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「どうだ、ビヤーキの反応は」

 さっそくエウテルピアを持ち込んだ俺に、ブラウニーは大きく頷いた。


「……悪くないようです。 ただ、これだけでは味が単調なので、花から油を搾った後の搾り(かす)も与えてみてはどうでしょう?」

「なるほど、どうせエウテルピアの搾り(かす)があるから畑の肥料には困ってないようだし、さっそく手配をかけよう」


 こうして食料問題も片付いた養蜂であるが、なんとブラウニー側でもこの問題に一つの解決方法を生みだしていた。

 しかも、なんとその方法によってビヤーキたちはハチミツの生産を始めていたのである。


 むろん、ビヤーキの巨体では花から蜜を集めるという繊細な作業は出来ない。

 ならば、どうやってハチミツを作り出すのか?

 彼らは、なんとその代用品を見つけだしていたのである。

 それは、ビヤーキの飛翔能力を活かしてケーユカイネンの外に趣、人の住んでいない領域に生えている木の樹液を集めてくることであった。


 木の樹液なんかを材料にしてハチミツが作れると聞くと意外かもしれないが、実は木の樹液にも結構な量の糖分が含まれているのである。

 ちょうど、サトウカエデや白樺のように樹液を煮詰めると甘いシロップを得ることが出来る植物を思い浮かべてくれたならばわかりやすいかもしれない。


 しかも、彼らが提供するのはそれだけではなかった。

 紙の材料になる外被のほかに、内側を構成する巣材である蜜蝋、そして巣の入り口に塗るプロポリスと言う殺菌成分。

 どれをとっても、希少価値が高く高額で売りに出すことの出来る商品である。

 ……まさに彼らは金の卵を産む鶏だったのだ。


「それで、これはいったい何なんだ? いまひとつよくわからないのだが」

 養蜂で得られる特産品についての報告を確認した俺は、ひとつだけ不可思議なものを見つけて俺はその説明を求めた。


「はい、これニャのですが…… あまりにも異質すぎて使いどころがまだはっきりしないのですニャ」

 そう言ってムスタキッサが差し出してきたのは、なんとも奇妙な物質である。

 あえて近いものがあるとすれば、クラゲだろうか?

 水のように透明で、だが皮のようにしなやかである。


「ずいぶんと奇妙な代物だな」

「なんでも、これは蜂の幼虫の蛹から作ったものらしいですニャ」

 いったいそんなものをどうやったらこの透明な皮革に出来るのかさっぱりわからないが、報告書を見る限りでは繭を形成する物質を簡単に溶かして様々な形に整形できるらしい。


「ふむ、光や熱、後は雷をはじく性質があるのか。

 あとは、他の生き物の細胞と同化しづらい……水に漬けると収縮する……なるほど、ずいぶんと個性的だ」

 さらに繊維としての強度も木綿の十倍ほどであるとの事で、軍や冒険者向けの装備の内側に使う材料としても人気が出るだろう。


「問題は、この素材で何を作って、どんな売り方をするかだな」

「まずは、もともとの繭から糸をとってシンプルに衣料としての利用を考えてますニャ。

 この透明な皮については、また後日ということで」

 特に意外でもなんでもないやり方だが、逆に言うとそれ以外の利用方法は俺も思いつかなかった。

 奇抜な商品であり、インパクトは強いのだが、いざ何に使うかといわれると、答えに困ってしまう代物である。


「そうだな、それが無難なところだが……平行して、包帯としての利用も試してくれ。

 前に、包帯が傷口と同化して剥がすときに瘡蓋をはがしてしまうということを聞いたことがある」

 この繊維の性質ならば傷口とくっつかないので、うまくゆけばより安全な包帯が出来あがるだろう。


「ニャるほど、それはアンナ様も喜びますニャ」

 おい、なぜそこでアンナの名前が出てくる?

 

「別にアンナのために提案したわけではないが?」

「ニャハハハハ、そういうことにしておきますニャ」

 後日、ホーネットシルク製の下着が俺の名義でアンナに届き、顔を真っ赤にして押しかけてきた王女に首を絞められることになるなど、この時の俺は知る由も無かった。

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