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愛しき姫は異世界に  作者: janky
第9章
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やや~過去編15

「それで、確かにそれはあの子だったんですか?」


強ばった顔をして近くの椅子に腰を下ろした釈愛は

私を見つめる


「ああ、報告が来てる」

「兄様…舎羅登を狙ってるのではないでしょうか?」

「…目撃情報によると、少しずつこちらに近づいている気もするな」


トントンっと長室の扉をノックする音に視線を扉に向けた


『実丸です』


「入れ」


ゆっくり扉を開けて入ると、藩登様と顔色が少し良くない釈愛様が居た


「大丈夫ですか?」

「実丸…大丈夫よ

ありがとう」

「いえ」

「悪いな、わざわざ足を運んで貰って」


藩登様が釈愛様の横の椅子を指さす

それに従い腰を下ろした


「実丸に少し頼みたいことがある」


藩登様はいつにも増して真剣な顔をしていた


「はい」

「厄介な黄泉の死者が舎羅登を狙ってるんだ」

「狙ってる?

心があるんですか?」

「それはまだ分からないが、既に怨念の数は無数になってて…少し対処にも戸惑っている」

「対処って、浄土はもう無理なので下界へ送るだけじゃダメなんですか?」

「送れないんだ」

困った顔をした藩登様と

俺を不安気に見つめる釈愛様にわからないって顔を向ける


「黄泉の死者に取り憑かれてしまった子が黄泉の死者になれ果てた…」


黄泉返(よみかえ)りですか?

それは早急にでも消さないと大変なことになりますよ」

「黄泉返りでもこの世に強い未練があるタイプだから、早々のことでは送れない

肝心の舎羅登を使えないからな」

「舎羅登さんにどうして?」


その問には口を閉じた2人に

知られたくない何かがあるのは明白だった


「分かりました、

今日は夜目撃された場所へ偵察へ行ってきます」


「悪いな

この事は内密にしてくれ」

「分かりました」

「実丸、頼みましたよ」

「任せてください、釈愛様…

あと、ややに知られるのも気をつけた方がいいです」


実丸はそう言いながら立ち上がる


「どうかしたか?」

「ややちゃんに何かあるの?」


「まあ、舎羅登さんのこと慕ってるんで、こういう話聞いたら大人しくしておけないタイプだと思うので」



牽制を張ればややの暴走は止めれるだろうと思った


今まで数回、ややが阿兎や和兎の為に無理をしてしまうことがあったから


「そうね、最近も凄く仲良さそうだし

夜なんて舎羅登がややちゃんを送ってくのが日常になってるからね」


「……でも舎羅登さんにそれ以上はないですよね?」


俺の問に驚いた釈愛様は


「実丸も、そう思う?

ややちゃんでも舎羅登は動き出せないのかな?」


そう言って綺麗な顔を伏せた


「俺は舎羅登さんじゃないから分かりませんし、過去に何があったから知らないっすけど…

動き出せると思いますよ

ややは、真っ直ぐですからね」



頭を下げて長室を出れば

雲一つない空に大きく息を吸った

青々しい心地よい風が時を止めるように俺を通り越していく



「…何も無い事を祈るか…」


「実丸さん」


不意に呼ばれて顔を向ければ

妃乃瑠が頭を下げる


「どうした?」

「あの…」


口ごもる妃乃瑠に


「お前は来るなよ」


そう言えば心配する瞳で俺を捉える


「どうして…危険な事ばっかりするんですか?」

「…仕事だからな」

「もし、その黄泉の死者が手に負えないくらい強かったらどうするんですか…」


「…妃乃瑠」

「避けられても、嫌われても…

私は実丸さんを助けたいです」


震えた瞳も唇も声も…

俺を離さない


心ごと鎖に繋がれたように

全てが妃乃瑠を求める


けど、距離を間違えば大切は危うくなる


「俺は助けてもらうほど弱くない

誰かがいると足で纏いだ」


俺の言葉に下を向き横を通り過ぎてく妃乃瑠からは涙を流して鼻をすする音が聞こえた気がした



それでいい


泣いていれればいい


俺なんかに時間を割くくらいなら

前に進んでほしい




「またやってるよ」


ハッとして顔をあげれば藩登様と釈愛様が扉からこちらを覗いていた


「あんな可愛い子を泣かすなんて…

実丸は成績だけ優秀なのね」


「本当にそれだ

可愛くてしょうがないくせに」


「やめてくれませんか?

盗み見するなんて」


「おい、人聞きの悪いこと言うなよ

ここは俺の屋敷だ」


「そうでしたね

では失礼します」


飛び上がった実丸はそのまま外に飛び降りる


「そんな必死に逃げなくてもいいのにな」


「本当ですね

兄様…実丸達だけでも戦えますか?」

「あいつは優秀だからな、阿兎と和兎と…3人ならもしかしたら…ッとは思ってる」

「…どうして…あんな風になってしまったんでしょうか…」

「過ぎたことだ

今をどうするかで未来は変わる…」


頷いた釈愛は不安を抱えながらも帰っていった



この世界にも、どの世界にも…

防げた事が沢山ある

一つのミスや

小さな不幸が


取り返しのつかないことを起こす事がある


それを身を持って知っていけば

一つずつ譲れないことが増えていく


例え誰かに恨まれようと

誰かに誤解されようと

誰かに責められようと


守らなければいけない者への

思いは厳しさを増していく


それで最大の悲しみを避けれるなら

身を削ってでも成し遂げたいと思う


この世界の(ことわり)

この世界のルール。

この世界の掟。



「舎羅登…忘れるな」


遠い日の出来事を思い出しフッと口にすれば

目の前にあの日の光景が広がる気がした



忘れたい過去は増えていくばっかりだった…


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