すのが精一杯であった
モットーモ・ナ・ハナシダ名言集が、民〇書房様で復刻の動きがあるそうです(大嘘)




