魔王(イレギュラー)に勧誘された俺
「わが名は”ベルリム”魔族軍の指導者にて、最高位。今代の魔王を名乗るものである」
どう見てもどこぞの魔法少女の様な、ひらひら衣装をなびかせながら魔法陣の上に立つ少女はそう名乗った。その衣装は黒を基調としたものではあるが
「あれが魔王・・・魔法少女、の間違いじゃ無いよな?」
ドラゴンを倒し満身創痍の状態で、魔族軍の”ラーセルス”と名乗る指揮官から、勝利宣言ぽい事を言われたと思ったら、いきなり総大将の魔王と名乗る人物が登場してきた
「その魔王”ベルリム”さんが何の用だい?こっちは今、そこのオタクの部下とセッションの真っ最中なんだが」
突然の超展開に多少驚いたが、ここでどもる様なマヌケは演じられない。拓真はヒーローよろしく威勢よく軽口を返す。セッションの相手も突然の出来事に、口をぱくぱくさせて固まってはいるが
「ふふふ・・・威勢がいいな。先程から様子は窺っていた。貴公、名をタクマといったか?」
「あぁ、そうだ。俺が拓真だ。名前なんぞ誤魔化してもしょうがねぇからな」
「タクマ。貴公、”転生者”であろう」
なぬ、いきなり核心をついてきたぞ!この魔王・・・ベルリムとは何者だ?心の中で驚きを隠せず、相手を訝しんでいると
「そのゴーレムの見た目と能力、この世界の物では無い事位、我にも分かる」
「・・・それを知っているお前さんは何者だい?ただの魔王じゃないな」
「我も”転生者”なのだよ」
あら、そう来たか。その転生者がなぜに魔王に?・・・まさか、世界管理者機構の”メノン”が言っていた”イレギュラー”って・・・タクマが脳内でそう答えをはじき出すと同時に答え合わせが始まる
「世界管理者機構の”メノン”だったか。ヤツに言われてこの世界に来たのであろう?」
「その通りだが・・・イレギュラーってお前の事か?」
「イレギュラー・・・ふふふ、ヤツからすればそうなのであろうな」
転生者がイレギュラーって、”悪落ち”して魔族に鞍替えしたからか?何があったんだ?つきぬ疑問ばかりが頭をよぎるが、今はそこに言及する余裕は無さそうだ
「そんなことよりタクマ。貴公、我の元に来ぬか?」
「・・・はい?」
「我と共にこの世界を掌握せぬか?望みの物は手に入り放題だぞ」
いきなり”悪落ち”勧誘キタコレ。どこぞのゲームにも世界の半分をくれてやろう的なトラップがあったな、等と思案していると、間から横やりが入った。ラーセルスである
「馬鹿な!何故!ま、魔王様!!このような下賤の者、取るに足りません!何卒考え直しを!」
ドラゴンを使って満身創痍にまで追い込んだ獲物を、よりによって配下に加えようって言うんだから、そりゃあ驚くし、そういう反応になっちまうよなぁ。拓真はそう思いながらラーセルスとベルリムを交互に見やる
「・・・ラーセルス。貴様、我に異を唱えるのか?」
「い、言え!決してその様な事は・・・!」
魔王ベルリムの少女とは思えない威圧を受けて、ラーセルスはその場に畏まる。その様子を一瞥し、再びベルリムは拓真をみやり、右手を差し出して再び問いかける
「どうだ、タクマ。悪い話じゃないぞ。我と共に来い・・・」
そういって優しく微笑みかけてくる魔王ベルリムは、拓真にとって天使に見えた
ぎゅう
突然強く握られた脇腹の痛覚に、甘い考えが吹き飛ぶ。見ると背後で目を覚ましたキラッセが、涙目でこちらを睨んでいる
「ダメ、ダメ・・タクマ、ダメ・・・」
そう呟いているのが聞こえる。その様子を見て、拓真はふっと優しい眼差しを向ける
「返答はいかに、タクマ」
正面の魔法陣の上では右手を差し出した魔王ベルリムが、未だ優しい微笑みを浮かべている。かわいいのにな・・・そんな事を思いながら、拓真は返答する
「悪いな、魔王ベルリム。俺はアンタの仲間になるつもりは無い」
ベルリムにとっては予想外の返答だったのか、少し驚いた表情が見える。ラーセルスは逆に笑顔だ
「タクマ、いいのか?望む物が全て手に入るのだぞ?」
「甘い言葉にゃ毒があるってね。そんな甘言には乗らないぜ」
「・・・ッ!事の善悪も判らずに我を通す、知れ者かッ!」
「事の善悪ってのは、自分で確かめてから判断する方でね」
自分でも驚くほどスラスラと相手の煽りに返すことが出来た。これも過去に沢山の知識を頭に入れてたおかげかね?と自画自賛する
「タクマッ!」
背後では余程嬉しかったのか、背中に突っ伏すキラッセの姿があった。ちょっと痛いって、と思ってキラッセを見やる。一連のやり取りを聞いていたであろう集落の方からも、安堵した様な雰囲気が感じられた
「・・・そうか・・・残念だよ、タクマ」
魔王ベルリムが差し出していた右手を引っ込めると拳を作り、握りしめた。同時に、足元の魔法陣にゆがみが生じ始める
「・・・時間のようだ。・・・ラーセルス、この場はお前に任せる。タクマ、精々自分の我を貫き通すがいい。生き残っていたら、な」
そう言い残すと、歪んで消え始めた魔法陣の中に沈み込んでいく。魔王ベルリムが魔法陣の中に消えると同時に、魔法陣も霧散して消え去った
「・・・フフフ、幾分予定外ではあったが・・・タクマ、魔王様の誘いを断るとはマヌケだな」
「なーにいってやがる、てめぇは随分と嬉しそうじゃねぇか」
ラーセルスはにやついた顔に更に獰猛な笑みを浮かべると、こちらを見やり
「そうだ!折角の獲物だ!いたぶり、蹂躙してくれる!」
そういうと両手を万歳のような形で振り上げ、魔族軍の攻撃開始を合図しようとする
「ちぇ、言ってくれるぜ。とは言ってもこっちも相当やべぇな」
「タ、タクマ、もうこのゴーレム、動かないの?」
こちらの不利を感じていたのか、キラッセが不安げに聞いてくる
「なぁに、心配すんなって。いざとなりゃコイツから降りて、バイクモードのスピン・アタックを全開にすりゃ何とかなるって」
と軽口をたたく。とはいえ、その降りる余裕が出来るかどうかなのだが
その時、スモルガーの液晶パネルが点灯し、ガイダンスが流れた
「オメデトウ ゴザイマス マオウノ カンユウ ヲ コトワッタ コトニヨリ ジンミン ノ シンライ ガ マックス ニ ナリマシタ」
「んぉ!?」
「ゼンコウ ガ チクセキ サレマシタ モクヒョウチ ニ タッシマシタ」
「ダイニノシモベ ”ミドルオー” ノ ショウカン ガ カノウニ ナリマシタ」
きたーーっ、実は結構期待はしていたが第二のシモベ、召喚解放キター!・・・相変わらずネーミングセンス、ダサイけど・・・
「へへへへ・・これでかつる!」
「え・・・?」
驚く背中のキラッセをそのままに、拓真はラーセルスに吠える
「ラーセルス!悪いが、形勢逆転だぜ!」
今まさに、勝利への階段を上ろうとしていたラーセルスはその言葉に動きをぴた、と止めると
「フン、負け惜しみを・・・貴様がそのゴーレムから降りるのを黙って見ていると思うか」
すでにこちらの捨て身の戦法、スピン・アタックの可能性を見越していたラーセルスはそう言い放つ
「違うな、ラーセルス。これから起こる奇跡、ってのをとっくりと見せてやるぜ」
言うが早いか拓真は叫ぶ
「カモン!、第二のシモベ、”ミドルオー”!」
叫ぶと同時に、拓真の少し離れた頭上に巨大な魔法陣が現れる。その中から徐々に徐々に、漆黒の巨大な鉄の塊が姿を現してくる
「な、なんだ、と・・・これはいったい・・・!」
ラーセルスは突然現れた魔法陣と、中から出てくる見た事もない異形の物体に目を見張る
「第二のシモベ、”ミドルオー”は驚くなかれ、三つのモードを備えた変形飛行タイプだ!」
魔法陣から姿を現したそれ、ミドルオーは巨大なボディを露わにした。そして両翼に配置されている大型フィンによりホバリングをして空中に静止した
「ぐっぐぐぐぐぐぐぐぐ」
ラーセルスは突如現れた新しい”ゴーレム”に驚愕していた。現れたそれは、先程自分が使役した”ドラゴン”と同等の大きさと重量を持っていそうで、尚且つ空中を音もなく浮遊していた。同時に、心の中で思う。なぜにこの召喚士がゴーレム一体しか召喚出来ないと思っていたのだろう、と
遂に登場、第二のシモベ”ミドルオー”。飛行タイプですが三つのモードに変形します。ナイトホークをベースに、ホバリング機能が追加された、みたいなのを想像して頂ければ・・・




