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不同分开神話  作者: 帳®
4/4

間を継ぐ

すこし遅くなりましたね、その分長いと思いますよ、多分

闇の版図が輪を奪い、甘言で裏の理を回す


白面金毛九尾の狐が雲霧林を突き進んでいる。

単独で道ならざる道を歩き続けその場は雨が止むことを知らず、植物は光というものを知らず、太陽は地を照らすことを知らず、霧は晴れることを知らない。

大陸の南方。生気はなく虫の一匹もいない。


白面「・・・君達」


白面金毛九尾の狐の前に四つの人影が現れる。

その四人共々白面金毛と似たような形状の仮面をつけている。

青髪と白髪の者はやや前へ、赤髪と黒髪の者は見張るようにその後ろを着く。


白面「彼に教わったか・・・さも若くあれど術は編集された書物のように丁寧な。」


白面金毛九尾の狐が四人にそう言うと、白面は背後に殺気混じりの気配を感じる。

咄嗟に振り向くと仄暗い緑色と白い霧で包まれていた空間が黒煙に包まれていた。白面は目を見張るとその瞬間、黒煙の中から黒い腕が飛び出し白面の喉仏を鷲掴む。

驚く暇もなく白面は黒煙の中へ持っていかれる。

………

白面金毛九尾の狐が目を覚ます。そこには光がなく音がやたら響く。

暫くすると目が慣れ周囲の壁が見えてくる。

岩の壁と床に包まれ、目の前に木の扉がある。

すると、扉が開き灯火を手にも持った黒装衣に身を包み、銀色の仮面で顔を隠した体格からして男性と思われる人物が現れる

白面は静かに動揺するも、身動きが取れない。


「・・・」


男は白面金毛九尾の狐の目前に立ち止まる

灯火に照らされ朧気に見えてくるが、白面の四肢が蜘蛛の糸の様なものに触感に気づかない程のゆるさで絡みついている。

硬く縛られている訳でも雁字搦めにされている訳でもない筈だが、ピクリとも動かせない。


「不思議なもんか」


男が喋る。声からしてやはり男だが、篭っているような霞んでいるような気がして上手く音の詳細が聞き取れない


白面「・・・随分不躾な出迎えだな」


白面金毛九尾の狐が男に話しかける


「・・・すんなり入口から入れると思うか」


白面「相変わらずか」


男は白面金毛九尾の狐の向かいに座ると二人の間に灯火を置く


白面「まあ、信用出来ないのは分かる。お前の迫害を最終的に許諾したのも俺だ・・・その時は空返事だったが」


すると男が足裏を床に激しく叩きつける。

衝撃で灯火を立てていた鉄の台が倒れ灯が消える。

辺りはまた暗闇に包まれる。


「言い分はそれだけか?」


男が威圧するように白面金毛九尾の狐に顔を寄せる。


白面「いやな、取引だ」


「・・・」


男は黙り込む


白面「こちらからは・・・そうだな、お前の迫害の提案者の差し出し。

・・・と言ってもこちらから直接身柄を引き渡すことは出来ない、居場所だけだ。」


「・・・いや、名前だけで十分だ」


白面「名前はちょっとな、居場所だけだ。」


「何故名前が言えない?」


白面「・・・奴の名前は本当の名前ではないかもしれないからだ。変な情報渡して変なことされても困るからな。居場所から先は自ら調べてくれ」


白面金毛九尾の狐がそういうと、いつの間に四肢の自由が効くことに気付く。


「………そうか、じゃ教えろ」


白面「そう急かさないでくれ…聞き逃しかねん」


白面金毛九尾の狐が両手の平をあげ落ち着かせる


白面「提案者は……麒麟。2代目のな。今は遠征中だが予定期間を過ぎても帰って来ん。送り出した時は倭に行かせたが、その後は音信不通。付き添った2代目鳳凰もだ」


「…成程。だから臨時に先代を駆り出したと」


白面「そう…だが、1つ勘違いしないでほしい。」


白面金毛九尾の狐がそういうと男は静かになる


白面「取引・・・と言ったが、これは名義上。本来はそちらに対する"依頼"だ。お前らには"任務"として扱ってもらう。自分らのことだから張り切れるだろ」


「…了解した」


男は扉を開け白面金毛九尾の狐を立たせる。


「帰りには森の中まで案内役を設ける。森を出れば1人だ。」


扉の外に出て、多少は明るくなり人影が少しは可視出来るようになってきた。


白面「これで会うのも最後になるかもな。今回のこれも、任が終わり次第なかったことにする。おまけとしてその顔の下を拝ませてもらいたいが…」


白面金毛九尾の狐が自分より頭2つ抜きん出た身長の男の顔に手を伸ばす


「人に頼み事する時は、己から差し出すのが義理だろう。」


そう言いながら白面金毛九尾の狐の手を払い除ける


白面「そうか…じゃ、今度にするか」


白面金毛九尾の狐は呆れたような悔しいような感情で光の射す方向へ歩く。

暫く歩くと洞穴の様な場所に出る。そのさきに曇った天気から照らし出す灰色の光が霧と雨に乱反射しながら差し込む。

洞穴の出口近くになると、先程の四人組の中にいた白髪の者がいる。

上裸で男だと直ぐに分かるが、その脇腹と脇下に右2つ、左3つ赤い切れ目のようなものがある。

よく見れば、中にヒダヒダした赤い肉がヒクヒクと動いている。魚のエラのようなものにも見えるが、白面金毛はこれに少し疑問を抱く。

その瞬間、白面が肩を叩かれる。


「そいつが案内役だ。名は白龍」


白面「白竜…?」


「あー、いや、お前らの知ってる白竜とは存在も字も違う。瑞獣兼五竜の玉龍、もとい"白竜"とは何ら関係ない、多分」


白面「…」


白面金毛九尾の狐は腑に落ちないまま、歩き出した白龍の後ろに着いていく。

洞穴から出ると、山の山中にあるのか森より少し位置が高く辺りの森を一望できる。

木々の間に白い煙が入り込み下の光景はなんとも言えない。

見渡す限りどこまでも雲が続きどこまでも雨が降る。

出口から進んだ光は崖になっている


白面「…降りるのか?」


白面金毛九尾の狐は白龍に話しかけるが、白龍は崖下を見つめるだけである返事すらしない


白面「まあそうだよな」


白面金毛九尾の狐が足を踏み出し飛び降りる。

下の地面は先程の黒煙が広がっており確認出来ない。

落ちているうちに黒煙の中に入ると、飛び降りる前に見た地形からありえないほどの長さ落ちる時間が長い。

暫くすると、黒煙から抜ける。体勢はまっすぐしているので景色がはっきり見えるが、先程より明らかに場所も違く、位置も高い。

白面金毛九尾の狐は驚きながらも、地面が近づくと水中に落ちた様に途中で減速し優雅に着地する。

すると、上の方から水と空気を裂く音が聞こえてくる。

白面金毛九尾の狐は嫌な予感がすると少し今居た位置とは離れると、落雷のように轟音と同時にぬかるんだ地面の泥と水と落ち葉や枝が辺りに飛び散る。

飛び散った泥が雨のように降ってくると、その中心に猫のような姿勢でいる白龍が顔を出す。

白面金毛九尾の狐は危ねぇと思いながらも立ち上がって進んでいく白龍に着いていく。

暫くすると木々のない開けた場所に着く。

森を出る直前になると白龍が立ち止まると白面に道を開けるように横へ退く。


白面「ここまでか」


白龍の横を通り森を出る。白龍は白面金毛九尾の狐を見つめその場で留まる。

白面金毛九尾の狐が振り向くと、白龍が霧に消えていく。


……………


東北の海の外、大荒の中。

濃茶色の布を坊主のように羽織った人影が植物一つ生えない荒地を歩き回る。

藤色の癖髪をなびかせ褐色の肌は陽光に照らされる。

男が立ち止まると、1台の馬車が走ってくる


「……お」


馬車が止まると、中から蒼髪の男が出てくる。


「いつまでそうやってんだい」


蒼髪の男が降り、そう呟く


「ここら一帯は人間どころか虫や植物、下手な神や妖ですら入れないくらい干魃が進んでいる…もう何年も前だと言うのに、なのにないんだ」


蒼髪の男が辺りを見渡しながら


「…あのころの兵や魑魅魍魎の死体も白骨。既に化石化しているものすらある」


「だからこそだ。あんなもの持ち出すことも出来ん」


蒼髪の男がそう聞くと、2、3歩前進する


「…阿修羅。有り得ると思うかい。生まれながら不死身に取り憑き兵神と万物が恐れた存在が四肢をもがれ首を放り出されただけで生を奪われるなんてこと」


蒼髪の男が"阿修羅"と呼ぶこの褐色肌の男は八部衆の阿修羅の頂。

そしてこちらの男は"ナーガ"同じく八部衆、竜の頂。


阿修羅「…蚩尤は殺すことなんて誰でもできなかった」


ナーガ「ここに居ないとわかった以上、これから先は私らの管轄ではなく瑞獣共の仕事だ。君も深追いせず」


ナーガがそう言いながら阿修羅の地肌の背を撫でるように押し馬車へ誘導する。


馬車で揺られる二人。乾いた空気が車内を騒がせると、窓から1匹の烏が入ってくる


ナーガ「わっ、なんだそいつ」


ナーガが驚いていると、烏が阿修羅に近づく。


阿修羅「伝書烏・・・瑞獣からだ」


阿修羅が烏の首に括りつけられている紙に気づく


阿修羅「なんだなんだい、"瑞獣が悪神に攻撃と侵入を許しちゃった。至急瑞獣本部に寄られること頼むよ。門の鍵は空いてるから早く来て"・・・この字と舐め腐った文は鯱鉾君か」


ナーガ「鯱鉾ぉ?あいつ字書けたのか」


阿修羅「いやあいつは常識がないけど学はあるから…というより、こういう文書の執筆は獬豸君の仕事だけど・・・手でも怪我したか」


ナーガは眉を顰める。阿修羅は文書を丸めて馬車の外て放り捨てると烏が逃げるように翔く。


………


神農「・・・っへ、きっついわ」


神農が自室からフラフラと出てくる。

口にかけていた布のマスクを外すと落ち込むように顔を落とし座り込む。

しばらく神農がそうしていると、不自然なリズムの足音が家の床を軋ませる。


神農「・・・なんだい刑天。僕は疲れてるんだ」


足音の正体は不死身の戦神とされていた形天。

右足と右手が無く、杖をつきながら神農の方へと寄っていく。


刑天「…患者は」


神農「え・・・?…へっへ・・・難しい、ね。僕1人じゃ・・・お前の時の方がまだ楽だった。とてもきっつい」


刑天「・・・日々の疲労で体だけじゃなく頭と口も回らなくなってきたか。これでよく帝の称なぞ取れた」


刑天は皮肉めいた口調で神農に告げる


神農「・・・なに。それは関係ないだろ…脳みそが狂ってきている…煽らないでくれ…」


神農は怒り気味に刑天に返すと、刑天は更に口調を強める


刑天「…俺は医学のことはさっぱりだが、お前のことはよく知っているつもりだ。お前の子等にも代々従属していった」


神農「…だからなんだ」


刑天「お前は己を捨てても患者は捨てない」


神農はその一言を聞くと反射的に顔を上げる。


神農「・・なんで…それ…」


神農は驚くように目を見開く


刑天「お前が獬豸とやらの治療をしている間に"彼女"が俺のとこに来た。話し相手が欲しいとかなんとか言ってな」


神農「なっ・・・何を話した!?彼女と!!」


刑天「先ずはお前が帝になる前のこと」


神農「・・・」


刑天「色々と教えてくれた。恐らく彼女が知っている範囲のお前のこと全て。自分の子供を自慢するように活き活きと」


神農「それで…」


刑天「・・・我が身を滅ぼし多くを救ったお前は……今度は自分だけ助かるため多くを滅ぼすか。その為の言い訳だったのか、お前の過去は」


神農は言い伏せられるよう俯かせる


神農「・・・・・いや、僕は言い訳なんかしない…」


刑天「…で?」


神農「ふふ・・・彼女に言われたのならまだしも、お前に言われちゃ世話ない…」


神農は立ち上がると、刑天の肩に手を置き


神農「今まで体の自由が効かないお前を何度も立ち上がらせて来たけど、君に立ち上がらせられたのは初めてだな………」


神農はそう言うと震えた声で囁く


神農「…ありがとう」


肩から手を離し2人は離れ、背を向けそれぞれが元にいた場所に戻ろうとする


刑天「そういや、患者を捨てないってのは、"彼女"からの受け売りじゃなくてお前の過去を知った俺の感想だ」


刑天は思い出したように少し振り向き神農を見るとその時、自室に戻ろうとする神農の口角が上がっているように見えた気がした。


また遅くなるかもしれへん!!!!

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