俺と闘いと怒涛の展開
光の中から現れたドラゴンは、ひと声吠えると大口を開けて咬みつこうとして来た
「うおおおお」
突然の攻撃に闘志を奮い立たせて、大声を出す拓真
がっし、とドラゴンの顎をスモルガーの両手で受け止めると、捻り倒そうとする。が、ぎしぎしと音を立てたまま、膠着状態に陥ってしまった
「こ、こいつ、かなりつええぞ」
「だ、大丈夫!?」
パワー負けしないまでも、このままでは決着がつかない。背後から心配そうに声をかけてくるキラッセに正面のドラゴンを見据えたまま声をかける
「さーてね?パワーじゃ互角のようだが、こっちにゃーこんな武器もあるさ」
そう言うとスモルガーに指示を出す
「スモルガー、”旋風蹴り”だ!」
スモルガーの上半身と下半身のジョイント部は、”旋風拳”の起点となる回転軸になっている。下半身を固定し、上半身を回転させれば”旋風拳”。では、その逆は?今の様に上半身が固定された状態ならば・・・
頭部の双眼を光らせたスモルガーが、指示に従って動作を開始する。片足でつま先立ちになるともう片足を後方に蹴り上げた形になる。丁度サッカーボールでも蹴りに行く体勢のようだ
ぶうん
一瞬の内に後方に蹴り上げた片足が回転軸の回転により、うなりを上げてドラゴンの首元にぶち当たる
ぐげおおおお
重量級の鋼の一撃を食らったドラゴンは苦し気な声を上げると、よたよたとよろめいて離れた
「ふう」
「いやったぁ!」
膠着状態から強烈な一撃を食らわせた拓真であったが、未だ健在であるドラゴンを見て気を引き締める
「あの一発を食らっても、倒れないとは・・・オーガなんかとは比較にならないな」
ぐるるるるるる
よろめいたドラゴンは体制を立て直し、蹴られた首元を見やる。少し表面の表皮が衝撃で弾けて、体液が滲むのを確認すると、こちらに敵意を剥き出しにして唸ってくる
「やばいよ、怒らせちゃったみたい・・・」
モニター越しからでも分かる、明らかに痛みに激怒する様を感じ取ったキラッセが拓真に呟く
「あぁ、盛大に蹴っちゃったからな・・・奴さん次はどう出るかな?」
集落の前に出来た不思議な空間。魔族軍のモンスター達は1体と1匹を、遠巻きにぐるりと取り巻くような形になり行く末を見守り、集落のヒュム族達はその入り口から息をひそめて見守る。そんな謎空間。
「なんか、あれだな。周りも気を使って、みてるだけーってか」
高揚する気分の中、拓真はそう言って自分を鼓舞する。もっとも、気を使ってるわけでもなく、誰もがその戦いに介入出来ないからなのであるが・・・
睨み合いが数秒、続いたかに見えたその時、ドラゴンが動く。急に体をくねらせたと思ったら、長大な尻尾を振り回して、叩き付けようとしてきたのだ
「・・・ッ!ジャンプ!」
予備動作で何をして来るか予測できた拓真は、そう指示するとハンドルを握って、上方に引っ張り上げた
飛び上がったスモルガーのいなくなった空間の、丁度胴体があった辺りをドラゴンの尻尾が唸りを上げて通り過ぎていく
がしゃん、と着地したスモルガーに、返す力で再び尻尾が襲い掛かってくる
「くっ!」
今度は声で指示する間もなく、ハンドルを引き押し地面に伏せるように・・と思いながら操作する拓真
以心伝心、スモルガーは地面に伏せるようにして尻尾の直撃を避ける。防戦一方なスモルガーの戦いに、自軍の有利と見たモンスター群が喝さいを上げ始める
「くっそ、油断したら一発で逝かれそうだ!」
悪態をつきながらも、拓真は尻尾攻撃を躱していく
何度目かの尻尾を躱し終えた時、ドラゴンに異変が起こったのに気付く
「・・・ん?あれは・・・」
大きく広げたドラゴンの口腔内が真っ赤に燃えるのが、見えた
「やっべぇ!火炎攻撃か!」
ドラゴン・ブレスと呼ばれるそれは、空想上では数千度の温度で全てを焼き尽くすという。そんなものを食らったら、謎金属で出来ているスモルガーとてどうなるか分かった物では無い
慌ててブレスの射線上・・・ドラゴンの顎から移動する拓真。刹那、紅蓮の炎がドラゴンから吐き出された
ずぼおおおお
吐き出された炎は、辛うじてスモルガーのボディをかすめるだけに留まる。が、射線上にいた魔族軍のモンスター達が躱し切れずに犠牲になり、燃え上がった
「ひゅー、あっぶねぇ・・・」
「タクマッ!前ッ!」
ドラゴン・ブレスを躱し、ほっとした拓真にキラッセが叫ぶ。ハッとして正面を見ると、ドラゴンの尻尾が躱せないほど目前に迫っていた
ばぎん
もろに尻尾パンチを頭頂部に受け、スモルガーの頭部が吹き飛ぶ
「が、はっ!」
頭部が吹き飛んだと同時に、拓真達が収まっていたコックピットの上部装甲版も弾け飛んだ
ぐわっしゃん
衝撃で背後から地面に叩き付けられる。魔族軍からは歓声があ上がり、集落からは絶望の悲鳴が上がる
「・・・う・・・くそ・・・油断したか・・・」
吹き飛んだスモルガーの頭部の下から、ヘルメット越しに目を向けると勝ち誇ったドラゴンが目前まで迫って来ていた。前足で、ずんむとスモルガーを踏み抑え、止めのドラゴン・ブレスを吐こうと口腔内に火種を溜める
「タクマッ!キラッセッ!」
集落の側から悲鳴にも似たカイムの声が聞こえる。拓真の背中でぐったりした様なキラッセだったが、その声に反応し、ううん、と唸る
「へっへへ・・・切り札ってのは最後まで取っとくもんだぜ・・・!」
そう拓真は言うと、左側ハンドルの親指の辺りにあったカバーを開ける。すると、それが第一のスイッチであった様で、踏み抑えらえたスモルガーの右腕が持ち上がり、正面のドラゴンにぴたりと、照準を着ける。狙うは最初に”旋風蹴り”で蹴って、体液の滲んだ首元の傷口だ
「こいつは、なぁ、俺が考えたスーパーロボットなんだよ!当然、こんな武器も用意してるのさ!」
そう言うと、カバー内のスイッチを押す。同時に、差し上げた右腕が手刀の形を作ると、高速回転を始めた
「ドリル・アームだ!喰らえッ!」
技の名前を叫ぶと同時に、高速回転を始めた手刀がドラゴンの首元の傷口に突き刺さる
ぐあがあああああああああっ
至近距離で突き入れられた高速回転をする異物に、たまらず悲鳴を上げ逃げようとするドラゴン。だが
「逃がすかよぉぉ!」
拓真は更に追い打ちをかけるべく、回転数が直結してるかのようにアクセルを回す
突き入れられた高速回転するスモルガーの腕が、更に回転数を増していく。硬い表皮を突き破って突き入れられたドリル・アームは、そこからはぐいぐいと中にめり込んでいく。たまらず後退をして逃れようとするドラゴンであったが、そこに今度は拓真から追い打ちがかけられる
「フィニッシュ!」
拓真はそう言うと、左手のスイッチを更に深く押し込む。すると、どおう、という曇った音と共に回転する腕が内部で射出されたようで、ドラゴンの反対側の表皮を突き破ってスモルガーの二の腕部分が飛び出して来た
ごごおおお・・・ぉぉぉ
さすがのドラゴンも、体内を回転する異物で貫かれたとあっては生命維持は困難な様で、断末魔を上げながらゆっくりと倒れ込んでいく
「ふー、やったか・・・」
倒れ込み、胸と反対側から開けられた穴から体液を流しだしたドラゴンを見やり、こっちもやばかったな、と吹き飛んだ頭頂部と飛ばして無くなった右腕とを確認する
「見事だな、タクマとやら!だがそのゴーレムも半死半生!これで勝負はあったな!」
戦況を見守っていた魔族軍の指揮官、四天王の一人であるラーセルスはここぞとばかりに勝ち誇って叫ぶ
「ちぇ、なーにが”勝負はあった”だ。見てただけのくせしゃぁがってよぉ」
ふら付く頭を左右に振ると、さてこれからどうしたもんかね?と考えを巡らせた。スモルガーは半壊状態。乗り込んで戦った代償に、体もあちこち痛い。背中には気を失っているキラッセ。どう考えてもこちらに有利な材料は無い。すると、急に魔族軍の後方に眩い光がさして来た
「な・・・!」
驚いて振り返るラーセルス。そしてそれを見つめる魔族軍
「なんだぁ、ありゃ・・・」
都合のいい、助けでもきたのかしらん?と一瞬考えたがその考えを打ち消す拓真
眩い光は、魔法陣の体をなしはじめ、中央から何かがせり出してくる。その何かが女性の様なカタチをしているな、と拓真が思った時ラーセルスが呟いた
「ば・・・なんで、魔王様、が・・・・」
光る魔法陣から現れたのは、魔族軍総大将ともいうべき魔王、その人であった
「ラーセルス・・・」
そう呟く魔王はどう見ても20代の女性を思わせる顔だちで、その衣装はまるでどこぞの魔法少女よろしく、絶対領域を秘めたミニスカートという出で立ちであった
「怒涛の展開、ってやつかぁ・・・」
その姿を見つつ、呟くしかない拓真であった
しまったっもう一匹、いや一人いたのかっ・・・!と、言ったとか言わないとか




