俺の情報収集、魔族の思惑
開拓班で集落の開拓に手を貸した拓真であったが、休憩の合間に現地人のカイム達との交流を図り、情報収集をしていた
「すると、魔法使い、魔術師等の類はあまり存在しないのか」
「あぁそうだ。この集落をまとめている城塞都市”テンペロスト”を中心に五つのヒュム族の集落があるが、その中でも魔法を使える者はテンペロストにいる1人だけだ」
説明口調の長台詞、ありがとう。何がしかに感謝しながらカイムの説明にうんうん頷く拓真
「他の人族では、エルフ族とホビット族に数多くの魔導士がいるらしいが・・・ドワーフ族と獣人族にはあまり魔導士はいるというのは聞かないな」
「それじゃ魔法使いってのは貴重なんだな」
「そうだ。魔法を使えるというだけで、城塞都市等では働き口の声がかかりまくるぞ」
「へー、そいつぁ良い事を聞いたな。参考になるよ、ありがとう」
休憩中なので各人木陰で座ってたり、寝ころんでたりする中、カイムとの会話を邪魔しちゃ悪いと離れて座っているキラッセに目をやる
なるほど、それでか。キラッセが執拗に”一緒にいかないか”的な事を言ってくるのは。と納得する。・・・アレ・・・でも一番初めに会った時は、俺がスモルガーを出せるって知らなかったよな?なんで初対面で俺を外に出るために誘ったりしたんだろ?と新たな疑問が湧いてくる
そんな思案顔の拓真を見やるとカイムは
「だから正直、タクマがあのゴーレムを召喚し使役出来る魔導士だと分かったときは驚いたぞ」
と話を繋げてくる
「ゴーレム召喚士、ね・・・まぁゴーレムちゃゴーレムの類なんだろうが。俺的にはゴーレムじゃなく”スーパーロボット”って呼び方のがカッコイイとか思ってるんだが」
そう言いながら休憩時間も関係なく、動き続けるスモルガーを見やる
「すーぱー・・なんだって?」
「スーパーロボット!言いにくいなら無理に言わんでもいいぜ。ゴーレムで構わんさ」
「いやいや、すーぱーろぼっと、ね、すーぱーすーぱー・・・」
何度も呟くカイムに苦笑すると
「んで、そのヒュム族に1人しかいない魔法使い?なんていう人なんだ?」
「すーぱー・・・ん?あぁ、その人は城塞都市の王宮付き魔導士”ズンダ”様というんだ」
「ズンダ・・・様・・・か。男かい、女かい?」
「ズンダ様は、年の頃二十歳位の若い女性だ」
へぇ、と拓真は声を上げると、1人しかいないという魔導士を勝手にオババと思っていた夢想を改めた
「魔導士なのに若いんだな。しかも女ってか」
「ズンダ様が若いのには色々理由がある。公表されている話だと、彼女は最古の魔導士である先代の”ズンダ様”の最後の弟子なのだ」
「先代?世襲制なのか」
「そうだ。王宮付き魔導士は代々弟子を取り、一人前になったらその御業を全て弟子に託すらしいのだ」
「それじゃ先代とやらが生きていたら、魔導士は1人じゃない。2人ってことにならんか?」
もっともな意見を拓真が言うと、カイムは視線を下に落として言葉を吐き出す
「・・・先代の”ズンダ様”は、魔王軍の”魔王”に殺されたのだッ!」
「・・・そうだったのか・・・」
照りつける日差しが一瞬、雲に隠れ少し陰りを作る。拓真は更に疑問に思っていた事を口にする
「魔族、魔王って連中、なんで人族に仇なすんだ?他にもなんだっけ、ホビット、ドワーフ、エルフに獣人族ってのもいるんだろ?人族5種全部に喧嘩売って歩いてるのって、何か理由でもあるのか?」
「詳しくは知らん。以前広まった話だと、魔族の連中はこの大陸に住まう全ての種族を一つに纏め、楽園を作るのだとか言っていたが」
そういってカイムは立ち上がると両手で尻をぱんぱん、と叩いてゴミを払った
「眉唾だ。事実、魔族軍は人族の集落や都市を蹂躙し殲滅させ、支配している。この大陸の半分は魔族の奴らに支配されてしまっている」
「そんなにか。この大陸って、どのくらいの広さがあるんだ?」
「・・・すまない、正確な数や数字は良く分からない。俺は無学なもんでな。詳しい話は長老にでも尋ねてくれ」
いやいやそれ位知ってれば無学ではないぞ、と拓真は内心思いながら釣られて立ち上がると
「わかった。色々、話を聞かせてもらってすまなんだな。勉強になったよ」
とカイムの肩を叩く
「いや。このくらい当然さ。何せアンタは我々の命の恩人とも言うべき人だ。感謝してもしきれん」
そういうと肩を叩き返される
「ややや!そこまでのことはしてないって!そそそ、感謝ねぇ・・・」
人に感謝されたりするのに慣れてないのか、そもそも根がお人よしなのか、普段の平静を保っている時とのギャップが激しい拓真の反応にカイムは笑って返すと
「それだけの事をアンタはしている。もっと自信をもっていいぞ」
そういうともう一度今度は背中をぽん、と叩いて歩き出した
「よーし、休憩終わり作業に戻るぞ」
周りの連中に声をかけたカイムは、未だに照れてくねくねしている拓真にもう一声かける
「そうだタクマ。今回の一件、城塞都市の王族に一報が行ってるはずだ。近いうちに、何らかの動きがあるはずだ」
「・・・・・・え?なんだって?」
「だから、城塞都市から応援の騎士団とかが来るかもしれん、ということだ」
城塞都市の騎士団、って初めてこの世界に来た時に、俺に弓矢を撃ってきた連中じゃないのか・・・
そう思って顔を青ざめさせる拓真を置いて、カイムはさっさと作業に戻ってしまう。その後ろからいつの間にか近づいてきていたキラッセが覗き込む
「・・・なぁタクマ、大丈夫か?顔が真っ青だぞ?」
「ブツブツブツ・・・」
「おい・・タクマ・・・お前!・・・おっさん!!」
自分の声掛けに無反応だった拓真に、大声で話しかけるキラッセだったが、当の拓真はそれどころではなかった
「そ、そうだ、長老のコウズに頼んで、騎士団が来たら、あの時の出来事は、何かの、手違いだったとか何とかって、話をつけるように、頼んでおこう」
そう考えを纏めるとふらふらと歩きだし、ピタと立ち止まると振り返り
「キラッセ!次また”おっさん”とか言いやがったら、ケツをひっぱたくからな!」
と怒鳴るのだった
魔族軍本拠地、魔王城の城門前には出撃体制を整えた総勢200のモンスター軍団が整列していた。その中ほど辺りには空席になっている御輿の玉座が鎮座していた
「ラーセルスぅ、アンタ、また逃げて帰ってくるんじゃないのぉ」
その玉座に向かって歩みを進めていた、魔族軍のラーセルスに向かって甘ったるい声がかけられる
「・・・ヤーンか・・・何の用だ」
振り返り、声の主を確認するとラーセルスは相手の名前を呼ぶ
「ふふふ・・・四天王いちの”よわむしラーセルス”ちゃんが心配なのよぉ」
塀の上に横座りしていたヤーンと呼ばれた魔族の女・・・見た目は豊満な姿態のサキュバスを思わせる様な出で立ちから、匂うような色香を振り撒く人物・・・はすっと飛び降りてラ-セルスの横に近づく
「取るに足らないヒュム族の集落襲撃に”ドラゴン”を持っていくんだってぇ?正気なのぉ」
わざと顔を近づけて肩に顎を乗せると、右手の人差し指でラーセルスの頬をなぞる
「集落の中にゴーレムを召喚できる”魔導士”が現れたのだ。それへの対処の為だ。他は問題ない」
舐め切った態度に抵抗するわけでもなくそう言い放つラーセルス
「だ・か・ら・”よわむしラーセルス”ちゃんごときが、”ドラゴン”を使いこなせるのかって言ってんだよぉ!」
急に口調が激しいものに変わり、頬をなぞっていた指爪がラーセルスの頬に食い込んで鮮血を迸らせた
「・・・ッ!だから、敵に強敵がいると言っている!」
痛みに反応し腕を振り回すが、それより早く距離を取って離れたヤーンが指に付いたラーセルスの血をなめる。その態度にラーセルスが両手を構えて、両足の位置を戦闘状態のそれへとずらす
「くふふ・・・集落攻めの前に、戦るのかぃ?アタシとさぁ・・・」
一瞬でまわりの空気が渦を巻いて淀む。まさに一触即発の雰囲気
「やめんかラーセルス。ヤーンもそこまでにしておけ」
その空気に割って入った声の主に目を向けると、ごつい体の魔族が巨大な両手斧を背に、歩み寄ってくる
「ユウゼス・・・」
ごつい魔族をそう呼ぶと、さらに別の角度から声がかかる
「そうだよお・・・折角のラーセルスの晴れ舞台なんだから、邪魔しちゃ悪いよう」
こちらはどう見ても少女のような小さな魔族が、棒に付いた何がしかを舐めながら立っていた
「ヨーディ!・・・何よぅ、二人ともアタシたちの邪魔をしないでぇ」
小さな魔族をそう呼ぶと、ヤーンが身をよじらせて抗議のフリをする
「フン、四天王が揃い踏みか。見送り、ご苦労なこったな」
気勢をそがれたラーセルスは戦闘状態の構えを解くと、再び中央の玉座に足を向ける
「あ、ちょっとぉ!ラーセルスぅ逃げる気ぃ!」
完全に戦闘状態では無くなってしまった雰囲気ではあるが、ヤーンが一応の抵抗を見せる
「よせといっている。ヤーン」
ユウゼスがそういってヤーンを再度たしなめると、ヤーンも渋々と口をとがらせて諦める
ラーセルスが御輿の玉座にたどり着き、そこに腰掛けるとユウゼスから声がかかる
「ラーセルス。ヤーンが言ったからではないが、必ずや戦果を上げて来いよ」
「そうそうー、移動用の魔法陣もタダじゃないからねえ~今度失敗して帰ってきたら、わがぐんは大赤字だよお」
ヨーディもそう言ってわざとラーセルスを煽る
「・・・わかっておるわ!楽しみにしてるがいい」
変にプレッシャーをかけられたラーセルスはそういうと軍団に声をかけた
「進軍!」
配下にいた手下の魔族が復唱する掛け声と共に、ラーセルスの軍は移動を開始する。移動用の魔法陣は魔王城を出て離れた場所にある為だ
「があんばってねえ~~~」
無邪気に手を振るヨーディと、憤然と腕を組むユウゼスの間にヤーンが近寄ってくる
「あぁ~あぁ、行っちゃったぁ。どうせまた負けて帰ってくるのにぃ」
「そうとは限るまい。今度は”ドラゴン”を配下に加えているのだ。ラーセルスといえども、おめおめと負けて帰っては来ぬだろう」
「どうぅだかぁ、ねぇ」
そんな二人の会話をよそにヨーディは無邪気に笑う
「いーーじゃないー、これでやっかい払いが出来るかもだよお?今度開かれる武闘大会でえ、もしかしたら、もーーっと優秀な人材が出てくるかもだしいー」
そう言いながらニカっと笑うヨーディに、どうしてこんなのが四天王に数えられるくらい強いんだ、という考えを巡らせながらユウゼスが呟く
「だがしかし、今回の襲撃が失敗すると、魔王様自らが出撃なさると聞いた」
「えぇっ?まさかぁ・・・」
「ぇ、そうなのお?」
振り返り、そびえ立つ魔王城を見上げながらユウゼスは更に思う
「何事もなければいいが・・・ゴーレム、か・・・まさかな・・・」
胸に去来する思いを吐露すると、魔王城に鎮座する魔王の事を考える
「くそっ・・・ヤーンもヨーディも舐めやがってッ!」
小さく悪態をつくとラーセルスは頬に付いた傷を触る。ぴりりとした痛みに意識を覚醒させると、心に思う。いつかヤーンもヨーディも、ユウゼスすらも足元にひれ伏させてやる。その暁には・・・
「いずれこの玉座を本物の玉座に。俺が、魔王に・・・」
そういって含み笑いをすると、移動用の魔法陣のある方向に目を向けるのであった
四天王が書いてて楽しいです




